掃除終了②
ふう、クリス様に悪いことしちゃったんだよね?わたし。
でも、あそこでクリス様の気持ちを受け入れても上手くいかなかったと思う。
なんて言うか……私とクリス様の気持ちがつりあっていないんだ、たぶん。
私がグダグダとそんなことを考えていたらお祖父様がもう1つの部屋のドアを開いた。
この部屋特別室みたいで、この部屋に続く扉が2つあるのだ。
お祖父様はドアを開けて、何やら声をかけている。
「いつまでそうしているんだ、お前たちは?」
誰だろうと私たちが覗くとそこにはアレン君とサスケさんがいた。
一風変わった状態だけど……。
何故かサスケさんがアレン君を後ろから羽交めしている。
「あ、ジイさん。こいつ、暴走、しそう。だから、俺、命懸け。」
サスケさんは渾身の力でアレン君を止めていたようだ。
対するアレン君は見た感じそんなに力を入れているように見えない。
しかし、お祖父様に声をかけられたことでサスケさんは自分の役割は終わったとばかりにアレン君から離れた。
離れた場所でブツブツ言っているけど。
『なんなんだ?あの、馬鹿力。俺、頑張った。』
うん、たぶんスゴく頑張ったんだね。
後でお菓子でもあげよう。
アレン君はサスケさんから解き放たれた後、ゆっくり私の方へとやってきた。
何やら不安そうな顔をしている。
「リリーナ様…………クリス王子と婚約されるのですか?」
アレン君は珍しく緊張しているようだ。
そんなアレン君に私は……
「クリス様には申し訳ないですが今はどなたとも婚約するつもりはないわ。」
私の言葉を聞きアレン君は複雑そうな顔をした。
これは困った顔とでも言うのかな?
そしてこう切り出した。
「そう……ですか。今は誰でも駄目なんですね。…………。リリーナ様、俺リリーナ様を絶対守りますね!どんな奴が来ても何があってもリリーナ様の味方をします。だから、俺のこともっと頼って下さい!」
アレン君はそう言って私の手を握りしめた。
……ありがとう、アレン君。
ちなみにこの時アンジュ様が視界にチラッと入っていたが、なんだかわからないけどアレン君にスゴくエールを送っているようだった。
小さい声で『ヘタレ』とか聞こえたけどなんだろう。
私たちのやり取りを見ていたお祖父様とお祖母様はなんだか微笑ましいものを見るような目でその様子を見ていたようだ。
「ふむ、アレンはリリーナを守る騎士のようだな。まあ、いつかは狩人に変わると思うが……」
お祖父様が変なことを言っている。
狩人って、アレン君のイメージじゃないけど。
「まあまあ、リリーナはみんなに愛されているようで嬉しいわ。いつかリリーナも誰かを愛しく思う日が来るわよ。もしかしたら気づいていないだけで、もう出会っているかもしれないわね。」
お祖母様がニコニコしながら私の髪を撫でた。
もう出会っているかもしれないか……。
私もいつかお祖母様や母みたいに好きになった人と結婚出来るのかな?
そうなれたらきっと幸せだね。
それはそうと結局公爵とナターシャさんはどうなったんだろう?
さっきお祖母様が公爵の件はすぐに決まったって言っていたけど。
「お祖父様、結局公爵とナターシャさんはどうなるのでしょうか?」
「ああ、あの公爵家はまずなくなる。そして公爵はあまりにも罪状が多いため刑が執行されるのはだいぶ後になると思うが、まあ命は助からんな。娘の方も捕まってからいろいろな証言や証拠も出てきて本来であれば父親と同じ刑が妥当なんだろうが……たぶん修道院に行くことになると思う。」
そうだよね、あの感じだと公爵は叩けば叩くほどまだまだホコリが出てきそうだ。
でもナターシャさんが修道院というのは何故だろう?
「公爵の刑はわかりますが、何故ナターシャさんは修道院に?」
「まあ、まだ決まったわけではないんだが。娘の方にいろいろやられた他の令嬢達が命を取ることを望んでいないんだ。ある意味死ぬことよりあの娘にはキツイかもしれんな。今までワガママし放題だったのが規律の厳しい修道院生活になるんだ。しかも死ぬまで出ることはできん。」
確かこの国には非常に厳しい修道院があるって聞いたことがある。
もちろん入ったら最後出ることは自分の意思では出来ないらしい。
きっとそこに行くことになるんだね。
「それから非常に面倒くさいのだが、2日後に皆で城に行かねばならん。王が絶対礼を言わねばいかんと駄々をこねるのでな。別にわざわざそんなことをしなくても良いと言ったんだが……」
王様が駄々をって……お祖父様ったら相変わらずなのね。
なんかお祖父様はどこに行ってもこんな感じなのかな?
「もう、この人ったら王で遊んでいるのよ〜。本当に仲が良いんだか悪いんだか。最後の方には涙目になっていたわね〜。」
なんてお祖母様が言っている。
なんだかんだ言ってお祖父様楽しんでいるのかな?
お城に行くということはクリス様に会うんだよね……。
ちょっとだけ、ほんの少しだけ顔を合わせるのが躊躇われる。




