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部屋に入って来たのはクリス様と……サナ?

で、なんでサナは鞭を構えているのかしら?


「ゴメンね今の話聞いてしまったんだ。そうしたらサナが怒り出してね。」


「リカルド様……昨日奥様に教育されたはずなのにリリーナ様へそのようなことを言うのですね。奥様を呼ぶまでもありません!私が引導を渡してさしあげますわ。」


兄は慌ててクリス様とサナに問いかけている。


「おい!一体いつから盗み聞きしてたんだ?」


するとクリス様が答えた。


「盗み聞きだなんてひどいなぁ。ただ私がリカルドの部屋の前に来た時に大事そうな話をしてたから入るのをためらっているところにサナが通りかかってね。どうしたのかと聞かれたから事情を説明している内にリカルドが大声でレオン王子の気持ちやら、リリーナはわかっていないとか言うものだからサナが鞭を構えちゃったんだよね。」


そうだね、兄の声大きかったもんね。

それはドアのところぐらいなら聞こえるね。


「では覚悟はよろしいですか?」


なんか凄い笑顔で鞭を持っている…。

今日の兄のコンディションではさすがにサナのお仕置きは厳しいはずだ。

それは兄もわかっているようで何とか逃れようと必死だ。


「ま、待て!話せばわかる!な、なあサナ、お前だって昔は俺のことを『リーくん』と呼んで慕ってくれていたじゃないか。……ってあれ?何で突然サナは俺のことを避けるようになったんだっけ?確かまだリリーナがレオン王子の婚約者になる前だよなぁ。うーん?」


兄が何か悩み始めた。

サナを見るとさらに険しい顔になっている。


「リカルド様…今考えることはリリーナ様へお言葉ですわ!だいたい今までのレオン王子の言動から察することはかなり難しいと思いますよ。周りから見ればわかることも、やられている本人にしてみればただの嫌がらせに近いことが何回もございました。その度にレオン王子のリリーナ様拗らせ問題会議が開かれていたのでしょう?回数だって私にだってわかる範囲で数十回はなされているはずですよ。もうさすがにかばいきれる範囲は超えていますわ。」


兄はサナにまくし立てられて呆然としている。

実際サナがここまで兄に言うことは珍しい。

不謹慎だけどそれが私のためにというのが嬉しい。

サナが兄に睨みを利かせているところにクリス様が口を開いた。


「ところでリカルド、肝心なことをリリーナに言わないのかい?何故お前がレオン王子の味方をするのかとかね」


「いやだからそれはレオン王子の気持ちを知っているから…」


「それだけじゃないだろう?リカルドは私が昔レオン王子に会ったことを知っているんだろう?そしてその前からあったことや会った後の出来事も。」


兄は苦虫を潰したような顔をした。

しかしその後「ふー」とため息を吐くと観念したのかポツポツと話し始めた。


「あーー、なんでクリスはそう何でも事情を知っているんだ?絶対この国に何か忍ばせているだろう。だいたい今回のこの騒ぎのタイミングでリリーナと王都に来るっていうのがおかしい話しなんだよ。まあ、いい。別に隠していたわけじゃないがリリーナは知らなかったんだよな。」


私が知らない話?

でもクリス様は知っているってすごいね。


「リリーナ、あのなレオン王子は女性が苦手なんだ。」


え?ちょっと待って。

だってさっき兄はレオン王子が私のことを好きって言ったよね?

私が不審そうな目で見たのに気付いたのか兄は言葉を続けた。


「まあ、幼少時にいろいろあったんだがレオン王子は容姿が整っているだろう?小さい頃から女性が寄って来てはかまい倒すわけだ。その中でも1番強烈だったのが南の国の王族だった女だ。細かいことは抜かすが幼いレオン王子を自国に無理やり連れ去ろうとしたんだ。もちろんそんなこと未遂に終わっている。だけど王子の記憶にはそのことが強烈に残っているんだ。」


そんな出来事があったんだ……。

でも確かにそんなことおおっぴらに話せないよね。

兄が話しを続ける。


「で、そこで一つの問題が起こった。それがクリスだ。」


何故にそこでクリス様?

クリス様の方を見ると困ったような顔をしている。


「その誘拐未遂事件の時に一緒に連れ去られそうになったのがたまたまこの国にお忍びで遊びに来ていたクリスなんだよ。まあ、結果として南の国はかなりの被害が出たぞ。何たって王族が王族誘拐未遂だからな。その女は処分されたが裏ではうちの国と西の国が南の国をどつきまくったらしい。」


「クリス様が問題というのはどういう意味ですか?」


「……誘拐騒ぎのときクリスがレオン王子のことを必死に励ましてあげて、その上誘拐自体を止めたらしいんだ。それで、その、レオン王子はクリスにすっかり懐いたんだが……その当時クリスの姿は女にしか見えなかったんだよな。で、すっかりクリスを女だと思い込んだレオン王子は……」


あれ?

何だかこんな話知ってるなぁ。

もしかして結婚を申し込んじゃうのかな?


「もしかして結婚申し込んじゃいましたか?」


「……正解。で、クリスはそこで自分が男だとバラしたらしいんだが、レオン王子がショックのあまり寝込んでしまったんだ。んで、その後誘拐のことやクリスのことを一時的に忘れてしまったらしいんだが女性に対する恐怖心だけが残ってしまったようなんだ。」


かなり重大な話なんだけど。

でも、何でそれでも私のことを?


「王や王妃が心配する中で一粒の希望がリリーナ、お前だったんだ。昔領地でレオン王子を魔物から助けたことがあっただろう?あの時にレオン王子はお前に好意を持ったんだ。今までどんな女性も寄せつけなかったのにお前にだけは興味を持ったんだ。だからあの後すぐに婚約の話が持ち上がったんだよ。今回の婚約破棄事件の前にもいろいろ拗らせたレオン王子がやらかしていたけど見守っていたのはそういう事。で、今回父上達が王子を見限ったのは試すように婚約破棄をしたため。俺は嘘でも婚約破棄なんて反対だったんだが、邪魔が入って止められなかったんだ。」


兄は話して気が楽になったのか私にこう言った。


「リリーナすまない。お前が王妃教育を嫌がっている事は知っていたんだ。それに魔物狩りに行きたかったことも。だけど、どうしても俺はレオン王子を助けたかったんだ。……同じ、男に結婚を申し込むなんてことをした上女性恐怖症まで発症なんて不憫すぎる。」


兄よ後半が本音なの?

とりあえず事情はわかった。

でも、私はどうすればいいの?


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