表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/187

閑話 リカルドの危機②

次の日の朝、目が覚めた俺はすぐに父の部屋に向かった。



「父上、やっぱりお見合いはお断りさせていただきます。」


「またその話しか?昨日、無理だと言ったはずだぞ。」


父はまた眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。

無理と言われても俺だって無理だ。

サナ以外考えられない!


「父上!俺、サナと結婚します!」


「…………は?」


父はポカーンとした顔をしている。

その顔は何言ってんだ、この馬鹿は?と言っている。


「だ、か、ら、サナを嫁に貰います。」


「いや、言い方を変えても同じだろう?それよりいつの間のサナとそんな約束をしたんだ?」


「まだサナには話していませんよ。」


父は俺の言葉を聞き大きなため息をついた。

そして大きく横に首を振った。


「リカルド、サナを嫁に貰うのは非常に良い事だと私も思うぞ。だがな、よく考えろ。サナはお前と結婚してくれると思うか?お前、今までサナにそんなことこれっぽっちも言ったことないだろう?」


父の言葉に俺は黙ってしまった。

確かに自分の気持ちに気づいたのが昨日なのだ。

サナには全く気持ちは伝えていない。

だが、しかし!ここで見合いをしてしまってはますますサナが離れてしまう。

いや、サナの性格を考えれば見合いをしたら最後、会ってくれなくなるかもしれん。

そんなの………考えただけで泣きたくなる。



「父上!俺、西の国に行ってサナに会って来ます。」


「駄目だ。」


「何故です!」


「よく考えろ。見合い当日に断って、なおかつ騎士団の隊長が急に西の国に向かうなんてあり得ないだろう。とにかく一度は見合いをしなさい。会ってから断っても遅くはないはずだ。それに案外見合いの相手を気にいる可能性だってゼロではないだろう?」


「ゼロです。」


俺と父の話しは平行線をたどった。

そうこうする内にどうやら見合い相手が来てしまったらしい。

執事のセバスチャンが俺と父を呼びに来たのだ。



「旦那様、リカルド様、お相手のククール伯爵と御令嬢をお部屋にご案内しております。」


っく、逃げられなかったか……。

しょうがない、一度会えばなんの気の迷いか知らんが気が済むだろう。

俺には貴族の令嬢を喜ばせる話術などないからな。

セバスチャンに先導され俺と父は伯爵が待つ部屋へと向かった。



「お待たせしてしまって申し訳ない。」


父が謝罪しながら部屋へと入った。

俺はそれに続き部屋へと入ったのだが、入った途端件の御令嬢とバッチリ目が合った。

普通、貴族の令嬢はすぐに目を反らすものなのだが、この令嬢それをしない。

ガッツリ俺のことを凝視している。

普段と違う反応に俺の方が目を反らした。

なんか、やたらキラキラした視線だったため落ち着かなかったのだ。


「いえ、こちらこそちょっと早く着いてしまって申し訳ない。なにせ娘が早く、早くと急かすものでな。今日の見合いを心待ちにしておったのでしょう。」


伯爵が話している間も俺のことをジッと見てくる。

な、なんなんだ?

こんなに俺を直視してくるやつなんていなかったからどうしていいのかわからない。


「リカルド殿、これが娘のエリスだ。親の私が言うのもアレだがなかなか可愛いだろう?ささっ、あとは若い者で話しておくれ。」


笑顔の伯爵と父は薄情にも俺とエリス嬢を残し部屋を出て行ってしまった。

おいおい、結婚前の男女を部屋に残すってどうよ?

まあ、ドアは少し開いているが、良いのか本当に?

俺がいろいろ考えていると正面のエリス嬢が口を開いた。



「リカルド様!私と結婚して下さい!」


「は?と、突然何をおっしゃているのですか?」


「突然なのではないですわ。私、リカルド様に一目惚れしたんです!どうか私と結婚して下さい、お願いします。」


そう言うとエリス嬢はその場で頭を下げ始めた。

な、なんなんだ?

何で俺は初めて会ったはずの令嬢に求婚されているんだ。

そもそも一目惚れっていつしたんだよ。

突然の告白に喜びなど浮かばず、ただ戸惑いだけが広がった。


「あの、エリス嬢。私と貴女は何処かでお会いしたことがありましたか?申し訳ないが覚えていないのだが。」


俺の言葉にエリス嬢は困ったような顔をした。


「私、以前リカルド様に助けられたことがあるんです。その時のお姿に深く感動致しましてお慕いするようになりました。父に相談したところリカルド様には婚約者はいらっしゃらないようでしたので、今回お見合いさせていただくことになりました。」


「私が貴女を助けた?…………すいません、思い出せないです。もしかしたらどなたかと勘違いしておられるのではないですか?」


俺の言葉にエリス嬢は少し悲しそうな表情を見せた。


「覚えていらっしゃらないのは私が変装していたからだと思います。私、以前街へ内緒で遊びに出かけたことがあるんです。その時、運悪く酔っ払いに絡まれてしまいまして……だけどその時リカルド様が助けてくれたんです!とてもお強くて、とてもカッコ良かったです。その時、私リカルド様に一目惚れしたんです。」


街か……。

確かに何回か人助けはしたことがある。

そのうちの1人ってことか。

しかし、絶対俺に幻想を抱いている。

今もスゴく見られているし。

この見合いってどうやって断れば良いんだ?教えてくれ、サナ!


俺は西の国にいるはずのサナに精一杯助けを求めた。

くぅ〜〜、だから嫌な予感がするって言ったのに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ