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一時帰国④

「あの、リリーナ様は他国へ行かれていたというお話しでしたが帰国されたんですね。」


エリスさんが私に話しかけてきた。


「はい。昨日領地に戻り、今日王都へ参りました。ところでエリス様は兄とお見合いをされたというお話を聞いたのですが……その、兄と接してどう思いましたか?あの、失礼な質問だとは重々承知しているのですが……気になってしまって。」


私の不躾な質問にエリスさんは笑って答えてくれた。


「いえ、失礼なんて……。そうですよね、お兄様が突然お見合いされたら戸惑いますよね。恥ずかしいお話しなのですが、このお見合い、私が是非にと頼んで成立したものなんです。リリーナ様を前にこんなことを言うのも照れてしまいますが、私、リカルド様に一目惚れしてしまったんです。」


一目惚れ……。

ま、まあ、兄は見目はそれなりにというか良い部類に入るよね。


「ひ、一目惚れですか。あの、何かのパーティーとかですか?」


私の言葉にエリスさんは首を横に振った。


「いえ。私、お忍びで街に行くのが好きなんですが、ある日酔っ払っている人に絡まれてしまって……でもその時颯爽と現れて助けてくれたのがリカルド様だったんです。もう、それはそれはカッコよくって、私あっという間に好きになってしまいました。そしてお父様にお願いして今回お見合いさせてくれるよう強く願ったんです。」


あ、この人兄の顔や地位が目当てではないんだ……。

たぶんこのお見合いとっても良いものなんだよね。

だけど……私はサナが大事だ。

エリスさんはとっても好ましいけど、サナがそれで悲しむのであれば申し訳ないけどこのお見合いを阻止しなければならない。

兄のあの感じであれば本当に申し訳ないけど、婚約は成立しないであろう。


「エリス様は兄には勿体無いお人ですわ。……申し訳ありません、ちょっと人を探しに行かなければならないので失礼いたします。」


私はこれ以上エリスさんといることが出来ず、一礼をしてその場を後にした。

離れた後で、エリスさんを1人にしてしまったことを不味かったかとも思ったが、とりあえずサナを探すことにした。

アンジュさんがアレン君やサスケさんを巻き込んでサナを探しているとは思うけど、見つかったかな。



私が1人屋敷内を歩いていると、前からサスケさんがやって来た。


「あ、サスケさん!アンジュさんから聞いているかもしれませんが今サナを探しているんです。見かけませんでしたか?」


「ん。聞いてない、けど、見た。」


「え?サナをですか?」


「ああ。なんか、スゴイ、風を、巻き起こして、疾走。屋敷の外。」


「外に出てしまったのね……。どっちに行ったかわかりますか?」


ダメ元で聞いてみた。

外に出たら探すの時間がかかりそうだ。


「わかる。」


「そうですよね〜、わからないですよね…………え?わかるのですか?」


私は驚いて聞き返した。

サスケさんは大きく頷いている。


「何だ?と思って、ついて行ったから。でも、小さく、うずくまってた。だから、そっとしといた。場所だけは、確認済。行くか?」


サスケさんが問いかけてくる。

サナ…………1人になりたいのかな?

こういう時ってどうしたら良いんだろう?

恋も知らない私がサナを元気付けることって出来るのかな。

私が返事をしない為サスケさんがまた問いかけてきた。


「別に……一緒に、いるだけで、良いんじゃないか?心配、なんだろ。」


そうだ……ね。

私はサナが心配だ。

いっつも私の心配をしてくれるサナが、今とっても心配だ。


「ありがとうございます、サスケさん!サナのところへ案内よろしくお願いします。」


私の言葉に満足そうに頷き、サスケさんは道案内をしてくれた。



屋敷の外に出て、10分ほど歩いた場所に川があり、その近くにサナが隠れるようにうずくまっていた。

サスケさんよく見つけられたね。

サスケさんは私を案内すると自分は屋敷の方へと戻って行った。


私は静かにサナの方へと歩いた。

サナは私が近づいても気づかない。

私は思い切ってサナに声をかけてみた。


「サナ。」


私の呼びかけにサナがゆっくり顔を上げた。

その目には涙が滲んでいる。


「……リリーナさま。」


私を見るとサナは慌てて涙を拭った。

そんなサナを私はぎゅっと抱きしめた。


「サナ、ごめんなさい。私、お兄様がお見合いしていたことは知っていたの。だけど破談になると思っていて……サナに言ってなくて、サナを傷つけてしまってごめんなさい。」


私の言葉にサナはゆっくり首を横に振ってこう言った。


「いえ、リリーナ様が悪いわけではございません。そんなに謝らないで下さい。私が勝手に期待をして、勝手に誤解をしてしまっていたのです。リカルド様にも申し訳ないことをしてしまいました。突然使用人がお祝いの言葉を言って走り去るなんて、お相手に方にも大変失礼をしてしまいました。」


サナは気丈にもそんなことを口にする。


「サナ、でもお兄様はきっと婚約はしないわ。だってあの後すぐにサナを探しに行ったんですもの。」


兄がサナを探していることを伝えれば、サナも少しは元気になるかと思ったのだがそうではなかった。

私の言葉を聞くと何故かまた俯いてしまったのだ。


「リカルド様が私を探していらっしゃる……そうですか、やっぱりちゃんと報告をしたいのですね。」


……あれ?

サナ、絶対誤解しているよね?

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