(21)
父と母との話し合いの次の日、私達は王宮へと向かっていた。
父は今日こそはと、かなり気合が入っている。
母は朝早くに庭で気合いの入った素振りをしていた。
母よ…それは日課なんだよね?今日の為じゃあないよね?
あっという間に王宮に着いた。
父が昨日のうちに王に連絡をしていたらしくすぐに謁見できるようだ。
ん?
何だろう。
非常に強い視線を感じる。
私が何気なく視線を感じる先を確かめてみると……。
にょ!!
お、思わず変な声が出そうになったよ。
声を出さなかった私エライ!
視線は……アレはたぶん、レオン様。
本人的に隠れているつもりなんだろうなぁ。
結構離れているけど私は目が良い。
2階の部屋から体を隠すように覗いている。
だけどついこの間会って婚約破棄の話をした時よりだいぶやつれている。
ここから離れているから自信がないけど、私の方を見て喜んでいるような?
何で婚約破棄をした相手を見て喜んでいるのかな?
相変わらずよくわからない。
とりあえず見なかったことにしよう。
隠れていたようだし、本人も気付かれたくないはずだ。
なかったことにして王宮内へと入った。
父と母と私はすぐに王と王妃のいる部屋へと通された。
「リリーナ!あなた領地に帰る途中に襲われたって本当?大丈夫?怪我はない?」
部屋に入った途端レイチェル様が私の側まで来て心配そうに話しかけてこられた。
「レイチェル様、心配していただきありがとうございます。どこも怪我はございません。賊も全員捕えましたので大丈夫ですよ。」
私は安心させるようにそう答えた。
すると安心して周りを見る余裕が出来たのか母に気付いた。
「まあ、久しぶりねリーザ。元気そうで何よりだわ。今回はうちのバカが本当に迷惑をかけてごめんなさいね。」
「レイチェル様お久しぶりでございます。今まではまあ何とかなってきましたが今回の婚約破棄については、さすがに無理ですわね。」
「相変わらずねリーザは。それからここには私達しかいないから昔のようにレイチェルと呼んでちょうだい。あなたに様をつけられると恥ずかしいわ。」
母とレイチェル様は昔から知り合いのようだ。
私は今初めて知ったけど。
話しぶりを聞いていれば仲が良いみたいだ。
「王よ、レオン王子はまだ婚約破棄の件について何も言わないのか?」
父が確かめるように王に話しかけた。
「ああ、レオンは何も言わない。ただここ数日リリーナ嬢が王宮に来なかったからだろうな…。城の者にリリーナ嬢を見なかったか聞いてまわっていたらしい。領地に帰っていたことは伝えてなかったからな。リリーナ嬢の王妃教育が始まってからはほぼ毎日のように城に来ていたのに、それが見えなくなって今さらながら焦ったんだろう。本当に何をやっているんだか。まあ、一応仕事はきちんとこなしていたがな。」
レオン王子…何をしているの?
婚約破棄されたら普通城に来なくなるでしょう。
王の話しを聞いた母が笑顔で言った。
「いつまでもこんな事に時間をかけている暇はありませんわ。さあ、レオン王子をここに呼んで下さい!はっきりとここで宣言していただきましょう。」
さすがです。
誰も答えを出せない問題の元凶を呼び出して締め上げるなんて。
母の言葉で腹をくくったのか王がレオン様を呼ぶよう控えていた者に命じた。
数分後レオン王子に伝えにいった従者が帰って来た。
レオン王子は連れて来なかったのかな?
「陛下、レオン様はリリーナ様と2人で話しをしたいとおっしゃってこちらへは来られませんでした。申し訳ございません。」
私と2人で?
うーん?話し合い出来るかな〜。
別に会っても良いけど、今までのパターンだと無言か逆に饒舌に関係ない話題を一方的にまくしたてるかのどちらかなんだよね。
「あの子ったらいくら親子とはいえこの国の王が呼んでいるのに来ないなんて良い度胸ね…。」
レイチェル様笑顔で手に持っている扇をビシビシ叩くのやめてください。
何故か王が震えているよ。
ここは私が頑張りますか。
「あの、私レオン様ともう一度お話ししてみます。もしかしたら新しい婚約者の方をどう紹介したら良いか悩んでいるのかもしれないですし。お父様、お母様、私頑張ってきますね。」
私の言葉を聞き何故かみんな微妙な顔をしている。
あれ?何か変なこと言ったかな?
そんな中レイチェル様が私にこう言ってきた。
「リリーナ、さすがに何もないとは思うけど……もしも、もしもよ。レオンが変なことをしてきたら問答無用でやってしまっていいわ。それで処罰されることは絶対ないから。あの子もリリーナ不足でおかしくなっていても不思議ではないから…」
え?
変なことってどんなこと?
難しいなぁ。
とりあえず物理的手段は今日は封印で。
話し合いをしよう。
こうして私は今一度レオン様と婚約破棄について話し合うことになった。




