掃除終了③
あっという間にお城に行く日になってしまった。
今回は全員で王様と謁見する。
たぶん王族の方達も皆さんいらっしゃるんでしょうね。
双子が暴走しないかだけが心配だ……。
一応サナとサスケさんにはそれとなく気をつけて見ててとは言ったけど、どうかな?
サナは良いとしてサスケさんは何か起きたら見物してそうな気がする。
私達がお城に到着すると待つことなく謁見の間に通された。
謁見の間の扉が開き中を見ると…………
うん、なんか回れ右して帰りたい。
中にはこんなに人がいていいの?っていう程、人が溢れかえっていた。
服装から見て貴族半分、騎士、文官がもう半分ではないだろうか。
もちろん1番奥には王族の方々もいらっしゃる。
お祖父様はちょっと眉を上げたが、小さくため息をついて王様の方へと歩を進めた。
ただし私は聞いてしまった。
お祖父様が小さい声で『あとで泣かす……』って言っているのを。
王様逃げて!本当にお祖父様はやっちゃうよ!
お祖父様の後に続き私達も周りの視線を浴びながら王様の前へと進んだ。
本当に何でこんな晒し者状態になっているのかな?
「おお、剣神殿!それに皆もよく来てくれた。」
私達が王様の前に行くと王様がそう話し出した。
笑顔でそう言ったのだが、お祖父様の顔を見て表情が変わった。
たぶんお祖父様のことだから目だけで王様を脅したんだろうね。
王様の笑顔は引きつった感じになり、お祖父様の方をチラチラ見ながらそれでも言葉を続けた。
「う、うむ。そ、その、今日は皆の働きに礼を言いたくこの場を設けたのだ。改めて言わせてくれ、そなた達のおかげでこの国の問題がいくつか解決した。本当にありがとう。」
王様の礼の言葉の後に周りの人達が拍手を始めた。
するとそれはどんどん広がりすぐに謁見の間中に広がった。
特に騎士の方達が熱心に拍手している。
それはもう手が痛いだろうな〜と思うほどの連打だ。
鳴り止まない拍手の中お祖父様が口を開いた。
「このような機会をいただきありがたき幸せ。では、これで私達は失礼させていただきます。」
お祖父様はそう言うと速攻でその場を後にしようとした。
そこで焦っていたのが王様とその側近と思われる人達だった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!剣神殿、そんなに急がなくても……。この後ちょっとしたパーティーも予定しておるのだ。皆の衣装も準備しているから是非参加してくれ。頼む!」
王様が必死だ。
側近の皆さんも固唾をのんで見守っている。
この場を立ち去ろうとしていたお祖父様は王様の言葉をうけて立ち止まった。
「そうですか……では私とリーフィアだけ参加させていただきましょう。孫やその友人達はまだ疲れが取れていないので。あれだけのことがあったのですから。」
お祖父様の顔がいたずらっ子の顔になっている。
完全に王様で遊び始めた。
「そ、そんな。本当にちょっとしたパーティーなのだ。だ、だからリリーナ嬢や友人達も是非、是非参加をしてくれないか?もし参加してくれないと……困るのだ。」
「おやおや……。リリーナ、アレン、アンジュ、サスケ、サナ、王がこうおっしゃっているのだが、お前達そのパーティーに参加するか?」
え〜〜、こっちに聞くの?
正直出たくはないけど、王様に逆らうのはどうなんだろう。
みんなを見ると完全に私の返事待ち状態のようだ。
しょうがないなぁ、ちょっとしたものだって言うし、本当に少し参加すれば義務は果たせるよね。
「お祖父様、みんなも少しだけなら参加出来ると思いますわ。なので是非参加させていただきましょう。」
お祖父様は小さな声で『リリーナは優しいな』と言ってから笑ってくれた。
そして王様の方を向き答えた。
「孫達がこう言っているので『喜んで』参加させていただこう。」
喜んでのあたりがちょっと怖かったけど、何とか参加に持ち込めたせいか王様と側近の人達は喜んでいるようだ。
すぐに何人かが謁見の間から出て行ったところをみると準備を進めているのだろう。
まあ、これも貴族の務めってやつだよね。
お祖父様は軽くかわそうとしてたけど……。
「で、ではパーティーの準備をしよう。先ほども言ったが皆の衣装もこちらで準備しておる。そこにいる者がそれぞれの部屋に案内するからそこで着替えてくれ。」
王様の言葉が終わると隅に控えていた人達が私達の前にやってきた。
そして私達を部屋へ案内してくれる。
女性陣は同じ部屋かと思ったがどうやらみんな別々のようだ。
私の案内された部屋に入ると中には5人の侍女が待ち受けていた。
そこからはまさに戦いだった。
部屋に入ると挨拶もそこそこにお風呂にまず突っ込まれた。
そして隅々まで磨かれ、その後はマッサージ、眠かった。
侍女達は髪を梳きながらやれ素敵だとか、身体をマッサージしながらくびれが!とかお世辞が凄かった。
もう、いいよそんなに気を使わなくても。
侍女達の頑張りが凄すぎたせいか鏡の中の私は、久しぶりに貴族の令嬢のような姿をしている。
侍女達は自分達の仕事ぶりに満足したのか、私の姿をずーっと見続けていた。