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一時帰国⑤

「あ、あのサナ……たぶんあなた誤解しているわよ。」


「誤解……ですか?」


「ええ。お兄様がサナを探しているのはお見合いの報告の為ではないはずよ。だってサナが立ち去った後、ショックのあまり固まっていたもの。」


サナは私の言葉に考えるようにしてこう言った。


「私は……またリカルド様にお会いしても良いのでしょうか?」


「良いのよ!むしろ会わないほうが問題が起きるわ。」


「そうでしょうか……」


「そうよ!さあ、屋敷に帰りましょう。みんなも探しているわ。」


私とサナは一緒に屋敷へと歩き始めた。

私は励ますようにサナの手を握りながら歩く。

いつもとは逆で私の方がお姉ちゃんのようだ。

でも、こんな時だからこそ私はサナを守る姉役を演じよう。



私たちが屋敷に到着し、中に入ると同時に叫び声が響き渡った。



『サーーーーーーナーーーーーーーーー!!』


…………兄だね。

兄以外いないね。

どうやら屋敷内を大声を上げながら探し回っているようだ。

サナの方を見てみると、ビクッとしていた。

そうだよね、自分の名前を大声で叫ばれまくっていればそうなるよね。


私はサナに聞いてみた。


「ねえ、サナ。どうする?お兄様に会いに行く?」


サナは迷うような素振りを見せたが、ゆっくり首を横に振った。


「いえ……今日はやめておきます。」


「そう……。」


私たちがそんな会話をしていたら前方からセバスチャンがやって来た。


「リリーナ様おかえりなさいませ。無事サナは見つかったようですね。」


「ええ、この通り無事よ。ところでセバスチャンお願いがあるのだけど……お兄様を止めて来てくれないかしら?サナはちょっと疲れているみたいだからこのまま休ませようと思うの。だからお兄様にサナが無事に見つかったことだけ伝えて。たぶんサナに会いに来ようとすると思うから明日以降にしてって言ってちょうだい。私はこのままサナに付き添っているから。」


私の言葉にセバスチャンは力強く頷いた。


「かしこまりました。全力でお止めいたします。ところでアレン様とアンジュ様にもご助力いただいてもよろしいでしょうか?」


「良いわよ。もし見つけられればサスケさんにも手伝ってもらって。……ところでこの騒ぎの中何も言わないみたいだけど、お祖父様とお祖母様は如何したのかしら?」


「お二人でしたら用事があるとおっしゃって、屋敷に戻られてからすぐにお出かけになられましたよ。」


そっか、だからこんなに兄が大声出していても鉄拳が飛ばなかったのか。

セバスチャンは私の質問に答えた後すぐに兄を止めに向かってくれた。



私はサナを連れて自室に向かった。

サナを1人にしておくのもちょっと心配だったから。


「さあ、サナ。お茶でも飲んで落ち着きましょう?」


私の言葉にサナは「はい」と返事をしてお茶の準備にとりかかった。

気分的には私が淹れてあげたいけど、サナが嫌がるだろうし……任せた。


「あ、サナ。お茶はちゃんとあなたの分も用意してね。一緒にお菓子を食べましょう。」


私は遠慮するサナを席に座らせ、先ほどのお見合いに関して説明することにした。



「サナ、お兄様は自ら望んでお見合いをしたわけではないわよ。あなたもさっきのお兄様の遠吠え聞いたでしょう?サナを探してあんな状態になる人がお見合い相手と婚約なんて結ぶわけないじゃない。」


「そう……でしょうか。」


「そうよ!サナは俯いていたから見ていなかったと思うけど、お兄様、サナを見ている時目が輝いていたわよ。あんなに笑顔を全開で見せるなんて、きっとサナにだけよ。」


サナは私の言葉にちょっと笑みを見せてくれた。

うん、やっぱりサナには笑っていてほしい。


部屋の外からはたまにドタドタと走る音や、叫び声が聞こえるが私たちがいる部屋までは誰も来なかった。

セバスチャンが頑張ってくれていたようだ。



1時間ほど経った後、疲れた顔のアンジュさんとアレン君、サスケさんが揃って部屋へと来た。


「リ、リリーナお姉様……何とか捕獲完了致しました。」


ほ、捕獲?


「さすがリリーナ様の兄上ですね……俺の技を軽々と避けていました。」


え?技繰り出していたの?


「シノビの術、くぐり抜けるって、何者?」


兄は一体どんな覚醒をしたの?



「み、みんなお疲れ様。そこまで大変だったのならどうやってお兄様を抑えたの?」


私の質問に代表してアレン君が答えてくれた。


「最終的にちょうど帰って来られたリリーナ様のお祖父様とお祖母様の手によって沈められていました。この場合の沈めるは本当に沈んでいましたよ。」


ああ、鎮めるじゃなくて沈めちゃったのね。


「そ、そう。じゃあ、明日は今日以上にテンションアップでサナに会いに来るわね。サナ、明日はお兄様とお話ししてあげてね。」


サナは小さく「はい」と答えてくれた。






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