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大会⑤

 いくら早く戦いたくったって、まず予選で勝たないとアンジュさんの仇はとれない。

 最後の緑の予選を勝ち抜かねば。

 私は、今まで恥ずかしさのあまりマントで衣装をガッチリ隠していたが、自らそのマントを脱ぎ去った。

 最初から全力でいく。



「おお、やっぱりリリーナ様も妖精のように可憐ですね。これはきっと、新しい妖精姫の伝説が今日始まりますよ」


 …………リュート様に悪気がないのはわかっている。

 わかってはいるけど、そういうことを言われると非常に恥ずかしいのですよ。

 あ〜〜、それからアレン君、真っ赤になりながら視線があっちにこっちに飛んでいるけど、最終的に私の衣装を見て『うわーうわー』って言うのはどうだろう?

 マントを勢いよくとったはいいけど、やっぱり恥ずかしい……。





『さあさあ、ついに予選も最後の緑色です! …………え? あ、はい。皆様! 特に国王世代には朗報です。あの「妖精姫」のお孫様が予選に参加致します。私ももちろんその世代です! 果たして「妖精姫」再びとなるのでしょうか?! 』


 ウォーーーーーー!!


 会場は割れんばかりの雄叫びが飛び交っている。

 今のって、もしかしなくても私のこと……だよね?

 私はそっと、とったばかりのマントに手を伸ばしたが…………その手がマントを掴むことはなかった。


「……お祖母様、その手に持っているマントを」


「ダメよ。さあ、行ってきなさい。あなたの力を見せてきなさい」


 お祖母様はニッコリ笑って、そしてマントを引き裂いた?!

 わ、私の大事な隠れ蓑が……。

 もう、後戻りはできないようだ。


「っく。い、行ってまいります! 」


 私は背筋を伸ばし、他には目もくれず予選会場へと向かった。

 時々、年配の方から熱い視線を感じるが気付かないふりをしながら突き進む。

 さあ、早く予選を始めて!



『お待たせいたしました! いよいよ最終予選、緑色の紐の方々の戦いを始めます。皆さん準備は宜しいですか? …………では、始め! 』


 ふう、やっと始まった。

 さて、とにかく人数を減らさないとね。

 私はひとまず、目の前にいる人へと近づいた。


「おいおい、こんなところにこんなお嬢ちゃんが迷い込んだのか? ここは遊ぶところじゃねえぞ。怪我したくねえなら、とっとと出て行きな」


 近づいた途端こんなセリフを言われてしまった。

 まあ、見た目で判断されたらこうなるよね。

 でも、私のことを見た目で判断するような人だったら大したことない。


「あら? 見た目で実力を判断されるのは如何なものかしら? 安心して下さい、私はここに迷い込んだわけではありませんわ。自分の意思でここにいます。さあ、遠慮せず来て下さい」


 私の言葉にイラッときたようで、目の前の男性は威嚇してきた。


「ふん! 何が見た目で判断されるのは如何なものかしら? だよ。見たらわかるだろう、そんな華奢な体で何が出来る。痛い目みないとわかんねえようだから、お望み通りぶっ飛ばしてやんよ! 」


 そう言うとやっと突っ込んできてくれた。

 私は突っ込んできた男性の前でジャンプし、男性の頭に手をつきそのまま男性の背後にまわり思いっきり蹴飛ばした。

 男性はそのまま勢いよく転がっていき、起き上がることも出来ないようで、いつもの二人組に回収されていった。

 ……やっぱり弱い人だったか。


 私はそのまま次々と近くにいる人を相手にしていった。

 基本、私のことを侮っているので隙だらけだ。

 まあ、隙がなくったって負ける気はしないけど。


 ただ、さっきから気になる人たちがいる。

 アレは、例の三人組の令嬢……アンジュさんに卑怯な手を使った人の妹、ユメールとその仲間たちだ。

 彼女たちはルール違反ギリギリのところで協力しながら勝ち進んでいる。

 このままいけばあの三人と私が残る可能性もあるけど……そんなことさせないよ。


 私は素早く三人の方へと移動した。

 三人はいきなり目の前に私があらわれたのでビックリしている。


「な、なんですの? いきなり。素早さだけは凄いみたいだけど、それだけでしょう? この間はちょっと力を抜きすぎたせいでああなったけど、今回は本気よ。あなたなんてすぐに倒してあげますわ」


 どこからその自信が来るのかわからない。

 ちなみに今、予選会場には十人ほど残っている。

 とっととこの三人を倒さないと決勝トーナメントに進出されちゃう。


「では、やってみて下さい。いつでも良いですよ。なんだったら三人同時にどうぞ」


 私の挑発の言葉に三人はすぐに反応してくれた。


「そんな言葉を言えるのは今だけよ! ふふ、お望み通り私たち三人でお相手してあげる……行くわよ、ニコル! ホーリー! 」


 その言葉とともに三人が突撃してきた。

 迫力だけはスゴイ。

 でも……それだけ。

 私はニコルとホーリーが繰り出してきた拳をそれぞれ右手と左手で受け止め、そのまま投げ飛ばした。

 二人は地面とお友達になったが、すぐに起き上がる。

 そうじゃなきゃ困る、だってただ投げ飛ばしただけだもん。


「なんなんですの? 私たちはこの国の上位の人間よ。それをこう何回も投げ飛ばすなんて……許さない!」


 ユメールがそう言うと、倒れていたニコル、ホーリーとともにまたこちらに突撃してきた。

 うーん、それしか出来ないのかな?

 仮にも上位の人間というなら、こんな力任せの作戦とも言えないような方法で何回も来るだろうか。

 それともこんな脳筋ばかりなの?

 まあ、いつまでもこんな人たちに構っている場合じゃない。


「申し訳ありませんが、皆さんと遊んでいる時間はありませんの。だからこれで失礼しますね」


 私は突っ込んで来た順に少しだけ力を入れた打撃を放った。

 ニコル、ホーリーは喰らうと同時にその場に崩れ落ち、起き上がる気配はない。

 そこに素早くいつもの二人組。

 残されたのはユメール一人。



『終了!! 四人が決定しました! 』


 ありゃ、ユメールを残しちゃったよ。

 私はとっとと試合会場を後にしようとしたが、後ろから声が聞こえた。


「……許さない……絶対許さない! あんたなんか……認めない」


 こちらを睨みながらユメールがそう言う。


「別にあなたになんて認められなくても良いです。ただ、私も許せないんですよ。私の大切な友達を傷つけられたことが。あなたのお姉さんに伝えて下さい。決勝で私が叩き潰しますと」


 さあ、決勝トーナメント。

 出来ればこの手でアンジュさんの仇をとりたい。









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