話題
「私のこと……ですか?」
「ああ、そうだ。レオン王子とスミレ姫のお茶会のネタはもっぱらお前のことだよ。俺も偶にだが王子の護衛も兼ねてお茶会の席の近くにいることがあるんだが、何故か必ず俺も巻き込まれる。レオン王子は記憶を失っているだろう?お前のことは本能的に好ましく思っているようなんだが、今までの記憶が無いもんだから俺に聞いてくるんだ。それに、ほら、この間レオン王子とスミレ姫がお前宛に手紙を書いた件で、レオン王子がちょっとした罰……と言って良いかわからないけど、それを受けたんだよ。」
罰?
一体何が行われたんだろう。
「お兄様、罰というのはどのようなことだったんですか?」
「まあ、簡単に言うと自分の知らない昔の自分がやらかしたことを延々と聞かされるっていうやつだ。」
それって、記憶を失う前に起きた出来事を聞かされてるってことかな。
それが罰なの?
「リリーナ、それが何?みたいな顔をしているけど結構アレは堪えるぞ。レオン王子とリリーナの拗らせ議事録っていう資料があるんだが、小さいものから大きなものまで網羅されていて、それを順に読まされるんだ。レオン王子はそれを読んでいかに自分がリリーナに対していろんなことをしてきたか教え込まれているんだよ。」
き、記憶が無い状況で過去の自分の行いを聞かされるのって、かなり辛いかも。
それを今までの大小の出来事を聞かされるってどんな罰なんだ。
「そ、それは凄く大変な罰ですわね。」
「まあな。で、それでいろいろやらかしてことを知った王子が俺に確認も兼ねてお茶会の時に話しを振ってくるんだ。答えないわけにもいかないから、答えられる範囲で話すだろう。するとスミレ姫もその話しに乗ってくるんだ。毎回そんなことをしていると話題はリリーナだらけになるってこと。」
原因は兄か……。
会話が弾むのは良いけど、それが私の話しというのはいかがなものなんでしょう。
しかしスミレ様は私のことをどんな風に思っているのかな。
ハンゾウさんやサスケさんの話しでは気に入っているなんて言ってたけど。
「お兄様、王都にいつまで滞在するかまだわかりませんが、もしもレオン王子に動きがありましたらすぐに教えて下さいね。私はこれ以上スミレ様の邪魔はしたくありませんので。」
兄は困った顔をしながら
「ああ、出来る範囲で教えてやるよ。騎士団の奴らにも注意しておく。」
兄との作戦会議はこれで幕を閉じた。
果たして兄が、暴走した時のレオン様を止められるかわからないけど、とりあえず情報として知って良かったよ。
次の日、朝から兄が私の部屋にやって来た。
どうやら仕事に出かける前に寄ったらしい。
まあ、目的はサナなんだろうけど。
しかも、サナがいると思ったからか珍しくノックなんてものをしたのだ。
「お兄様、おはようございます。」
「あ、ああ、おはよう。あれ?サナはいないのか?」
やっぱり目的はサナだったか。
残念ながらサナはいないのですよ。
「朝からいらっしゃったのに申し訳ありません。サナは少し前に来たのですが、やはり体調が優れないようなので今日1日休ませることにしました。たぶん、ここ数日の疲れが出たようですわ。……一応言っておきますが、変に騒がないで下さいね。ただの疲れのようですから静かに寝ていれば回復しますからね。」
「わかったよ。じゃあ、サナのこと頼むな。」
兄はそう言うと私の部屋から出て行った。
その背中はどことなく寂しそうだったけど。
さて、私は今日はどうしようかな。
変に出歩くと何か起こりそうで怖いからおとなしくしていようかな〜、なんて考えていると誰かがやって来たようだ。
「リリーナお姉様、アンジュです。アレンとサスケもおりますが今よろしいですか?」
「ええ、良いわよ。入ってちょうだい。」
入室の許可を出すとみんなが部屋の中に入ってきた。
「それで、みんな揃ってどうしたの?」
私の言葉にアンジュさんがサスケさんを突いている。
サスケさんは迷惑そうな顔をしながらも、話し始めた。
「端的に言うと、レオン王子が、会いたがっている、らしい。」
サスケさんの言葉を補足するようにアレン君が話し出した。
「サスケの話しだと、レオンとスミレ姫がリリーナ様に会いたいらしくて、いろいろ画策しているらしいんですよ。サスケはその話をハンゾウとかいう人に聞いたらしいんですけど。」
おいおい。
兄よ、レオン王子とスミレ様が既に何かやろうとしてますけど。
「サスケさん、ハンゾウさんはスミレ様の手助けをしているのですか?」
「いや。どっちかと、いうと、止め役。」
ふむ、だとするとどうやって会おうとしているんだろう?
さすがにいきなり訪ねて来たりはしないよね…………うん、さすがにないよ。
でも、あの2人が組むと何か起こりそうで怖いと思うのは私だけなんだろうか?