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「リリーナ、君との婚約はなかったことにしてくれ。」


婚約者であるレオン様から呼び出しを受けて、彼の家でもある王宮の庭園に来てみれば彼の隣には可愛らしい女性が張り付いていた。


「リリーナ、私はこのアンジュと結婚をしようと考えている。」


ふむふむ、と言うことは私はあの過酷な王妃教育を受けなくて良いんですね。

もともとは家同士の約束。

この国の第一王子であるレオン様が婚約破棄したいって言ってるんだから、良いよね。

私は王妃教育を抜け出せる喜びを表に出さないように、心持ち下を向きながら答えた。


「レオン様。お話は分かりました。では失礼致します。」


私はレオン様にそう答えるとすぐに庭園を後にした。

よし、先ずは父と王様にご報告せねば。

父はこの国の宰相を務めているので、今の時間であれば王様と執務中であろう。

何時もなら何があっても仕事の邪魔なんてしないがことが事だし、良いよね。

私は外で警備している者に緊急のようだと伝え、父に直ぐに取り次いでくれるよう頼んだ。


父も滅多にというか、初めての娘の訪問に驚いたのか直ぐに中に通してくれた。

中に入ると案の定、父と王様も一緒にいた。



「リリーナ。一体どうしたのだ?お前が仕事場までくるなんて。」


「ああ、リリーナ嬢。どうしたと言うんだ?何か問題でもあったのかい?」


2人は普段の私の行動とは違う行いに戸惑っているようだ。

とりあえず、説明しましょうか。


「執務中に誠に申し訳ございません。ただ、直ぐにご報告しなければいけない出来事がありまして。」


父が心配そうにこちらを見ている。


「先ほどレオン様から婚約破棄の申し入れがございました。」


ガタガタッと椅子から立ち上がった王様と目を見開いている父が私を凝視している。


「レオン様は私の他に結婚されたい女性が出来たそうです。なので私は分かりましたと答えてこちらに直ぐに参りました。」


「リ、リリーナ嬢。な、何かの間違いではないか?」


王様が震えながら私に問いかけてきた。


「いえ、先ほど庭園に呼ばれて伺ったところ、レオン様の隣に可愛らしい女性がおりまして彼女と結婚したいと宣言されました。」


私の言葉を聞き王様は顔面蒼白になっている。

対して我が父君は、笑顔だ。とびっきり邪悪な。


「……王よ。これはどういうことかな?」


父の笑顔の問いかけに王様が逃げ腰だ。


「ちょ、ちょっと待て!これは何かの間違いだ!婚約破棄なんてありえん。大体レオンがそんなことするわけないだろ」


間違いではないと思うんだけど…。

実際言われたし。


「王様、お父様、私は婚約破棄を受け入れます。レオン様は心より愛される方と一緒になられた方が良いと思います。私は出来れば静かに領地に帰って休みたいと考えております。婚約者だったものが表立っていたのでは不都合がございましょう?お二人の許可が頂ければこのまま直ぐに出立したいかと。」


私の言葉に王様は青から顔色が白になっている。

対して父は無駄に笑顔だ。


「そ、そんなことは認めるわけには…」


「ああ、お前の好きにしていいよ。」


王様の言葉にかぶせるように父が了承してくれた。


「いや、ちょっと待て、だから何かの間違いだ……」


「間違いなわけないでしょう。我が娘が聞いてきた言葉なのだから。」


さっきから父が王様の話をぶった切っているのだがいいのか?


「リリーナ。お前には辛い想いをさせたね。でも、リリーナはとても頑張って王妃教育を受けていたよ。何処に出しても恥ずかしくない娘だ。今は領内でゆっくり休養を取って、私が今度は素敵な結婚相手を絶対直ぐに見つけてあげるよ。」


そう言って父は私を優しく見つめてくれた。


王様は父の王様を見る絶対零度の視線に凍りついている。

王様の許可おりてないけど大丈夫そうだね。


「では、私はこの辺で失礼致します。執務中に申し訳ありませんでした。」


私は王妃教育で培った完璧な仕草で執務室を後にした。



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