サナの気持ち
今、私はいつになく緊張している。
いや、これって緊張なのかな?
こう、言葉では言い表せないモヤモヤ感がまとわりついている。
「リリーナお姉様……どうなるんでしょう?」
アンジュさんが私に質問してくる。
それは私が1番聞きたいよ。
「全くわかりませんわ。」
アンジュさんの質問に答えようがない。
私たちは、私の自室で今か今かと待っている。
そう、サナの帰りを……。
ーーことの発端は、兄がレオン王子の警備体制強化の会議から帰ってきて、サナのところへ突撃してきたところから始まる。
「サナァーーーー!!」
帰ってきてすぐにサナを探し雄叫びをあげるバカ……じゃなくて兄。
そんな兄にサナが話しかけた。
「リカルド様、お帰りなさいませ。そんなに叫ばなくてもお話しは伺いますよ。」
兄にとっては久しぶりのサナとの語らい。
兄は何やらモジモジしながらサナを見ている。
さっきまでの威勢の良さは何処へやら。
「あ、ああ。サナ……話しがあるんだ。実は……」
「リカルド様。」
兄の言葉を遮るようにサナが兄を呼んだ。
「リカルド様。お話しならここではなく別の場所でいたしましょう。」
兄にそう言い、サナは近くにいた私にこう言った。
「リリーナ様申し訳ございませんが、少々お側を離れます。…………そろそろ決着をつけなければならないようですので。」
そう言うとサナは兄を引き連れて何処かへ行ってしまった。
……というのが今までの流れである。
かれこれ2時間……ちょっと長くないかな?
いや、まあ、今までの拗れ具合からすればこのぐらい話し合うのに時間がかかってもおかしくはないと思うよ、普通ならね。
だけどサナと兄だよ。
話し合いなんて、出来ても10分くらいで決着がつくと思ったんだよね。
良いにしろ、悪いにしろ。
なのにもう2時間も経つ。
私とアンジュさんはお互いの顔を見ながら不安になっていた。
その時部屋をノックする音が響いた。
あ!サナだ!
返事をする前にアンジュさんが部屋のドアを開けた。
すると中に入って来たのは…………
「なんだ、アレンか。」
アンジュさんが明らかに残念そうな顔でアレン君を見た。
対するアレン君は不満顔だ。
「アンジュ、人の顔見て勝手にガッカリするのやめてくれる。あっ、それより面白いもの見かけたから報告に来たんですよ、リリーナ様。」
アレン君は確かトレーニングと称して街中を走り回りに行ってたはず。
何か面白いものでも見つけたのかな?
「トレーニング中に何か面白いものでも見つけたんですか?」
「あ、いえ。トレーニング中ではなくて屋敷に帰って来てからです。中庭でリカルド様とサナさんが戦闘訓練してましたよ。珍しいですよね。」
アレン君の言葉に私とアンジュさんは顔を見合わせた。
え?何で中庭で戦闘訓練?
話し合い……だったよね?
「アレン!2人はどんな様子だったの?」
私が聞きたかったことをアンジュさんが聞いてくれている。
そうだよ、どんな感じなの?
「へ?どんなって…………普通の戦闘訓練なんじゃ……ないか?リカルド様は剣を握っていたし、サナさんも愛用のムチを持っていたぞ。」
え?真剣勝負?
も、もしかして兄に腹を立てたサナが勝負を仕掛けたのかしら。
た、確か恋愛問題じゃなかったっけ?2人の話し合いって。
2人の問題だから下手に見に行くのも憚られる。
どうしたものか……と考えていたら、部屋にいつの間にか気配が増えている。
サスケさんだ。
「あら、いつの間に。サスケさんも出かけていたのですね。」
「ああ、ちょっとな。ところで、何で、中庭で、真剣勝負、してるんだ?」
ああ、サスケさんも見かけたのね。
ちょうど良いわ、何か気づいたこととかないかな?
と思っていたら、またアンジュさんが先に質問してくれた。
「ねえ、サスケ。サナさんどんな様子だった?」
「どんなって、あ〜、目が、本気だった。」
え、ヤル気?
兄よ、一体サナに何を言ったの?
私が心の中で軽く兄に文句を言おうとしているところに、サスケさんがもっと問題を投げ込んできた。
「そういえば、この前の、ジイさんの、知り合いの、孫。近く、来てるぞ。」
うん?お祖父様の知り合いの孫って……もしかしなくてもダミアン様?
ちょ、ちょっと、このタイミングってどうなの。
修羅場っていうやつかしら。
「サスケさん、ダミアン様はどの辺りにいらっしゃったの?」
「うーん、あと、5分、だな。」
「え?それはもしかして、あと5分で屋敷に着くということかしら?」
私の問いかけに首を縦にふるサスケさん。
マズイ、非常にマズイ。
このタイミングでダミアン様まで乱入したらますますわけがわからなくなる。
邪魔はしたくないけど、ひとまず兄とサナのところに行ってみよう。
私たちは揃って中庭へと向かった。
ところで何で2人は戦っているんだろう?