ヤられたらヤりかえす
「あの、サスケさんはどちらで何をなさろうとしていたんですか? 」
私の質問にサスケさんが小さい声で答えた。
「…………ユ、ナントカ、の家。ヤられたら、ヤりかえす。ジイさん、そろそろ、はなせ」
ユ、ナントカ?
も、もしかしてユーロ、ユメール姉妹の家に忍び込んで……。
でもさすがに家に忍び込むのはどうなんだろう?
アンジュさんにしたことは絶対許せないけど。
しかもヤられたらヤりかえすって言っているし。
私が何と言っていいか考えているうちにお祖父様が
「サスケはアンジュのために行動を起こしたんだろう。ただ、あのままあの姉妹に攻撃を加えても罰にはならん。どうせやるなら人目のあるところで、徹底的に潰さねば。だからすまんがサスケにヤらせるわけにはいかんのだ。手を離しても良いが……もう忍び込むなよ」
お祖父様の言葉にサスケさんは黙ったままだ。
だからお祖父様もサスケさんを捕まえたままなわけで。
お祖父様とサスケさんが見つめ合ったまま時間だけが過ぎて行く。
どうしたものかと困っていると部屋をノックする音が響いた。
「リリーナお姉様……アンジュです。今よろしいですか? 」
私はお祖父様の方をチラッと見た。
お祖父様は頷いている。
「ええ、大丈夫よ。どうぞ」
失礼します、と入って来たアンジュさんはお祖父様とサスケさんの姿を見て見事に固まった。
まあ、そうだよね。
黒一色のサスケさんがお祖父様に捕まっているんだもん。
「あ、え、あの…………お取り込み中申し訳ありませんでした? 」
何でそこで疑問系で謝っているんだろう。
ちょっと面白いよアンジュさん。
アンジュさんの登場で場の空気が和らいだ。
「ふふ、ごめんなさいね。部屋に入って私たちがいるのにも驚くのに、その上この人がサスケの襟を持って捕獲しているのですから。大丈夫よ、別にいじめているわけではないから。むしろサスケがしたことに対しては私たちは結構喜んでいるのよ」
アンジュさんはお祖母様の言葉に首を傾げている。
確かにいきなりその説明じゃ、サスケさんが何をしたのかわからないよね。
でも、アンジュさんのためにあの姉妹の家に忍び込んだこと言っても良いのかな?
なんて私が迷っているのに、何の迷いもなくお祖父様がアンジュさんに説明を始めてしまった。
途中サスケさんが止めようと頑張っていたのだが、健闘虚しく全てアンジュさんの知るところに。
全てを聞きアンジュさんは困った顔でサスケさんの方を見つめている。
対するサスケさんはアンジュさんと視線を合わせようとしない。
一応補足としてサスケさんはお祖父様から解放されている。
「…………ありがと」
アンジュさんが一言つぶやいた。
「…………ああ」
サスケさんも一言だけ。
いつも喧嘩しながら行動を共にしていた二人だけど、意外と良い感じになってる?
もしかしなくても……これはまたしても先を越されてしまうパターンだろうか。
でも、この二人が仲良くなってくれるのは嬉しい。
私は自分の顔がちょっとにやけてしまうのがわかった。
すると二人は
「誤解です! 」
「誤解だ! 」
ふふ、やっぱり仲良しだ。
お祖父様とお祖母様も笑みがこぼれている。
「ところでアンジュさん、体調は大丈夫? 何か用事があってここに来たのかしら? 」
サスケさんのことで忘れていたけど、アンジュさんは何か私に用事があってここまで来たんじゃないのかな。
「あ、体調はもう大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません。あの、用事と言いますか……その、ちょっと、リリーナお姉様に会いたいと思ってしまって。す、すみません! 特に用事があるわけでは無かったんです」
そう言うとアンジュさんは勢いよく頭を下げた。
別にそんなに謝らなくても……私的にはアンジュさんは友人だと思っているのに。
「そんなに謝らないで。私はアンジュさんを大切な友人だと思っているの、だから用事が無くても訪ねて来てくれたことは嬉しいわ。それに……慌てるサスケさんも見れたし」
私の言葉にサスケさんが睨んでくる。
ふふ、そんな顔したって怖くないよ。
アンジュさんを大事に思ってくれてありがとね〜。
あ、そうだ、ちゃんとサスケさんに言っておかないと。
「サスケさん、あの姉妹のことは私に任せて下さい。自分でヤりたい気持ちはスゴくわかりますが、公の場で負かさなければきっと罰にはなりません。大丈夫ですよ……私ももの凄く怒ってますからね。私は負けませんよ」
私が笑顔でそう言えばサスケさんは少々引きつりながら
「ああ、わかった。リリーナさまに、任せる。……えっと、ヤりすぎ、注意? 」
「ふふ、任されました。大丈夫ですよ。ちょっとあの高そうなプライドを粉々にしてみようと思っているだけですから」
ええ、泣いて謝ったって許しません。