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声の聞こえた方へ駆けつけるとそこはカオスだった。


え、ナニコレ。

私の目がおかしくなったのかな。

子供は無事発見した。

とりあえず見た感じはかすり傷程度だ。

問題は……。



今、目の前にいる魔物だ。

捜していた狼型も、まあいるって言えばいる。

目下捕らわれ中だけど。


昔、本で見たことがある生物に似ている魔物だ。

でも確かあの本『海の生物』っていう題名だったような。

あきらかに森にいるのはおかしいやつだ。

えーっと、私の記憶に間違いがなければあれは『タコ』だと思う。

大きさは完全に間違っているけど。


今、私の前でタコ型の魔物が狼型の魔物を腕なのか足なのかわからないもので捕えて振り回している。

タコ型の魔物の大きさは2メートルぐらい、大きいけどそれでも同時に狼型の魔物を8匹も振り回すってどれだけの筋力があるんだあの腕、もしくは足は。

1本、1本が太い。

本には頭に見える部分が胴体で、口や目は腕っぽいところの生え始めのところだと書かれていたけどあいつはどうなんだろう?

あくまでもタコに似ているだけで、魔物は魔物だし。

それに普通こんな森にはいないよね。

そうやって観察していたら、目が合った。


え?

胴体だと思っていた部分に目があるよ!

やっぱりこいつはタコもどきってことか。


とりあえず子供を助けなきゃ。

私は呆然とタコもどきを見つめる子供に声をかけた。


「大丈夫?痛いところはないかしら?」


突然話しかけられたためかその子はビックリした顔をした。

しかし私の姿を見ると涙目でしがみついてきた。


「こ、こ、こわいよ〜。た、助けて。」


あまりの怖さに声が震えている。

私は安心させるように体をポンポンと叩いて抱きしめた。


「もう大丈夫よ。ひとまずここは危険だわ。今あの魔物は狼型を振り回すのに夢中だから、一緒に逃げましょう。」


この子がいたのでは戦うことは出来ない。

さすがにあの数を守りながら相手にするのは、この子を危険にさらしてしまう。

私達が逃げようとした時、タコもどきがそれに気付きなんと振り回していた狼型の魔物を投げてきた。

しかも中々のコントロールとスピードで真っ直ぐこちらへと向かってくる。

私は子供としっかり手を繋いでいたため剣を抜けない。

せめて子供を守ろうと覆いかぶさり、来るはずの衝撃に備えた。


……あれ?

その衝撃が来ない。

不思議に思い振り返ると、投げられてきたはずの魔物が矢を身体中に浴び地にふせっている。

どういうこと?

するとここにいるはずのない人が出てきた。


「リリーナ、大丈夫かい?」


そう私に尋ねるのは……クリス様だ。

私はビックリしてクリス様に質問した。


「な、何故このようなところにクリス様がいらっしゃるのですか?」


「リリーナ、その話はまた後でね。まずはその子の安全を守らなきゃ。どうやら他のみんなも来たようだよ。」


その言葉通りトーマ達がやって来た。


「リリーナ!大丈夫か!1人で行くなんて……ってそいつは誰だ?」


トーマは警戒しながらクリス様を見ている。

そうか、トーマは昔のクリス様しか見てないから誰かわからないのか。

でも今はそれどころではない。


「トーマ、1人で飛び出たことは謝るわ。でも今はそれどころではないから後でにしましょう。それよりこの子を村まで連れて行ってもらってちょうだい。」


私は抱きしめていた子供を安心させるようにゆっくり背中を撫でて、仲間に託した。


トーマは「わかった」と言い、すぐに仲間の1人に村まで連れていくよう指示を出した。

その間他のみんなは、タコもどきの狼型振り回しを見学。

見入っちゃうよね、アレ。


さて、どうしようか。

今の状態だとあの振り回している狼型の魔物も武器になっているよね。

あの腕を切り落とせばいいのかな?

でもタコは腕が再生するって書いていたけど、魔物だとどうなるのかな。


「ねえ、トーマ。あの腕切り落としてみましょうか?」


「うーん、そうだな。攻撃するにもあの腕邪魔だしな。わかった俺が1度やってみる。」


そう言うとトーマはタコもどきの腕の1本に斬りかかった。

ザクッ

ドサッ

切り落としに成功した。

狼型の魔物はずっと凄い力で振り回されていたためか、もう生きてはいないようだ。


タコもどきは攻撃されたためにこちらへと敵意を向けてきた。

その攻撃をされた腕は……わずかながら再生が始まっている。


「ねえ、トーマ見て!あの切ったところ再生が始まっているわ。完全に再生する前に決着をつけないと。」


私の言葉を受けてトーマがみんなに指示を出す。


「みんな聞いてくれ!こいつはどうやら再生能力があるらしい。腕を全部切り落として一気に片付けるぞ!」


トーマの言葉にみんな「おーー!」と返事を返した。

私も戦闘に参加しようとするとクリス様が私に話しかけてきた。


「リリーナ私も援護するよ。腕は任せるから私は目を狙う。君の強さは知っているけど無理はしないようにね。」


「わかりました。クリス様ありがとうございます。」


私達はそう会話を交わすとすぐに戦闘に参加した。

トーマに1本腕を切られたせいか警戒しているらしく、狼型の魔物を振り回しながら威嚇してきた。

腕を高く上げているせいで斬りにくい。

そっちがその気なら……。


私はタコもどきがいる近くの木に登った。

ちょうどタコもどきの腕の位置の高さだ。

私はためらうことなく剣を構え、そこから飛び降りざまに腕を斬りつけた。

ザクッ

ドサッ

うん、見事に腕を切り落とした。


みんなビックリした様子だったが、いち早くトーマがみんなに指示を出した。


「今だ!魔物は何が起きたかわかっていない。他の腕も下がってきている全部切り落とせ!」


その指示にみんな一斉にタコもどきに飛びかかった。

クリス様も弓で目を狙って確実にダメージを与えている。

そして1本また1本と切り落とされていく。

ついに全部の腕を切り落とした。


タコもどきは体を真っ赤にして怒っている。

ここまでくればあとはトドメを刺すだけだと思っていたとき突然タコもどきが飛び上がった。


うそ……空飛べるの?


空を飛ぶわけではなく凄い勢いでジャンプしたようだ。

そして何故か私に狙いをつけて急降下してくる。

いい度胸だね。

私はヤル気満々でタコもどきを迎え討とうとした。


だがそれは不発に終わった。

何故なら……。


「リリーナ!危ない!」「リリーナ!」


私の目の前にはトーマの背中。

そして後方からは目を疑う程の矢の嵐。

その矢は一寸狂わずタコもどきに命中。

最後はトーマがタコもどきを一刀両断。


あれ?

私の出番は?

うん、まあ無事倒せたんだからイイよね。うん……。


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