⑫
ふう、料理長さすがだね。
いつも以上にどデカイハンバーグは食べ応えがあり過ぎだ。
でも、食べきったけどね。
デザートまできっちり完食。
なんかこのまま領地にいたら毎日食べ過ぎで…。
うん、やっぱり魔物狩りに出かけよう…。
部屋に戻りそんな事を考えていたらドアをノックする音がした。
「リリーナ様、サナです。今よろしいですか?」
「ええ、大丈夫よ。入ってちょうだい。」
失礼します。とサナが入って来た。
「サナご苦労様。覆面男達の回収無事出来たようね。」
「はい…。しかし結局誰が依頼したのかは分かりませんでした。申し訳ございません。」
「サナが悪いわけじゃないわ、謝らないで。でも一体誰が私を狙ったのかしら?正直婚約破棄されて領地に戻る人を狙ってもしょうがないと思うのよね。それに婚約破棄の事ってまだ公にはなっていないはずじゃないかしら。それを知っていて、なおかつあの場所で狙えるって限られてくるわよね。」
「そうですね。たぶん今リーザ様や王都に居られるリーフ様がお調べになっていると思います。近日中に何か動きがあるのでは?」
「そうね。まあ、私に出来ることは大人しく魔物狩りすることぐらいかしら?」
「…リリーナ様、たぶん他にも出来ることはありますよ…。魔物狩りから少し離れてもいいのでは?」
「サナ、私の楽しみを奪っちゃダメよ。それに領地の見回りも兼ねて行うからみんなの役にもたつわ。」
「…程々でお願いします。」
「善処するわ。」
何やら考えることも増え、身体的にはまだまだ元気だが精神的に疲れたのでこの日は早く休むことにした。
ーー次の日
ぐっすり寝たので気分爽快。
さあ、魔物狩りに出かけよう!
と意気込んでいたが、母から待ったがかかった。
な、なんで〜〜。
「リリーナ、今朝手紙が届いてお祖父様とお祖母様が帰って来られるそうよ。2、3日中には着くみたいだわ。だ・か・ら、魔物狩りには出かけないでいろいろ手伝ってちょうだい。」
えっ、お祖父様とお祖母様帰ってくるの?
お祖父様とお祖母様は母の両親なのだが、領地経営はとっとと娘に引き継いで隠居という名の各地放浪の旅に出かけているのである。
確か今はこの国の友好国でもある西の国に行ってたような…。
結構頻繁に移動しているらしく、いる場所を特定するのが困難な2人なのだ。
2人ともまだまだ力は衰えず護衛も付けず気ままに旅をしている。
その2人が帰ってくるなんてどうかしたのかな?
私が不思議そうな顔をしていたせいか母が手紙の内容を教えてくれた。
「リリーナは何で2人が急に帰って来るのか不思議そうにしているけれど、あの2人の情報網は凄いのよ。何故かリリーナの婚約破棄の件をご存知だわ。手紙でもその事に触れていたもの。一体どうやって情報を仕入れたのかしら?どうせ隠居生活するならその情報網は私に譲ってくれればいいのに。」
あれ?
何故かお祖父様達の情報網の話がメインになってる。
さすが母、目の付け所が違う。
娘の婚約破棄の話ではなく情報網…まあ、母らしいけどね。
「それはそうとリリーナ、久しぶりに2人が帰って来るから用意したい物があるのよ。屋敷のみんなは今それぞれの持ち場の掃除やら模様替えやらで忙しいからあなた取りに行ってきてくれないかしら?どうせ家の中で大人しくいているのも退屈でしょう?」
お使いですか?
まあ、家の中で退屈しているよりかはいいね。
「いいですよ。ところでどこに何を取りに行けばよろしいですか?」
「ほら、近くの森にしか生えていない薬草があったでしょう?あれを取ってきてほしいのよ。あの薬草で作ったお茶を2人ともお気に入りだったから。それにきっとあの2人のことだからすぐにまた旅に出ると思うの。その時に少し薬草も持たせたいから多めに取ってきてちょうだい。」
そのくらいお安い御用だ。
散歩がてらに丁度いい。
「分かりました。では早速行って来ますね。」
「ええ、お願いね。」
魔物狩りではないけど気分転換にはなるね。
それにお祖父様とお祖母様に喜んでもらえるならやり甲斐がある。
私は馬に乗って森の方へ向かった。
本当は走っても来れるんだけど荷物がかさばりそうだしね。
10分で森の入り口に到着。
森の中は木の根が邪魔なので馬は入り口に待たせておく。
この子利口なので繋いでおかなくても口笛一つで駆けつけてくれる。
お前もこの辺でのんびりしてなさい、とばかりに放してやれば嬉しそうにヒヒーンと鳴いてその辺を駆けている。
その姿を確認してから私は森の中へと入って行った。
森の中は何も変わらず昔のままだ。
そういえばレオン王子に初めて会ったのもこの森だったなぁとか、クリス様の弓を引く姿素敵だったなぁとか考えて歩いていたらあっという間に目的の場所に着いた。
さてさて薬草は…あ、見っけ。
うんうん最近あまり取りに来てなかったのか結構いっぱい生えてる。
エッサホイサと摘んでいく。
取りすぎると次が生えないから程々にっと。
ん?
何かの気配がする。
殺気ではないけど…人だよね。
私が気配のした方に視線を向けるとガサガサっと音が聞こえ気配の主が現れた。