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大会➃

 アンジュさんは非常に気になる言葉を残し予選へと向かった。

 何だろう、不安しかない。


「大丈夫ですよ、アンジュだってさすがに予選で無茶はしないでしょうから」


 アレン君が励ましてくれるが、果たしてそれを信じて大丈夫だろうか?

 でも、もう試合も始まるし見守ることしか出来ないけどね。



『それではこれより黄色の予選を始めたいと思います! 準備はよろしいですか? …………では、始め! 』


 大会運営者の始まりの合図とともに予選がスタートした。

 参加者を見てみると、この黄色は女性が多く見られるようだ。

 でも、女性だから弱いなんて常識はこの国では通用しない。

 はっきり言って女性の方が押している。


 ほら、今も一人の大柄な男性が同じくらいの体格の女性に吹っ飛ばされた。

 あ、あっちでもまた一人男性が……。

 なんかスゴイとしか言いようがない。


 ところで、アンジュさんは何処にいるんだろう?

 まだそんなに人数が減っていないためアンジュさんを見つけられない。


「なかなかアンジュ、見つからないですね」


 アレン君も一緒に探しているが……うーん、何処にいるの?

 と、その時サスケさんが久しぶりに口を開いた。


「あれ、いたぞ」


 サスケさんが指し示す方を見てみれば、確かにアンジュさんらしき人がいる。

 どうやら自分の倍はありそうな男性と対峙しているようだ。

 男性は明らかに手を抜いてアンジュさんと戦おうとしている。

 たぶんアンジュさんを持ち上げて放り投げようと考えているようだ。


 せっかくの気遣いだけど、無駄になったね。

 男性がアンジュさんを持ち上げて投げようとした時に、アンジュさんがニッコリ笑った。

 と、同時にアンジュさんの蹴りが男性の顎にクリーンヒット。

 見事に決まったようで男性はピクピクするだけで起き上がれないようだ。


 男性はいつもの黒い衣装の人たちに運ばれていった。

 うん、仕事が早いね。


 次にアンジュさんの前に出てきたのは、女性だった。

 とはいえ、もちろんとっても体格のよろしい方だけどね。

 その方を見たリュート様が、なんか『うーん』と唸っている。

 どうしたのかな?


「リュート様、何か気になることでもありましたか? 」


 私の問いかけにリュート様は首を傾げながら


「あ、ええ。今アンジュ嬢と対峙している女性なのですが、見たことがあるような気がしまして…………誰だったかな? うーん」


 リュート様はどうにか思い出そうと頑張っているみたい。

 そうしている間にも試合は進んでいるわけで。

 視線をアンジュさんに戻せば、ちょうどその女性と組み合っているところだった。


 体格は明らかにアンジュさんが劣っているけど、アンジュさんが劣勢なわけではない。

 どちらかというと、アンジュさんが押しているようにも見える。

 このままいけば勝てると思ったその時、対戦相手が…………笑った?

 いや、笑ったって言って良いのかわからないけど、表情が変わったように思えた。



「え!? 」


 それまでアンジュさんが押せ押せだったのに急にアンジュさんが膝をついた。

 別に何か攻撃を受けたわけではない。

 ここから見える範囲では。

 なのにアンジュさんは膝をついたままなかなか立ち上がらない。

 このままではさすがのアンジュさんもマズイと思い始めた時、リュート様が


「あ! 思い出しました。今アンジュ嬢と戦っている相手はユメール……様の姉のユーロ様です。ほら、この間のパーティーでリリーナ様に喧嘩を売って返り討ちにあった」


 ……ああ、あの三人組の一人ですか。

 確かに似ているかも。


「ああ! アンジュが……」


 アレン君の声でアンジュさんの方を見ると、対戦相手の女性ユーロ様に投げられるところだった。

 そんな! アンジュさんがあんなに簡単に投げられるなんて。

 一緒に訓練していたからよくわかる、あんな攻撃でアンジュさんがやられるわけないのだ。


 投げられたアンジュさんは、そのまま起き上がることができず黒い衣装の二人組に運ばれた。

 私たちは急いでアンジュさんが運ばれたところへと向かった。



「アンジュさん! 」


 私の呼びかけにアンジュさんは反応しない。

 まるで眠っているようだ。

 その様子にお祖父様がアンジュさんに近づき、いろいろ確認している。


「ふむ、これはたぶん薬を使われていると思う。怪我はしていないが…………うーん、たぶんこの右手の赤い点が怪しいな」


 お祖父様が言うようにアンジュさんの右手には赤い点が一つあった。

 こんなのさっきまではなかったはずだ。


「アンジュは……アンジュは大丈夫でしょうか? 」


 アレン君が心配そうにお祖父様を見ている。


「ああ、大丈夫だ。リリーナ、お前の薬をアンジュに使ってあげなさい。それは外傷だけではなく毒や麻痺にも有効だ。この程度のものならすぐに良くなるだろう」


 私は慌てていつも持ち歩いている薬を取り出した。

 そうだよね、うちの領地の特別な薬だもん。

 きっとアンジュさんは良くなる。


 私は薬をお祖父様に渡した。

 アンジュさんはお祖父様やアレン君にまかせます。

 私は、私が出来ることをするよ。

 さっきのユーロ様……いや、もう呼び捨てでもイイよね?

 あの笑顔に見えた表情はアンジュさんに何かしたから出たものだったのだろう。


 私の友達に手を出したことを後悔してもらうよ。




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