大会
さて、いろいろありましたがついにやって来ました、この日が!
今、この北の国は興奮のるつぼと化している。
大会の主催者発表だと過去最高の出場人数だとか……。
何故、今回に限ってこんなに多いの?
その分、あの衣装の時間も増えるということになる…………そのことを知った時の私とアンジュさんは非常に顔色が悪かったそうな。
「それにしても凄い人ですね。」
アレン君が遠くを見ながらそう言った。
確かに恐ろしいほどの人だ。
私たちは参加者が集まる場所へと向かっているのだが、なかなか前に進まない。
どうしようかと思っていたら前を歩いていたお祖父様が、突然全力で殺気を放った。
するとスーッと人がいなくなり前方に道が見えた。
お祖父様の殺気に今まで人で埋まっていた道が一気に見渡せるようになったのだ。
ちなみに私たちから少し離れたところから何が起きたのかよくわかっていない人たちが、こちらを見ている。
さすが参加者は殺気に敏感だ。
私たちはこれ幸いと集合場所へと向かうことにした。
『さてお集まりの皆さん! 長らくお待たせいたしました、北の国武道大会をここに開催致します!』
わーーーー!!!!
凄い熱気だ。
国中の人が集まっているんじゃないかと錯覚してしまうほどの勢いだ。
『今回の大会は過去最高の参加者です! なのでトーナメント戦は上位十六人まで絞り込めたら行います。まずは受付時に配った紐をご確認下さい。』
私たちは紐の色を確認してみた。
「私は赤です。」とリュート様。
「俺は青ですね。」とアレン君。
「私は黄色みたいですね。」とアンジュさん。
そして私は……緑だ。
ちなみにお祖父様とお祖母様、リュシアン大叔父様とサスケさんは不参加だ。
お祖父様とお祖母様が不参加なことに対して王様が抗議してきたが、お祖父様が一蹴していた。
二人ともこの間の王家主催のパーティーで、大抵の知り合いとはやり合ったから今回はわざわざ参加しなくても良いと判断したらしい。
サスケさんはもともと一対一の戦いは苦手のようで、今回は応援に回るとのこと。
本当に応援してくれるくれるかは不明だけどね。
『では、皆さん。紐の色は確認出来ましたね? これから紐の色に分かれて予選を行います。まずは青色の紐をお持ちの皆さんあちらに集合して下さい! 』
青色ということは、アレン君だね。
「さっそく出番みたいですね。じゃあ、行ってきます。」
「うん、アレン頑張って来るのよ! 絶対勝ちなさいよ! 」
「アレンならきっと大丈夫よ。行ってらっしゃい。」
アンジュさんと私で激励し、アレン君は颯爽と集合場所へと向かって行った。
さて、予選はどうやって行われるのかしら?
お祖母様だったら知っているのかな。
「お祖母様、予選ではどのように戦うのですか? 」
「そうね〜、いつもなら最初からトーナメントなんだけど……。例年だと多くても百五十人くらいの参加者だからそれでも良かったんだけどね。今回は四百人ぐらい参加しているらしいわよ。凄いわね〜。」
どんだけ参加しちゃっているんだ。
その分、この衣装でいる時間が多くなるではないですか。
『はい、では青色の皆さんには集合いただきましたのでルールの説明をしたいと思います! ルールは単純明快、この場にいる皆さん全員で戦ってもらいます。紐の色は四色ありますので、各色四名が残るまで戦ってもらいます。武器の使用に関しては予選では不可とさせていただきますのでご了承下さい。トーナメントではご自身の得意武器使用していただいて結構ですので。それから、こちらの方で明らかな反則行為を発見した場合は、即時敗退とさせていただきます。たぶん、やったことを死ぬほど後悔するような目にあいますので、やらないことをお勧め致します。』
死ぬほど後悔する目って、どんなことされるんだろう?
確か受付時に反則行為に関することが書かれた紙を渡されたはず。
一応確認してみましょうか。
・ 相手を故意に再起不能にする。
・ 明らかな弱者を数人で襲う。
・ 相手の衣装を故意に破る。
うん、三番目は私的に完全アウトだ。
むしろ私が死ぬほど後悔させてやる。
でも、司会の人があんなに言っていたのに反則行為をする人なんているのかな?
『…………では、長々と説明のお時間をいただいてすみません。会場の熱気も高まってきましたので、さっそく予選一回目、青色の予選を開始したいと思います! 皆さん準備はよろしいでしょうか? では、始め! 』
おっと、あっという間にアレン君の予選が始まってしまった。
ここからではアレン君の姿が確認出来ない。
困ったと思っていると、またしてもお祖父様のあのスキルが発動した。
……うん、人が面白いほどいなくなった。
お祖父様、大会に出なくても最強なのはきっとあなたです。