動き
レオン王子とスミレ様のことはひとまず置いておくとして。
今は目の前の問題を何とかしよう。
みんなと話している途中でセバスチャンが、お祖父様が呼んでいると私とアレン君を呼びに来た。
何で私達2人だけ?と思ったけど、お祖父様が待つ部屋へと私達は向かうことにした。
お祖父様の部屋のドアをセバスチャンが開けてくれたので、私達は部屋の中へと入った。
「失礼します。お祖父様……あっ」
私とアレン君はお祖父様の部屋に入り、目に入った人物を見て驚いた。
「おお、久しぶり……というほどでもないかの〜。元気だったかな?」
目の前でニコニコしているのは、私とアレン君の共通の先生……ダン先生だった。
「せ、先生!あの、どうしてこちらに?」
「うん?前に話したじゃろ、こいつはわしの古い友人だからな。」
そう言ってダン先生はお祖父様を指差した。
指差されたお祖父様は
「こら、人を指差すな。だいたい急に教え子に会いたくなったなんて嘘だろ?」
「嘘はついておらんよ。ただ、他の用事もあっただけじゃ。」
他の用事?
ダン先生は何か用事があって私達を呼んだってことか。
「ダン先生、ご用事とは何でしょう?私達に出来ることならおっしゃって下さい。」
私の言葉にアレン君も隣でウンウンと頷いている。
お世話になった先生の為なら、魔物でも何でも打ち倒しますよ。
「リリーナ嬢、アレン、すまんな。ちなみに用事というのは何かの討伐ということではないから、そんなにやる気を出さんでもいいぞ。用事というのはわしの孫のことなんじゃ。」
ダン先生のお孫さん?
何でお孫さんの話しが出てくるのかな。
「ダン先生のお孫さん……ですか?その方がどうかしたのですか?」
「ああ、孫をリリーナ嬢達の旅に同行させてほしいのじゃ。」
え?
ダン先生のお孫さんを旅に?
何で急に?
私とアレン君は疑問しか浮かばず、2人で首を傾げていた。
「ほれ、リリーナもアレンも疑問しか浮かんでいないぞ。何の説明もしないでそんなことを言えばこうなることぐらいわかるだろう?お前、耄碌したか?」
お祖父様がダン先生に暴言を吐いている。
怒るかと思ったがダン先生はニコニコしていた。
「くっくっく。相変わらずじゃな、お前は。悪いがわしはボケておらんよ。説明不足はすまなかったがのう。して、旅の件じゃが、孫がいろいろ確かめたいと言って聞かんのじゃ。あいつは1度言い出したら引かんからな〜。下手に無断でついて行くより許可を得た方が早いと思ったんじゃ。」
「あ、あのダン先生。そもそもダン先生のお孫さんに会ったこともないのに、一体何を確かめようとしているのでしょうか?」
私の質問に今度はダン先生が首を傾げている。
「うん?会ったことが……ない?いや、会っているはずじゃぞ、なあ?」
ダン先生はそう言ってお祖父様を見た。
対するお祖父様はため息をつきながらこう言った。
「はあ〜〜、やっぱりお前耄碌しているだろう?リリーナ達には正式に紹介していないんだから分かるわけないだろう?これだから年寄りは困る。リリーナ、アレン、お前達はこいつの孫に会っているぞ。おとといな。」
はて?おととい?
おとといと言えばエリスさんの誘拐騒ぎの日……その日に会った人で該当しそうな人と言えば。
「……ダミアンさま?」
私の言葉にお祖父様とダン先生はニッコリ頷いてくれた。
え?ダミアン様ってば、ダン先生のお孫さんなの?
世間って本当に狭い。
それで、何の話しだっけ?
確か旅に連れて行くとか何とか……。
「もしかして、サナ絡みですか?」
ダン先生が苦笑いしながら頷いている。
ええ〜〜、もし旅について来ることになったらサナが嫌がりそうなんだけど。
いや、その前にサナは兄との話し合いが控えている。
その結果次第では旅について来てくれるかもわからない。
私が1人考え込んでいたら、お祖父様がダン先生にブツブツ言い始めた。
「ほら、見ろ。リリーナだって困っているだろう?昔のよしみで話しぐらいはと思ったが、やはり無理じゃないか?だいたい昨日1回サナには振られているではないか。粘着質な男は嫌われるぞ。」
「わしだってわかっておる。しかし、放って置くと勝手に動くのじゃ。だから最初から縄をつけておけば少しは安心じゃろうと思って頼みに来たんじゃ。」
ダン先生の言い方だとハッキリ言って危険人物にしか聞こえないんだけど。
そんなに暴走しそうな人には見えなかったんだけどなぁ。
「ダン先生、ダミアン様はそれほど落ち着きのない人には見えなかったのですが?」
私の発言にダン先生は横に首を振りながら
「残念ながらリリーナ嬢……あやつは自分から誘拐犯に捕まりに行く変人じゃぞ。しかも理由は貴族の子供だけを狙う誘拐犯にただ興味があっただけでじゃ。あやつの場合下手に鍛えたのが悪かった。無駄に悪知恵も働くから始末が悪い。」
どうやら人は見かけによらないそうだ。
わざと捕まるってどういうことよ。