大会②
アレン君が参加している青色の予選が始まった。
私たちはお祖父様のおかげで前の方でアレン君を応援できる。
百人もいるし、体格が大きい人が多いのでアレン君を探すのは難しいけどね。
うーん、何処にいるのかな?
今のところ予選は一対一での戦いが多いようだ。
まあ、ルールに弱者を多数で倒すのは違反だって書かれていたし、これだけ人がいるといろいろ面倒な気もする。
戦いを見ていると気絶したり、戦闘不能になった人たちは素早くその場から排除されている。
それを行っているのは全身真っ黒の衣服をまとった人たちだ。
…………あの、暗闇だったらきっと目立たないと思うのですよ。
だけど今は真昼間だからね、非常に存在感がある。
真っ黒な人たちは倒れる人が出ると即座に反応する。
基本二人一組で行動しているようで、倒れた人の足と腕を持って移動。
そしてその後は……うん、放置だね。
まあ、次々と運ばなければいけない人が増えていくから、そうでもしないと間に合わないのだろう。
怪我人はまた別の人が面倒を見ている。
でも、大した怪我じゃないからといって、桶で水をかけて起こすのは如何なものなんだろうか。
いろいろ大雑把なんだよね。
さて、そうこうしているうちに戦っている人たちも大分減ってきたようだ。
今残っているのが三十人ぐらいだろうか?
あっ!
アレン君発見。
アレン君はアレン君よりもかなり体格の良い人と対峙している。
ここからでは会話の内容なんてわからないけど、表情でなんとなくわかる。
アレは完全にアレン君を見下しているね。
なんだかアレン君を小馬鹿にしているみたいで、ほら殴って来いよ、みたいなジェスチャーが見て取れる。
…………あ、アレン君が期待に応えて一発殴った。
見事に吹っ飛ぶ対戦相手。
しばらく見ていたけど起き上がることはなかった。
速やかに真っ黒部隊に運ばれていった。
たぶん、今のやり取りに気づいた他の人がアレン君へと近づいて行く。
アレン君は三人に狙われているようだ。
まあ、アレン君は弱者じゃないから三人に取り囲まれてもルール違反にはならないね。
「ふむ、あの三人はアレンに何か不正をしたのでは? と詰め寄っているみたいだな。」
お祖父様がそんなことを言った。
と言いますか、お祖父様ここからあちらのやり取りそんなにはっきり分かるのですか?
サスガです。
「アレンはそんなことしていない。いいから三人同時に来いと言っているな。」
お祖父様がそう言うと同時に、アレン君に詰め寄っていた三人が同時にアレン君へ殴りかかった。
アレン君はそれを素早く後方に退き避けると、一気に間合いを詰めて一人、二人、三人と一撃で沈めていった。
まあ、アレン君の実力も認められない人たちならそうなるよね。
これまでのやり取りで残りは十人。
そろそろ決着がつきそうだね。
さっきのおバカさん三人と同じように、アレン君にまた三人が挑もうとしている。
なんかまた三人がアレン君に言葉を発していたようだが……ここからでもわかる、アレン君は言葉の途中で突っ込んでいった。
そして彼らは見事に吹っ飛び、回収。
『試合終了!! 』
どうやら四人が決まったようだ。
もちろんアレン君も勝ち抜いた。
アレン君はすぐにこちらの方にやって来た。
「アレン、おめでとう! やっぱり強いわね。」
「アレン良くやったわ! さすが私の弟ね。」
私とアンジュさんはアレン君を笑顔で迎えた。
「ありがとうございます。でも、まだまだですね。俺が戦った相手は小物ばかりでしたから。残った四人の中で明らかに他より強い人がいましたよ。」
アレン君が強いって言うなんてよっぽどだね。
アレン君のことばかり見ていたから気にしていなかったよ。
するとお祖母様が
「きっとそれはヴィージア家の者ね。あの真っ赤な髪の子でしょう? 」
と言った。
さっきまでアレン君がいた場所を確認すると、確かに真っ赤な髪の人がいる。
かなり大柄で、真っ赤な髪がライオンのようだ。
「ええ、そうです。あの髪の赤い者です。かなり大きいのですが、戦いの時は最低限の動きで相手を倒していました。参加者もあの人を避けていたように感じます。」
なるほど、もしかして大会の大本命ですか?
「ヴィージア家は代々代表者を切らさず輩出しているから、今回の大会も本命ね。今回の大会はいろいろあったみたいで、参加部門は分けられずこれ一回きりのようね。リリーナたちが出るからって、私たち世代の人たちと王が決めちゃったみたいだけど。ふふ、リリーナたちが期待されているってことよ。だから、思う存分戦ってちょうだい。」
今、サラッと変なこと言いましたよね? お祖母様。
え、私たちが出るから部門分けがないの?
うん? 代表選と一般を分けたら戦えないからって……どれだけ戦闘狂なんですか。
「どうやら子供、孫世代にも自分たちと同じ衝撃を味わってもらいたいようよ? 」
いや、アトラクションではないんですよ、私。