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声が聞こえてきた。


『何で…までついてくるんだよ……。』


『……とどめを……やろうかと……。』



声は兄のようだ。

もう1人は……クリス様?

どうしてここへ?


ようやく姿が見えてきた。

やっぱり兄とクリス様だ。

兄はまあ良いとして、クリス様は他国の王子だよ。

突然こんなところに来て良いのかな?


「リリーナ!話し合いはどうなった……ってレオン王子はどうしたんだ?!」


兄がびっくりしたようにレオン王子を見ている。

そうだね、固まって反応がないもんね。

兄はレオン王子に近づき体を揺さぶり始めた。

あ、そんなに揺らしたらダメだよ。

ほらほら何だか本当に倒れそうだよ。

その時レオン様がやっと意識を取り戻した。


「う、うーん?あれ?どうしてここにリカルドがいるんだ?私は夢を見ていたのかな。きっとそうだ!そうに違いない。」


何やら兄を見て元気を取り戻したようだ。

では、婚約破棄の話の続きをしましょうか?

私がレオン様にもう一度話しかけようとしたら、その前にクリス様がレオン様の前に立った。


「やあ、レオン王子。久しぶりだね。私のことを覚えているかい?」


レオン様に話しかけたクリス様を兄が必死で遠ざけようとしている。

だけどそんなことは気にせずクリス様はレオン様へ言葉を投げかけた。


「もしかしたらもう覚えていないのかな?そうだね、かれこれ14年程前に数日共に過ごしただけだからね。」


14年前ってレオン様とクリス様は6歳ぐらいってことかな?

そんな昔に会っているんだ〜。

兄はクリス様を動かすのを諦めて今度はレオン様を連れて行こうとしている。

どうしたんだろう?

しかしレオン様は動かない、というか何故かクリス様を凝視している。


「お、おまえは……14年前だと……ま、まさか!」


レオン様が何か思い出したらしい。

しかし兄がレオン様を羽交い締めにして無理やり引きづり始めた。


「リカルド離せ!お前がこうやって無理に引っ張るという事はやはりあいつは……。」


「レオン王子!落ち着いて下さい!一旦ここは仕切り直しましょう。」


結局レオン様は兄の力にかなわず引きづられるように庭園を去って行った。

ということはこの場に残っているのは私とクリス様とアンジュ様の3人。

この3人で何の話をしろと?

私が悩んでいるうちにクリス様がアンジュ様に話しかけていた。


「君が新しいレオン王子の婚約者かい?でも君ではレオン王子とは結婚出来ないよね?」


クリス様がアンジュ様にそう問いかけた。

アンジュ様は困ったようにクリス様を見つめていたと思ったら、一礼をして駆け足でその場を後にした。


え?

アンジュ様はレオン様と結婚出来ないの?

そして何故クリス様はそんなことわかるの?

私がそう考えているとクリス様が私の頭を軽くポンポンとした。


「リリーナお疲れ様。レオン王子の相手で疲れたんじゃないかい?とりあえずみんないなくなってしまったようだから屋敷に戻ろうか?」


「いえ、別にそんなに疲れてはいませんよ。ただ屋敷に戻る前にお父様達に報告しなければいけないのですが……何だか何も解決していないようです。」


私が困ったように言うとクリス様は笑顔でこう返してきた。


「リリーナ大丈夫だよ。確実にダメージは与えているからね。でも、今日はこれ以上話しは出来ないようだからまた今度だね。私はここにいることがバレると騒ぎになるから先に屋敷に戻ることにするよ。じゃあ、また後でね。」


クリス様は再度私の頭をポンポンっとしてからこの場を去って行った。



そして誰もいなくなった。

一体この数分は何だったんだろう。

特に兄が現れてからは嵐のようだった。

私は一先ず報告に向かいますか。

でも何て説明すればいいんだろう?



「……という訳であまり婚約破棄の話に進展はありませんでした。申し訳ございません。」


私はありのままを報告しておいた。

私の報告を聞き反応はそれぞれ違った。

王は頭を抱えて唸っている。

レイチェル様は愛用の扇でビシッビシッとご自分の手を叩いている。

父は「ふっふっふ」と何か悪い笑顔で王を見ている。

母はその横で自分の拳の調子を確かめているようだ。


まず母はたぶん兄を教育しようとしていると思う。

兄よ、今日は5回じゃすまない。

そしてもしかしたら足も出る。

ガンバって。


「あの、今日はこれ以上話しは出来そうもないのでまた後日ということでもよろしいでしょうか?」


私の言葉にまずレイチェル様が反応してくれた。


「リリーナ大変だったわね…本当にごめんなさい。やっぱり無理やりにでもこの場にレオンを連れてくるべきだったわ。今度は関係者を全員集めて一気にやっちゃいましょう。」


そうだね。

私の話しはレオン様に通じないから誰かがいた方がいいね。


「では私達は帰ります。さあ、リリーナ行きましょう。そしてリカルドが屋敷に戻ってくるのを首を長〜〜くして待ちましょうね。」


母よ、何ですかその笑顔。

笑顔なのにコワイ。私が怒られているわけじゃないのにこのプレッシャー。

兄は大丈夫かな?

頑丈だからきっと大丈夫だよね。

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