表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/187

当然の結果

 試合会場は静まり返っている。

 先ほどまで圧倒的な強さを見せていた『私』が倒れているからだ。


「……ふ、……ふふ、あ、あはははは! やったわ……やりましたわ! やっぱりこの私が一番に決まっているのよ。ふ、ふん! こんなほっそい体で何が出来るというの? 」


 ユーロが私の前で勝ち誇った顔をしている……と思う。

 完全に自分が勝ったと思っているに違いない。


「さあ、早く私の勝利を宣言してちょうだい。こんなところで時間を取られたくないですわ」


 好き勝手言ってくれるね。

 ……うん、もうそろそろかな。



「こ、これは……しょ、勝者は、ユーっふが!」


 私は勢いよく起き上がると審判の口を押さえた。

 負けてないのにユーロの勝利宣言をされたら困るからね。


「え? 」


 ユーロが幽霊でも見たような顔で私を見てくる。

 その顔は少し青いような……。


「よいしょっと……あら、失礼。少し、はしたなかったですね」


 やっぱり毒の影響か、少し力が入りずらいけど……うん、抜けてきたかな。


「あら、ユーロさんお顔のお色が非常に悪いですよ? どうしてそんな有り得ないものを見たようなお顔をなさっているのかしら? 」


 ふふ、私が立ち上がったのがよっぽどショックだったみたいだ。

 自分の攻撃に絶対の自信を持っていたんだろうからね。

 私はユーロを視界の端に入れながら、あたりを見渡した。

 …………あっ、アレン君がお祖父様に、アンジュさんがお祖母様に拘束されている。

 たぶんだけど、私が倒れたのを見て咄嗟にこちらに来ようとしたんだろうね。

 ところでお祖父様ったらいつの間にアレン君の側に行ったんだろう?



「な、な、な…………」


 うん?

 なんか小さい声で『な』の連呼が聞こえたような。

 私が声のする方、視界の端にいたユーロの方を見ればこちらを指差し小刻みに震えている。


「なんで! どうして立てるのよ! そんな何も無かったかのように……。ば、化け物、そうよ、きっと、そうなんだわ。あなたは化け物なんでしょう! 」


 え〜〜、人のことを化け物扱いするなんてヒドいんじゃない?


「人を化け物扱いするなんてあんまりですわ。それにちょっと倒れてその後起き上がっただけなのに、そのようにおっしゃるなんて……おかしいですよね? 」


 観客からすれば私はユーロの攻撃を普通に受けて倒れたように見えたはず、もちろん審判も。

 でも、それだけで化け物扱いするなんてみんなもおかしいと感じるはず。

 まあ、ここで本当はユーロが毒を使用したことをサラッと言っちゃえば終わりだけど……さすがにそれは言わないよね。

それに、ただの毒なら何でもアリのトーナメントでは反則ではないと言われるかもだし。



「だって……あの大熊だって目覚めることがないまま葬り去れる強力な毒なのよ! 化け物でもない限り、生きて……ましてやそんな風に動けるなんて無理なのよ! 」


 あ、言っちゃった。

 大興奮中のユーロは全く気付いていないけど、観客や審判は信じられないような顔でユーロを見ている。

 そりゃそうだ、ある意味自分で不正を告白しちゃったんだもん。

 でも、興奮状態のユーロは周りの様子などどこ吹く風で……。

 これは私が優しく教えてあげるべきなんだろうか。


「そう、では予選でアンジュが負けたのもその毒のせいなのね? 実力では勝てないと思ってそのような卑怯な手を使ったと、そういうことですよね? 」


 ちょうどいいからアンジュさんのこともこの場で明らかにしてもらおう。

 興奮しているからきっと話すはず。


「っく! あの予選の子に使ったモノなんて子供騙しみたいなものよ! だけどあなたに使ったモノは最上級の効果のあるモノ……なんで、どうして……」


 面白いぐらい話してくれるね〜〜。

 じゃあ、一応なんで効かなかったのか説明しようかな。

 と言ってもそんな難しい話じゃないけどね。


「そんなに理由が知りたいんですか? 良いですよ、教えてさしあげます。でも、とっても簡単なお話なんですよ? 私、自国では高貴なお方の婚約者候補として教育を受けていたんです。そういう方達はもちろん護身術も学ぶでしょう? その一環で毒の耐性も上げてましたの」


 私の言葉にユーロは納得していないようだ。

 不満気な顔でこう言い募った。


「毒の耐性? そんな耐性があったとしてもこの毒の前では誰しも無力のはずなのよ! 」


 うーん? そう言われましても……。

 まあ、でもよく考えたら私が王妃教育の一環で毒の耐性を上げようとした時、担当した方から言われたっけ『リリーナ様は既にかなりの耐性をお持ちです』って。

 確かあの担当の人、若干顔が引きつっていたような記憶もあるような、ないような……。

 とりあえず効いてないんだから良いよね。


「と、言われましても効かないものは効かないんですよ。……ところでユーロさん、あなたご自身が私に毒を使用したことを大きな声で言ってしまっていますけど……大丈夫ですか? 」


しかも葬り去れる毒って言っちゃってましたけど。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ