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終幕

 いろいろあったけど、思えばあっという間に大会は終了した。

 というか、大会自体が本当に終わっちゃったんだよね……私の試合終了後に。

 思ったよりユーロ達のことが問題になってしまったからなんだけど、まさか大会自体がそこで中止になってしまうとは思わなかったよ。

 結局あの姉妹としか戦ってない、あれは純粋に楽しめる種類のものではなかったし、本当はもっとしっかりやり合いたかった……



 ……なんて、いろいろ物思いにふけっている風を装っているけど、そろそろ目の前の現実に目を向けざるを得ないかもしれない。


 この私の目の前を大きく遮る物体達を。



「うわー、スゴイ! これ全部リリーナお姉様宛ですか? 」


「そうよ、これでもまだ半分かしらね?」


「ふぁ〜、さすがはリリーナお姉様です! 」


「まあ、中途半端に終わったとはいえあの大会でアレだけ存在感を示せばこうなるわね」


 アンジュさんとお祖母様が楽しそうに目の前の物体達を見ながら話している。

 私としてはこの物体達を早く、本当に速やかに処分したいのですが。


「でも、本当にこの国って独自の文化を歩んでいますよね……あ、も、申し訳ありません」


 アンジュさんがこの国の非常識を口にして、そしてお祖母様の出身地と思い出して謝っている。

 別に本当のことだとは思うけど、国が違えば常識も違うと改めて感じるわ。


「いいのよ、気にしなくて。だいたいコレをどうしろって言うのっていつも思っていたのだから。国を出て、他の国を見て良くわかったわ、この国の脳筋ぶりを」


 お祖母様が心底呆れたようにため息まじりにそう言った。

 やっぱりそう感じちゃいますよね〜

 お祖母様の言葉にアンジュさんはひとまず安心したようだ。


「それにしても、よくここまで短期間に仕上げて来たわね。ほら、これなんてかなりの力作よ」


 そう言うとお祖母様は物体その一を持ち上げた。

 うーん、どこからどう見ても『棍棒』にしか見えない。

 なんで棍棒?意味がわからないんですが。

 お祖母様が持ち上げているものは木で出来た推定1メートルほどの棍棒で、無駄に装飾が細かい。

 そしてそれと一緒にくっついているのがいわゆるお見合いようの姿絵。


「ふーん、これは国随一の資産家の次男の釣書みたいね。さすがに細工が細かいわ。こっちは公爵家のね、しかも後継の長男……あら、王家からのもあるわ。リリーナ、よりどりみどりね? 」


 どうやらお見合いの申し込みらしい。

 では、何故棍棒がことごとく付いてくる?

 大小様々、細工はもちろん宝石なども付いている。


「あの、お祖母様。何故お見合いの申し込みに棍棒が付いてくるのでしょう? この国では申し込みには立派な棍棒をつける伝統があるのですか?」


 いや、本当に謎の伝統でしょう。

 どうするのよこの棍棒コレクション。

 お店が開けそうだけど、棍棒を買う人ってそんなにいるのかな?


「まあ、伝統といえば伝統でしょうけど別に棍棒を絶対につけるってことではないわね。つけるものは正式には相手の得意武器よ。」


 百歩譲って相手の得意武器を贈るということは認識した。

 しかし、では、何故、私は棍棒を贈られなければいけないのだ?


「お祖母様、何故私は棍棒をこんなにもらうことになっているのでしょうか? 私の武器は剣のはずでは? 」


 私の言葉にお祖母様はニコッと笑って


「あら、だってリリーナ。あなた大会中ずっと木の棒持って戦ってたじゃない?この国の人にとったら木の棒イコール棍棒だったようね。しかも最後にはその木の棒も木っ端微塵、ちょっと悲しそうな顔をしていた顔もしっかり見られていたようで、新しい木の棒をこの機会にプレゼントしようと今棍棒がちょっとしたブームになっているわよ」


 知りたくなかった最近のブーム。


「でも、棍棒も引きますけど、このお見合いようの姿絵もスゴイですよ。見て下さい、リリーナお姉様! 」


 そう言ってアンジュさんが見せてきた姿絵。

 チラッと視線を送って、そして後悔した。


「アンジュさん……それは静かにしまいましょう。ええ、もうどこかにまとめて縛って、封印しましょう」


 私は姿絵を視界から外して、アンジュさんにそう提案した。

 なんで、お見合いようの姿絵が上半身裸、筋肉祭りになっているのかな?

 むしろ顔より上半身の筋肉の描写がはっきりしているようなんですが。

 私の言葉にお祖母様が


「リリーナ、これがこの国の普通よ。お見合いの申し込みには武器と上半身裸の姿絵」


「お祖母様……大変申し訳ありませんがこの国の常識に慣れるつもりはありません」


 もう、筋肉も脳筋も露出多めの衣装もお腹いっぱいだ。

 私の心からの言葉にアンジュさんも苦笑いしている。

 とにかくお見合いはしない、それから棍棒もいらない、そして何よりこの有害な姿絵をどうにかして欲しいと心の底から思った一日だった。



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