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掃除終了

「リリーナ様、今リカルド様の声がしませんでしたか?」


サナがおかしいことを言い出した。

兄が西の国にいるわけないのに。


「お兄様の声?えーっと、私には聞こえなかったわよ。」


サナは首をかしげながら、気のせいかしらと呟いている。

うーん、サナったら兄が恋しくなったのかしら?

もしかしたら意外と離れてみた方が2人ともお互いの存在を意識したりして。

でも、あの超鈍感の兄がサナへの気持ちに気づくことあるのかな?


「サナさん!もしかして……リカルド様が恋しくなったんですか?」


アンジュさんが特攻した……。

もう少し言葉を選ぼうよ、たぶんそんな聞き方したら


「そ、そんなわけあるわけないじゃないですか!私はただ……何だかリカルド様の悲痛な叫びが聞こえたような気がしたから、気になっただけです。」


おいおい、サナさんや。

兄の悲痛な叫びって。

もしかしたら本当に兄がピンチだったりして……まさかね〜。



今、私達は宿でお祖父様とお祖母様を待っている。

公爵家を脱出してから1日経ったが、お祖父様達はまだ戻らない。

お城に行くことも考えたが、きっと公爵のことで忙しいと思ったからそのまま宿で待つことにした。


部屋には私とサナ、アンジュさんがいる。

アレン君とサスケさんは買い物に出かけた。

別に仲良く2人で出かけたわけではないけどね。

3人でお茶を飲みながら話しをしていたらようやくお祖父様達が戻って来た。



「お祖父様、お祖母様、お帰りなさい。お城の方は大変そうですね。」


私の言葉にお祖母様が苦笑いしながら言った。


「別にリリーナが思っているようなことが大変だったわけではないのよ。あの公爵の処罰はすぐに決まったもの。問題はその後。この人と王が言い争いになっちゃってね〜、大変だったのよ。」


お祖母様の言葉に今度はお祖父様がムスッとした顔をしている。


「ふんっ、聞き分けがないからなあいつは。まあいい、この国の膿も出し切ったことだし次の国に出発しよう。あまり長居をするとまた話しをむし返してくるからな。」


王様をあいつ呼ばわりって……お祖父様って一体。

それに何でそんなに揉めたのかな?


「お祖父様をそんなに怒らせるって……王様は何をおっしゃったのですか?」


お祖父様とお祖母様は顔を見合わせて、うーんっと唸っている。

もしかしてスゴく言いにくいことなのかな?

顔を見合わせていた2人だったが目で会話でもしたのかお互いに頷いている。


「リリーナ……話しと言うのはお前のことだ。」


「え?私ですか?」


「ああ。お前が婚約が無くたったばかりだと言うのに、あいつはまた王族の婚約者へとしようとしているんだ。別にクリス王子が嫌なわけではないんだが、お前が王妃教育を嫌がっていたからな……クリス王子が王になる可能性は低いと思うが王族に嫁ぐとなるとやはり教育は必須だろうからな。」


え?

えーー〜〜!!

私がクリス様の婚約者?

た、確かにクリス様は私にそれらしいことをおっしゃったことはあったけど……でも王様からもだなんて。

私は、私の気持ちはどうなんだろう?

クリス様を好きか嫌いかで問われればもちろん好きだ。

だけど……正直、今クリス様の婚約者になることは躊躇われる。


「もちろんリリーナがクリス王子と結婚したいというなら反対はせんが……リリーナは、どうなんだ?」


お祖父様の質問にサナとアンジュさんが心配そうに私を見つめている。

特にアンジュさんは……何というかかなり力が入っているようだ。

さっきまで飲んでいたお茶のカップにヒビが……。

うん、ある意味平常運転だね。


「私は…………」



バターーン!


私が返事をしようとしたら部屋のドアが勢いよく開いた。

そして、気がついたら抱きしめられていた。

え?え?コレは一体何事?

抱きしめられて、思いっきり顔を相手に押し付けている状態の為誰なのかがわからない。

私は唸りながら何とか顔を左右に振り相手を確かめた。



目が合った。

あ、クリス……さま?


私を抱きしめていたのはクリス様だった。

今までクリス様にこんな風にされたことはない。

クリス様は私をジッと見つめ続けている。

その目はどこか縋り付くかのようなものだった。


「リリーナ……私と、私と一緒にいてくれないか?父と剣神殿が話し合ったようなんだが、どうやら父が剣神殿を怒らせてしまったようだ。私は王族を辞めることは出来ないが、しかしリリーナ、君と共にいたいんだ。」


クリス様がそんなことを言う。

私は…………


「クリス様、ありがとうございます。私にそのようなお言葉をかけていただいて本当に嬉しいです。けれど……私は……」


私の様子を見てクリス様は微笑みながら抱きしめることをやめた。

そして私の目を見ながらこう言った。


「リリーナすまない。どうやら私は君を急かしすぎているようだ。そんなに困らせたいわけではないんだ、ただ……ただ私はリリーナ、君と一緒にいたいだけなんだ。……だけどその強すぎる想いが君を困らせているんだよね?」


そう……なんだよね?

クリス様の気持ちは嬉しいんだけど、心の何処かでブレーキがかかってしまう。

やっぱり一度婚約を失敗しているからなのかな?

例えそれが自分が望んだものでも。


「リリーナ、私の想いは変わらないよ。だから…………いや、今は止めておく。ごめん、リリーナ。」



クリス様はそう言うとお祖父様とお祖母様に一言謝罪して部屋を後にした。









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