当然の流れ⑤
結局、サスケさんがアレク様達を呼びに行っている間ずっと、残党の皆さんは口を開けっぱなしで固まったままだった。
時々虫とか鳥が止まっていたけど、完全に木と間違われている。
そしてその原因を作ったアレン君は、木をどつき倒した後は静かに待っていた。
「おい、この数分の間、何が、起きた?」
サスケさんが来て早々そんなことを言う。
「えーっとですね、残党の方々がアレンに暴言を吐いて、そうしたらアレンが近くの木に鋭い一撃をくらわせてですね、その結果が……このような感じですかね?」
「なんで、疑問系?」
サスケさんがますます呆れ顔だ。
そんなこと言ったって本当のことしか言ってないもん。
「おやおや、これは見事な折っぷりだ。アレン、また腕を上げたな。」
サスケさんと一緒にやって来たアレク様は折れている木を見て、満足気だ。
アレク様って意外とアレン君に甘いよね。
ちなみにアレク様と一緒に来た騎士団のメンバーは、倒れている木を見て…………ふむ、残党連中と近い反応だね。
何度も木とアレン君をかわるがわる見ている。
「兄上に褒めていただけて嬉しいです!」
アレン君がニコニコしながらアレク様と接している。
ああいう姿を見ると年相応に見えるね。
それにしても、あの残党の人たちは全く動かない。
よっぽどショックだったんだね。
アレン君とアレク様の仲良し兄弟の触れ合いが終わり、アレク様が騎士団のメンバーに指示を出して残党の皆さんを運び出そうとしている。
あんな状態でちゃんと話しを聞き出せるかしら?
「では、この者達は責任を持って騎士団で調べます。変なことに巻き込んでしまって本当に申し訳ありませんでした。」
アレク様が心底申し訳なさそうな顔で謝罪をされてきた。
「アレク様のせいではありませんわ。まさかこんなところに残党がいるなんて思いませんもの。こちらこそわざわざ来ていただいてありがとうございました。」
アレク様が悪いというよりも私の運の悪さが響いているのかしら?
本当、この巻き込まれ体質なんとかならないかしらね。
私とアレン君はアレク様達に後の処理を任せ、ようやく屋敷へと帰ることにした。
もちろんサスケさんもついてきている。
サスケさん的には
「お前達、2人、巻き込まれ過ぎ。だから、俺も、行く。」
とのこと。
まあ、それに関しては文句は言えない。
とりあえず気を取り直して早く帰りましょう。
忘れかけていたけど、サナと兄がどうなったか心配だ。
「リリーナお姉様〜〜!」
屋敷の中に入った途端アンジュさんが飛びついてきた。
なかなかの攻撃力、私じゃなかったら確実に吹き飛んでいたわ。
「お、落ち着いて下さい。一体どうしたのかしら?」
私が質問すると、興奮状態のアンジュさんが鼻息荒く話し始めた。
「もう〜〜、聞いてくださいよ!凄かったんですよ!あのリカルド様が、ついにやったんです!」
兄が、ついにやった?
全く内容がわからないんだけど、確実にサナ絡みだよね。
「あ、あのそれではよく分からないので、もう少し詳しく教えていただけるかしら?」
「そうだぞ、アンジュ。お前興奮しすぎだ。それからいつまでリリーナ様に抱きついているんだよ、もうそろそろ離れろよ。」
アレン君もアンジュさんに落ち着くように言っている。
ちなみに私は現在、アンジュさんにガッチリ抱きつかれている状態だ。
いや、良いんだけど……ちょっとだけ力を弱めていただけると助かる。
「ふーんだ、アレンったら羨ましいのね。良いでしょう?リリーナお姉様に抱きつけて。ってそうだった、リカルド様とサナさんのことでした!えーっとどこからお話しすれば良いのかな?」
「では、お兄様が屋敷に戻って来たところからお願いいたしますわ。」
「あ、はい、リカルド様が帰ってきたところからですね?じゃあ、まず私とサナさんはリリーナお姉様のお部屋のお掃除をしていたんです。そうしたら屋敷内に声が響いたんです。『サナはどこだーー!!』って。なんか毎回このパターンのような気がしますけど、今回はこの後が違ったんです。リカルド様がすぐにリリーナお姉様のお部屋に現れて、そしてその場でサナさんに土下座したんです!」
え〜〜、土下座?
なんでいきなりそれをするかな〜〜。
「サナは?」
「もちろん止めていました。でも、リカルド様はそのままこの間のことを謝罪されて、そしてサナさんに素直にヤキモチを焼いていたことを告げたんです。」
兄が自分の気持ちと素直に向き合っている。
私のボディへの一撃は無駄ではなかったのね、良かった。
「サナはそれに対して何か言ったの?」
「それが、ふふ、サナさんリカルド様の素直な気持ちに照れてしまってお顔が真っ赤になっていました。とっても可愛かったですよ〜。」
うわ、何そのレアなサナ。
きっとスゴく可愛かったんだろうな、私も見たかった。