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本命

 私は今まで魔物や人と何回も戦ってきたが、女性に対してここまで本気になることはなかった。

 はっきり言って私よりも物理的に強い女性はあまりいない。

 弱い者イジメは嫌だもん。

 でも、今回はちょっと加減が難しいかも。

 私の大事な友人に手を出したんだから。



『さあ、続いての対戦は皆様お待ちかねの注目のカードです! 新妖精姫リリーナ選手対男性の憧れの的ユーロ選手です。どちらもかなりの実力者、皆様お見逃しのないようお気をつけ下さい』


 私達が会場に出ると、客席からは溢れんばかりの歓声が鳴り響いた。

 その中を私とユーロはお互いに睨み合いながら中心へと進んで行く。

 殺気は出してないよ、だってたぶん相手が動けなくなるからね。

 出すのは今じゃない。



「よく逃げ出さずに来たわね」


 どの口がそんなアホなことを言っているんだろう?

 逆にそっちこそよく逃げ出さなかったものだと思うよ。

 よっぽど腕に自信があるのか……もしくは何かをするつもりなのか。

 どちらにしろ私はヤられないけどね。


 とりあえず目の前のユーロと話すことはないので黙ったままでいることにした。

 すると自分が無視されたのが頭に来たのか早くも真っ赤になっている。

 それで試合出来るのかな。


 試合開始の合図がまだの為、さすがに突っ込んでは来なかった。

 ユーロはその身体に見合った大剣を装備している。

 対する私はもちろん例のアレだ。

 ユメールの時と同じ木刀とは名ばかりの木の棒。

 ちなみにこの木の棒を使うのはこの姉妹にだけ。

 他の試合にはちゃんと愛用の剣を使用する予定だ。



『早くも両者の睨み合いが始まっております! 私も試合の行方が気になります。では注目の対戦です、準備は宜しいですか?……はい、では始め! 』


 ついに始まった。

 私達は睨み合ったまま動かない。


「あら、怖くて動けないのかしら? 今さら遅いわよ。私達を馬鹿にしたんですもの、このまま棄権なんて認めないわ! 」


「怖がっているのはどちらなんでしょうね? それから許せないのは私の方です。私の大切な友人にしたこと忘れたとは言わせませんよ」


 私の言葉にユーロはニヤッと嫌な笑い方をしてきた。


「何のことかしら? 覚えがないわね〜。友人というのは私が予選で戦ったあのひ弱な子かしら? 普通に倒しただけで怒りをぶつけて来るなんて、やっぱり他国の人間は身体に見合って貧弱ね」


「……そう。そうですね、あなたがそう簡単に認めるような可愛らしい女性なわけないですよね。ふふ、ならこの国のやり方に倣いましょう。私が今からあなたを倒します」


 私はそう言うと木の棒を握りユーロに突撃した。

 ユーロの懐に一瞬で潜り込みそのまま一気に木の棒を振り抜いてユーロを弾き飛ばす。

 そしてそのまま追撃。

 あんまり木の棒は役に立ってないかな?



 会場は静まり返っている。

 私はユーロの体から離れ、少し距離をとった。

 まさかこれで終わらないよね?


 しばらく待つとユーロがヨロヨロと立ち上がった。

 その目は怒りに燃えている。


「な、何なのよぉぉーー!! そんな体で私を吹き飛ばすなんて……一体どんなズルをしたって言うの!! 」


 私の攻撃を直に受けてそれをズルなんて言うあたり、この人はあまり強くない。


「ズル? そんなことしていないってわからないほどあなたは弱いのですね。だからこそアンジュさんがあなたに負けたことの方が問題なんです。アンジュさんが真正面からあなたとやり合っていたら負けることなんて絶対ないんですから」


 私の言葉にますます顔を怒らせ真っ赤に染まっていく。


「図星を突かれてますます怒っていらっしゃるんですか? 」


 私はわざと怒らせるような言葉を選んでいく。

 ただ吹っ飛ばすだけでは許せないもの。



「っく! こ、この、絶対許さないわ! この私があなたのような他国の、貧相な体の者に破れるなんて……あり得ないわ!! ……ふ、ふふ、そうよ、私にはまだアレがあるもの。負けることなんてあるわけないじゃない。早くアレを使って……そうしたら私の勝ちよ」


 ユーロがギラギラした目で私を見てくる。

 まだ自分が負けるとは認めていないようだ。

 じゃあ、何かしてもらおうじゃない。


「自分の実力もわからないのにまだ戦うのですか? 良いですよ、ではとことんやりましょう」


 私は木の棒を構えた。

 ユーロも大剣を構え直し、私の方へ突撃して来た。

 本当に何とかの一つ覚えと言うか、突撃が好きだね。

 このまま避けることも簡単だけどそれじゃあ力の違いがわからないだろう。

 私はあえてユーロの突撃を木の棒で受け止めた。

 しかしユーロはそれを見越していたのか、すぐに大剣を手放してしまった。


 そして、ユーロが私のことを今までで一番気味の悪い笑顔で見てきた。


「これであなたも終わりよ? 」


 チクッ


 手に何か刺さった感触があってすぐ、私は……


「リリーナさまぁぁーーーー!!」


 アレン君の叫び声が聞こえた。


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