(22)
奇しくも婚約破棄の話をした庭園でレオン様と話し合うことになった。
私は1人庭園を奥へと進んでいく。
歩みを進めて行くと何か話し声が聞こえる。
レオン様かな?
『……だから、……もう謝ろうかと……』
『……ダメで……。まだ足りない……』
ん?
レオン様ともう1人いるみたい。
私がそっと覗くとやはりレオン様とあれは確かアンジュ様だっけ?
何だかもめているみたい。
もしかして未だに婚約破棄が実現しないから?
それは申し訳ない。
私はレオン様とアンジュ様の方へと向かった。
2人は私に気付くと慌てて言い合いをやめたようだ。
思い出したかのようにアンジュ様がレオン様の腕にくっついた。
レオン様も笑顔でアンジュ様を見ている。
なんか、前に見た演劇の一場面のようだ。
「お待たせ致しました。レオン様、私と2人で話しをしたいとのことでしたがアンジュ様もご一緒だったんですね。」
私の言葉にレオン様が反応した。
なんかちょっと興奮している。
「リ、リリーナ。もしかしてアンジュも一緒だから嫉妬したのかい?いや、きっとそうだよね?」
うん?
今おかしい言葉が聞こえたんだけど…。
誰が誰に嫉妬するの?
何故に今そのセリフ?
やばい、疑問しか出てこない。どうしよう。
ここは素直に聞いてみるか。
「あの、レオン様。嫉妬って私がですか?レオン様安心して下さい私はレオン様とアンジュ様の味方ですよ。お2人が仲睦まじく過ごされている姿を見て喜ぶことはあっても嫉妬なんていたしませんわ。」
ドサッ。
あれ?
私の言葉を聞いてレオン様が膝をつかれて顔を下に向けられている。
ど、どうしたの?
いきなりの行動にさすがの私もびっくりしてしまい固まってしまった。
なんかブツブツ言ってるよ〜。
『ここはもう土下座か?いやそれぐらいじゃ無理なのか…。どうすればいいんだ。』
レオンさま〜とりあえず立ち上がってよ〜。
その時アンジュ様が気丈にもその姿のレオン様の耳元で何かつぶやいた。
するとレオン様はアンジュ様の方を向き、なんかすがりつくような目でアンジュ様を見ている。
アンジュ様は力づけるように頷いた。
レオン様はやっと立ち上がってくれた。
一体何が起きたの?
「いや、すまない。ちょっと立ちくらみがしてね。」
え、ちょっとの立ちくらみで膝ついちゃうの?
もう少し誤魔化すにしても何かあるでしょう。
でも、何かやつれているからフラフラなのかな。
「そうですか…。レオン様、数日会わない間に少しお痩せになりましたか?」
するとまたレオン様が私の言葉に反応した。
そしてまた興奮している。
「リリーナ!私の体調を心配してくれたんだね?たった数日なのに体調の変化に気付くなんて私のことをよく見ていてくれている証拠だよね?」
いや、普通に気付くでしょう。
誰が見たってやつれているよ。
何があったの?この数日で。
ある意味父と同じ状態だね。
「あのレオン様。たぶん誰が見てもわかるぐらいやつれてらっしゃいますよ。」
私の言葉にまたうな垂れている。
何だか面倒くさくなってきた。
とっとと本題に移ろう。
「ところでレオン様。婚約破棄の件なんですが…」
私が婚約破棄の話をしようとしたらレオン様が途中で私の言葉を遮るように。
「婚約破棄。そうだよ、リリーナ。婚約破棄の話を君にしたけどリリーナ、君はどう思っているんだい?この間はきっと君もショックのあまりすぐにいなくなってしまったようだが、本当は悲しかったんだろう?だからここ数日は城にも姿を見せなかったんだよね?」
どう思っているって…。
王妃教育受けなくていいって素敵だなぁとか?
これは言っちゃ駄目なやつかな。
ショックとか悲しいとかまったく無いのだけどどうしたらいい?
なんかやっぱりレオン様との会話って難しい。
それからさっきから気になっていることがあるのだけど。
たぶんアンジュ様笑いをこらえている。
ちょっと前から肩が小刻みに震えている。
あとところどころで「くっ」とか「っふ」とかもれてる。
どうしようかな〜。
話しが前に進まないよ。
レオン様何がしたいんだ。
「レオン様。アンジュ様。私はお2人の邪魔はいたしません。きっと王様や王妃様もわかってくれます。だから婚約破棄の話を私だけにするのではなくお2人のご両親になさって下さい。いつまでもこのままではレオン様はアンジュ様を伴ってパーティーなどにもご参加出来ませんわ。」
ヨシ!言いきった。
私は自分の言いたかったことを言ってスッキリした。
満足してレオン様の方を見ると……。
ありゃ?
固まっている。
どこか遠くを見て反応がない。
試しに失礼を承知で顔の前で手をヒラヒラさせてみた。
うん、まったく反応がない。
私がこの終わりの見えない話し合いに飽きてきた頃、遠くの方から声が聞こえてきた。
どうやら誰かがこの場所に近づいて来ているようだ。
誰でもいいから何とかして下さい。
お願いします!




