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当然の流れ➁

「……ここ、ですか?」


「はい、こちらです。」


私とアレン君がアレク様に連れてこられた場所は騎士団の訓練所の奥、隠されるように柵で囲まれている井戸だった。


「あの〜〜、これっていわゆる非常時の出入り口……ですよね?」


「そうですね。まさに今非常時ですから。」


アレク様がとっても良い笑顔でそう答えられた。

いや、まあ、私的には非常時だけど、果たしてこんなたいそうなモノ使って良いのかな?


「たぶんなのですが、この井戸って王族の方の退避用とかだったりいたしません?」


私の質問にアレク様は首を横に振って否定の意を示した。


「王族の方の退避用の出入り口はまた別にありますよ。ここは騎士団の団員向けのものですから。ただ、ここ何年も使用されていない為、かなり汚れてはいると思いますが……。」


なるほど、まあ、非常時にこんなところまで王族は来ないか。

それにしてもなかなか年季が入っている。

無事外に出られるのであればそれで良いけどさ。


「そうでしたか。では、有り難く使わせていただきますね。あっ、でも、後から私たちがここから出たことがわかったらアレク様がお咎めを受けるのではないですか?」


城の中にいたはずの私たちが忽然と消えたらやっぱり問題……だよね?

私の問題にアレク様を巻き込むのは間違っているし。


「ああ、それなら大丈夫ですよ。なんて言ったって、これまでどれだけレオン王子に迷惑かけられてきたことか……。こんなことの1回や2回、いや100回やったってお釣りがきますよ。むしろ今度のことだって問題でしょうに。なんであんな所でお茶会が急に開かれているんですか?違和感しかありませんよ。もしかしたらもうすぐ、あのお茶会も王妃様あたりにバレて即刻撤去かもしれませんね。あ、でもそうすると無理をしてこの井戸を使う意味はないかもしれませんね。」


ア、アレク様からなんか黒いオーラが上がっているような……。

アレク様もイロイロ被害を被っているのかしら?

ここで深く聞くのはやめておいた方が良いかもしれない。


「いえ、使わせていただきますわ。ここで待っていても見つかる可能性がゼロではありませんからね。それでしたら行動あるのみですわ。」


「そうですか。わかりました、では是非ご使用下さい。アレン、くれぐれもリリーナ様に怪我などないように気をつけて行けよ。」


「はい!兄上。」



アレク様が柵を開けてくれて、私とアレン君は井戸の近くへと来た。

アレク様が縄ばしごを用意してくれて、それを井戸に取り付ける。


「底に着くと横に穴が開いています。そこを真っ直ぐ進んで行けば城の外に出れますよ。あ、それからこれも持っていって下さい。灯りです。」


「何から何まで申し訳ありません。今度改めてお礼をさせていただきますわ。」


「いえ、いいんですよ。これぐらいどうってことないですから。」


さあ、行きますか。

と思った時、ちょっとした問題が起きた。


「ダメですよ、リリーナ様。俺が先に降りますから。」


「えーっと、気持ちは嬉しいのですけど、ほら、……ね?」


一応、私も女の子なわけですよ。

今の私の服装は、こんなことが起きるなんて想像していなかった為にヒラヒラのスカートなわけで……。

アレン君が危険がないか先に下に行きたいのはわかるんだけど、それだと中が見られちゃうかも、なんて。

だけど、どうやらアレン君にそのことが伝わっていない様子。

どうしようかな〜と思案していると、そのことに気づいた様子のアレク様がアレン君に耳打ちしている。

耳打ちされたアレン君は…………あ、赤くなった。


「あ、いえ、リリーナ様!俺は別に見るつもりなんて!あーー、どうしたらいいんだ?……わかりました、俺目隠しして降りますから。それなら大丈夫ですよ!」


「アレン、それだともし危険があってもわからないじゃないですか?それによく考えたらアレンが覗くわけないですものね。大丈夫、このまま順に降りましょう。」


アレン君は『俺、絶対上見ませんから!』と宣言してくれている。

うん、なんかゴメン。

今回に限って妙に気にしちゃって。


「では、今度こそ失礼いたします。ありがとうございました。」


「いえ、こちらこそありがとうございました。また、是非見学に来てください。リリーナ様がいらっしゃるだけでみんなの士気が上がりますから。今度は……邪魔が入らぬようにいたします。」



アレク様に挨拶も済ませて私とアレン君は井戸の中に突入した。

アレン君がまず降りて、何もないことを確認してから私に合図を送ってくれた。

確認後、私も縄ばしごを降りていく。


下に着くとアレン君が、そこまでしなくてもと思うぐらい両手で目を押さえていた。


「アレン、もう大丈夫ですよ。無事私も着きましたから。」


私の言葉にアレン君が覆っていた両手を外し、こちらを見た。

あ、なんか顔に跡が付いている。

どれだけ力入れていたの?



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