事件勃発③
私はみんなを探して中庭に来た。
先程と同じく3人はまだ揉めているようだ。
「だから、ムリだ。」
「そこを何とかってお願いしているんじゃない!私、絶対覚えるから。」
どうやらサスケさんとアンジュさんの話しは平行線のままのようだ。
アレン君は2人のやり取りを見ている。
私はそんな3人に声をかけた。
「みんな、いいかしら?」
私の声に3人がこちらを見た。
「あ、リリーナお姉様!リリーナお姉様からも言ってやって下さいませんか?サスケったら私には無理だってずっと言ってくるんです。」
「ムリだ。シノビの、技は、東の国、行かないと、ムリ。」
なるほどシノビの技って東の国だけで教えているのね。
無理っていうのはここではってことかな。
でも、今はそれどころではない。
そのシノビの技を使ってもらわなければいけないんだから。
「一先ずその話はまた後でしましょう。それよりも大変なことが起きたの…………」
私は簡単に今までの経緯を説明した。
私の話を聞いたみんなは難しい顔をしている。
「それで、サスケさんにお願いしたいの。お祖父様からもお話しがあると思うけど、お金の受け渡しの時に気づかれないように後をつけてほしいの。」
「わかった。ただ、後を追えば、いいんだろ?」
「ええ、よろしくお願いします。」
私がサスケさんと話していると、庭にお祖父様とサナが一緒にやって来た。
サナは少し目が赤い。
あれ?もしかしてちょっと泣いた?
私がサナに声をかけようとしたらお祖父様が私に話しかけてきた。
「リリーナ、みんなには説明したのか?」
「はい、サスケさんも了承して下さいました。」
「そうか。サスケよろしく頼む。」
「ああ、了解。」
「よし、それでは行くか。サスケはククール伯爵の後をついて行ってくれ。言われなくてもわかっているとは思うが、犯人に見つからんようにな。そしてリリーナ達は私と一緒に金の受け渡し場所近くで待機。サスケからの報告があり次第、アジトに突入する。ちなみにリカルドとアレク殿は別行動だ。彼らには騎士団として行動してもらうからな。」
お祖父様の説明に私達は頷いた。
サナのことも気になるけど、今はエリスさんの安全が第一だ。
私達はお金の受け渡し場所の近くへと身を隠すべく移動を開始した。
兄とアレク様は一足早く待機場所へと向かったようだ。
そしてサスケさんはククール伯爵の後をつけて受け渡し場所に出発した。
受け渡し場所は街の公園、しかも噴水広場と人目がある場所だという。
お祖父様がアレク様に聞いた話しでは、噂になっている誘拐騒ぎもお金の受け渡し場所は目立つ場所だったらしい。
しかも、どうやら受け取りに来るのは犯人に頼まれた人で、直接仲間ではないようなのだ。
とにかく、今後もこんなことが続くようではうちの領地にまた魔物が大量に発生することに繋がるかもしれない。
そんなことにならないようにここで断ち切っておかないとね。
公園に私達がいたのでは不自然なので、近くのカフェのようなところで待つことにした。
このお店、アンジュさんとアレン君が良く利用していたらしい。
こういうお店に来たことのなかった私は、何もかもが珍しく感じる。
何も頼まないのもおかしいと思い、みんな飲み物を注文した。
後はサスケさんの連絡待ちだ。
待っている時間は長く感じるが、時間にすれば30分ほどだった。
店にサスケさんが現れた。
「待たせた。見つけたぞ。行くか?」
「ああ、サスケご苦労だったな。どうだ?近いか?」
お祖父様の問いかけにサスケさんが答える。
「そうだな、近い。捕まっている、ヤツは、今のところ、無事。でも、やっぱり、すぐには、解放、しなかった。伯爵は、帰した。」
そっか、やっぱりお金と交換というわけではないのね。
でも、今まではお金を渡しさえすれば無事に解放されてきたんだよね。
「よし、ではサスケ案内してくれ。」
「了解。」
私達はすぐに犯人のアジトへと向かうことにした。
サスケさんが言うように、距離はそこまで離れていなかった。
場所は…………ここなの?
私達はサスケさんに確認するように視線を向けた。
それを感じたサスケさんは、無言で頷いている。
なら、やっぱり間違いないんだ。
案内された場所は明らかに貴族の邸宅の雰囲気が出ている。
っていうか、絶対貴族のお屋敷だよね?
え?犯人って貴族なの?
「サスケ、エリス嬢の姿も確認出来たのか?」
「まあな。天井、から、覗いた。」
本当にここが犯人のアジトなんだ。
でも、貴族の子供だけを狙うっていうのも難しいもんね。
それが貴族が主導しているのであれば話しは変わってくる。
「お祖父様……どういたしますか?」
「ふむ、そうだな。サスケ、エリス嬢がいたのはどの辺りだ?」
「二階の奥。ざっと、見たら、8人、見張り。」
二階の奥か……突入してもたどり着くまでそこにいるかな?
私達はまさかのアジトが貴族の屋敷という事態に作戦を練りあぐねていた。