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ヴィージア家

 私が歓声を背に試合会場から戻るとアレン君とリュート様が出迎えてくれた。


「リリーナ様さすがです。まあ、あの程度でリリーナ様に立ち向かおうとする方がどうかしていると思いますけどね」


 と、なかなか辛辣なアレン君。


「リリーナ様のあの戦い方、まさに妖精姫そのもの。しかし、リリーナ様の素晴らしい剣技を堪能する前に試合が終わってしまい残念です。もう少し粘ってくれるかと思いましたが、所詮小物ですか」


 うん、リュート様ってば意外と言うね。

 なんか最初に会った時からキャラが変わっていませんか?


 まあ、とにかく妹は片付けたことだし、次は本命だ。

 そしてその本命さんは、先程からこちらにギラギラとした視線を向けてきている。

 殺気を隠そうともしない。

 でもね……その程度の殺気なんて幼子に突かれているようなものだよ。

 本命さんには手加減するつもりのない私は、大人気ないなと思いながらも本命さんに向けて一瞬だけ殺気を放ってあげた。


「っひぐ」


 あらら、変な声をあげている。

 ほんのちょっと、挨拶代わりにしたのにね。

 そんなんじゃ試合になんてならないよ?



「さて、そろそろ私の出番のようです。相手はヴィージア家のヨルダー殿ですね。これはさすがに今まで通りとはいかないな」


 リュート様がそう言って試合会場へと向かおうとした。


「リュート様なら大丈夫だとは思いますが、気をつけて下さいね。お祖母様もヴィージア家の方はお強いとおっしゃっていましたので」


 お祖母様がヴィージア家の方を気にかけていたので一応声をかけてみた。


「ありがとうございます。リリーナ様に応援してもらえれば百人力ですよ」


 リュート様はそう言うと颯爽と試合会場へ、その後にあの赤い髪のヴィージア家の……ヨルダー様が続いた。

 はっきり言ってリュート様が負けるなんて考えられないけど、試合では何が起こるかわからないからね。

 しかもあのお祖母様が言うくらいだからちょっと心配。



『さあ、続きましてヨルダー選手とリュート選手の登場です。ヨルダー選手は毎回大会上位に入る実力者、対するリュート選手はあの妖精姫の甥御様ですね。これは非常に見応えのある試合になるのではないでしょうか? では準備はよろしいですか………… 始め! 』


 試合が始まった。

 リュート様もヨルダー様も武器は剣を選択している。

 体格はヨルダー様がリュート様より一回り大きい。

 でも、見ていると今までのようにその体格の良さで相手を馬鹿にする感じはしない。

 ……あれ? もしかしてこの大会で初めてじゃない、こんな相手。

 私も純粋に試合を楽しむならこういう相手が良かった。


 なんて考えている間に、既に激しい打ち合いが始まっていた。

 今の所様子見なのか、二人とも激しく打ち合ってはいるわりに決定打は入らない。

 観客は見応えのある試合に釘付けだ。

 もちろん私も。


 三分ほど打ち合いが続いているが、少し流れが変わってきた。

 なんとまさかのリュート様が押し負けている。

 あの怪力のリュート様が押さられるなんて……。

 信じられないことだが、目の前ではヨルダー様がリュート様を剣で圧倒し始めている。



 カキーーン!!


 甲高い音とともにリュート様の剣が地面に落ちた。

 リュート様がその剣をすぐに拾おうとしたが……ああ、その前に素早くヨルダー様がリュート様の首に剣を押しつけ……。

 リュート様が負けを認めた。


『試合終了! 勝者ヨルダー選手、見事な剣技でした。さすがとしか言えませんね』


 リュート様は下を向いていたが勢いよく首を左右に振り、立ち上がるとヨルダー様と笑顔で握手をしている。

 リュート様も強いと思っていたけどまさかそれより強いとは……ふふ、面白いね。

 図体ばかりの力任せな人たちばかりだと思っていたけどこんな人がいたなんて。


「すみません、負けてしまいました。せっかくリリーナ様が応援して下さったのに」


 リュート様は申し訳なさそうにそう言ってきた。

 いやいやそんな顔しないで下さい、なんだか大きな犬が怒られたような感じですよ?


「リュート様、謝らないで下さい。勝負には絶対なんて無いのですから。リュート様が負けてしまったのは本当に残念ですが、この国にもまだあんなに強い人がいるとわかって少し嬉しいと思ってしまっている私の方が謝らなければいけませんわ」


 私の言葉にリュート様はキョトンとしていたがすぐに破顔した。


「はは! さすがリリーナ様ですね。私も自分が強くなっていると思っていましたがまだまだでした。でも、上がいるからまだ頑張れそうです。鍛錬はまた明日から頑張るとして、今日は力一杯リリーナ様を応援します」


 良かった、リュート様はまだまだ強くなれるね。


「ありがとうございます。私も力一杯頑張りますね」


 ええ、そりゃもう頑張りますよ〜。

 さっきからこちらを窺うように見てくる視線が煩わしいのですよ。

 そんなに熱い視線を向けてこなくても大丈夫ですよ、今からじっくりお相手してあげますからね。

 さあ、ヤりましょうか? 本命さん。


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