当然の流れ④
残党を引きずって何とか出口らしきところまでたどり着いた。
まあ、見た目は完全な行き止まりみたいになっているけど、他に分かれ道もなかったしここに何か仕掛けがあるんだろうね。
先頭にいたアレン君が壁をいじっている。
カタカタ
軽い音がしたと思ったら、光が見えた。
どういう仕掛けになっているかはよくわからないけど、思ったよりも軽い作りになっているみたい。
以前、城内のレオン様の部屋から行った隠し通路の扉みたいだ。
「リリーナ様、どうやら外に出られそうです。ちょっと段差があるのでお足元お気をつけ下さい。」
足元を確認すると、確かにちょっとした段差があった。
さすがアレン君、気配りができる男だ。
ちなみにその優しさは、残党に発揮されることはもちろんなく、引きずられていた残党は段差をガツンガツンと音を立てて進んでいた。
気を失っているとはいえ、あれは後でかなり痛いだろうね。
ようやく外に出られた。
周りを見れば、城からそれほど離れていない場所のようだ。
それにしても、隠し通路は扉を閉めてしまえばまったく気づかれない作りになっている。
これをどうやってこの人たちは発見することが出来たんだろう?
どう見てもこの人たちには見つけることは不可能だと思うんだけど……。
まあ、その辺のことはこの後騎士団の方たちに調べていただきましょう。
「リリーナ様、この後どうしますか?これを引きずっていると目立ちますよね?」
「そうね、でもこの人たちを野放しには出来ないもの。……そうだわ、私がこの人たちを見ているからアレン、お城に行ってアレク様に知らせてきてくれないかしら?」
私が城に行ったらせっかく隠し通路を使った意味がなくなっちゃうからね。
しかしすぐに承諾してくれると思っていたアレン君が、渋っている。
「た、確かにそれが1番早いとは思うのですが……しかしいくら気絶しているとはいえ、このような者たちとリリーナ様を残していくなんて……」
アレン君は優しいね。
こんな普通の男性よりも強い私を、普通の女性のように扱ってくれるんだもん。
でも、今はそんなこと言っていられない。
「アレン、今はそのことを気にしている場合ではないですよ。さあ、私ならこのような人たちに負けたりしませんから行ってきてください。」
それでもアレン君渋ってなかなか行こうとしないから、しょうがなく無理やり押し出そうとしたその時、声をかけられた。
「なんで、こんな、ところ、いる?」
この声、この話し方は……
「サスケさん!」
「サスケ?」
声のする方を見ればやはりサスケさんだった。
私たちとぐるぐる巻きの残党連中を交互に見比べて、そしてため息をついている。
いやいや、その反応おかしくない?
「なんで………いや、イイや。面倒そう。」
心底面倒くさそうな顔でそんなこと言う。
だけど私にしてみればラッキーだ。
「ねえ、サスケさんお願いがあるのだけど、お城に行って騎士団の訓練場にいるアレク様を呼んできてくれないかしら?この人たちを運ぶのに人手もいるはずだから、数人の団員も連れてきて欲しいと伝えてほしいの、お願い!」
「……マジか。なんで、こんなに、巻き込まれ、体質?」
「それは私が1番知りたいわ。」
私の答えに、「それもそうか」とつぶやいてサスケさんは了承してくれた。
そして、あっという間に消えてしまった。
「リリーナ様、サスケはなんでこんなところにいたんでしょうね?」
「確かにそうね。もしかしたらスミレ様に頼まれて私のことを探していたのかしら?」
理由はよくわからないけど、ちょうど現れてくれたことは有難かった。
後はアレク様とその仲間たちが来るのを待つだけ。
そのはずだったんだけど、運悪く残党連中が気がついたようだ。
「いってええ〜〜。」
「う〜〜、苦しい〜〜。」
「ああ?なんで俺たち縄で縛られているんだ?」
気がついた残党の前にアレン君が立った。
するとアレン君に気がついた者たちがアレン君に罵声を浴びせる。
「なんだ、てめぇはよ〜〜。」
「もしかしてお前が俺たちを縛ったのか?……いや、それはないな。俺たちがこんな可愛い顔した坊主に負けるわけねえし。」
「まあ、いいや。おい、お前、俺たちの縄を解け!逆らうとひどい目にあうぞ!」
うわ〜、うわ〜、アレン君の表情がどんどん冷たくなっていっている。
あそこだけ氷点下だよ。
完全にブリザードだよ。
それに気づかないあの人たちはある意味大物なんだろうか?
「おい!聞いてんのか?早くしろって。」
なおも言い募る男の言葉にアレン君が動いた。
ぐるぐる巻きの男たちに近づいたと思ったら、その近くの大きな木の前で立ち止まったのだ。
「おい、こっちだ!なんだお前耳も目も悪いのか?ほら、早く……」
ドガッ!バキバキッ!!ザザーー
アレン君が木に渾身の一撃をくらわせた。
木はアレン君の打撃を受けて、その衝撃に耐え切れず倒れた。
男たちはその光景を、顎が外れそうなほどの大口を開けてただ見つめていた。