行方
「ハンゾウさんはレオン様のことを探しているんですよね?」
私の願いもむなしくサスケさんは首を横に振った。
「いや、ハンゾウは、姫さんに、ついてる。」
じゃあ、誰がレオン様を探しているの?
……って、もしかしなくても兄?
「ハンゾウさんからの手紙にはレオン様がいなくなったことだけ書かれていたのかしら?」
「ああ、それと、姫さんのこと。姫さん、自分も、出るって、ハンゾウに、言っているらしい。ハンゾウ、今、姫さんの、お守り。」
ああ、なるほど。
ハンゾウさんはスミレ様を抑えるのに忙しいのね。
私がサスケさんから情報を引き出していると部屋のドアが乱暴に開けられた。
バーーーーーン!!
見れば予想通り兄だった。
ドアがノックなしで開けられる時は100パーセント兄の仕業だ。
「リ、リリーナァーーーーー!!」
「…………お兄様、そんなに大声をあげなくても聞こえます。それからドアは優しく扱って下さい。あと、何回言っても聞いていただけませんが、ドアは開ける前にノックして下さいませんか?もうそろそろ覚えてほしいのですが。」
兄は私の言葉をちゃんと聞いているんだか怪しい。
「い、いや、それどころじゃないんだ。レ、レオン王子が……」
「行方不明……なんですよね?」
私の言葉に兄が、ぽか〜んとしている。
「え?な、何でそのこと知っているんだ?一応、極秘情報なんだが。」
私は無言でサスケさんを見た。
視線を受けたサスケさんは何故か得意げだ。
私達を見た兄は「はぁ〜〜」とため息をついている。
「そうか、スミレ姫のシノビから話しが伝わったんだな。まあ、聞いている通りレオン王子が逃げやが…………こほん、いや、えーっと、行方不明になっているんだ。今、騎士団で行方を探しているところなんだが……」
そこで一旦言葉を切ると兄は私の方を見た。
「大方の予想ではリリーナに会いに来るんじゃないかって話しになっているんだ。レオン王子はリリーナが王都にいることを知ってから、やたらと気にしていたからな。正攻法では会えないと思って、こんな感じになっていると思うんだが。」
え、迷惑なんですけど。
私が顔に出してしまったせいか、兄も困り顔だ。
「まあ、面倒なことになっている。とりあえず俺と何人かの騎士団のメンバーが屋敷の周りを見回っているから。忍び込んでくる技術はレオン王子にはないはずだが、もしも何かあったら知らせてくれ。」
それまで兄と私の会話を大人しく聞いていたアンジュさんとアレン君が同時に言った。
「「絶対捕まえます!!」」
2人とも妙にやる気だ。
何も言わないうちから外に出て行く準備をしている。
「リリーナ様にこれ以上迷惑をかけさせませんから。俺がトドメを……」
アレン君……トドメって。
駄目だよ一応、いや唯一の王の跡取りだよ。
物理はやめてあげて。
「リリーナお姉様!安心して下さい。私がイロイロお話しさせていただいた騎士団の方もいらっしゃるようなので協力していただきます。絶対リリーナお姉様のところには近づけさせません!」
アンジュさんが鼻息荒くそんなことを言っている。
あ、あの、アンジュさん。
まったく安心が出来ない気がするんですけど……イロイロお話ししたってどんなことをしたのかな?
お姉さんその辺りのことを詳しく知りたいような、知りたくないような……。
結局2人は私の返事も聞かずに元気に飛び出していった。
うん、レオン王子ご無事で。
「あ〜〜、相変わらずだなあの双子は。……それでだ、リリーナ。レオン王子は必ず現れると思う。ただ、正直リリーナに会って何がしたいのかよくわからないんだ。リリーナが王都にいるのがわかってから王や王妃に何回かリリーナに会わせてくれるよう頼んでいたらしいんだが、もちろん許可なんておりなかった。たぶん、いつまでリリーナが王都にいるかわからないから、今回こんな方法をとったんだと思う。はぁ〜〜。」
兄がひときわ大きなため息をついている。
兄なりにレオン様が心配なんだろうなぁ。
記憶を失ってから、兄なりにどうやってレオン様と付き合って良いのか悩んでいたみたいだし。
「レオン様は私に会いたいとしかおっしゃられなかったんですか?具体的にどうするとかは何も言わなかったんでしょうか?」
「うーーん。そうだな〜〜、リリーナに会って結婚したい!なんて類いのことは今回言っていなかったな。ただ、会って話しがしたいっていうことしか聞いていない。」
ふむふむ。
だとすると本当に何か話しがある可能性もゼロではないってことか。
今までが今までだからイマイチ信ぴょう性がないんだよね。
どれだけ残念なことが続いてきたんだか。
もしも、奇跡的に私のところまで来ることがあったらお話しぐらい聞いても良いのかもしれない。
だけど、どうやって来るつもりなのかな?