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榛葉昴の銀幕  作者: ペポ
第Ⅱ章 冬峰学園編入編
25/36

023 空から舞い降りしもの


 僕も秋宮も訳が分からない。


「何、あれ……!?」


 渥美の言葉につられて僕らも頭上を見上げる。


 するとそこには、まさにこの屋上に降り立とうとする真っ赤なヘリコプターの姿が!


 ヴォンヴォンヴォンという風切り音とエンジン音が聞こえる。むしろなぜ今まで気づかなかったんだと思うほどの存在感が、今舞い降りていた。


 それはそのまま真っ直ぐ風紀委員の連中の元へと突っ込むようにして降下する。


「きゃああああ……って、あれ、なにこれ?」


 渥美達の元へと降下してきたヘリコプターは、全長およそ1m70cmといったところ。よくできてはいるが、完全にラジコンサイズだ。驚いて損した。


「な、何よ、脅かさないでよ! もう!」


 少しほっとしたような表情を浮かべる渥美だが、その表情からすぐさま余裕が消える。


 屋上へと降下してきた真っ赤なラジコンヘリは、そのまま勢いを殺さず、渥美達のほうへと突っ込んだのだ。


「なんだ!?」


 堪らず退避する風紀委員の面々。


 だがラジコンヘリはすぐさま空中で器用に方向転換し、再度彼女らへと突撃を繰り返す。


「誰が何をやってんの!? こっち来ないで!」


 突如現れた謎のラジコンヘリのおかげで完全に平常心を失ってしまっている渥美達。僕らの事は完全に意識の外だ。


「……二人とも! 早くこっち来て!」


 と、そんな状況に呆けていた僕と秋宮を呼ぶ声があった。声のした方を見ると、そこには屋上出入り口の扉から二人を手招きしている片桐だった。


「私が注意を引いておくから早く! ふふふっ、殿は任せて!」


 何やらこの状況を楽しんでいるらしい片桐だったが、僕は彼女の手中にある操縦機のようなものを見て合点がいった。あのラジコンヘリは片桐のものか! なんでそんなものを持ってるのかはわからないが。


「行くぞ!」


 僕は同じく状況を理解したらしい秋宮を助け起こし、そのまま屋上出入り口へと逃げ込む。


「さあ、私のことはいいから早く逃げ――」


「――女子を置いて行けるか! お前も来るんだよ!」


 なにやらいい感じのセリフを残してその場に留まろうとしている片桐の腕を掴み、そのまま強引に屋上出入り口へと転がり込んだ。そして僕ら三人はそのまま広い校舎内へと逃げ延びたのだった。




「ああ! まだ私の愛機『回転式不死鳥フェニックス』が屋上に残ってるのに!」


 と喚く片桐を引きずるようにして屋上を脱する僕ら。階段を勢いよく駆け下りていく。


「こうなったら斯くなる上は……!」


 目を瞑りながら操縦機を操る片桐。


「何してるんだ?」


「もちろん愛機『回転式不死鳥フェニックス』を回収するんですよ! さっきまで見てた屋上の景色を脳内に座標として展開して、障害物の位置もマッピング、で、ここから操作してあの場を離脱させるんです! もう! 貴方達を逃がすためにせっかく私が一肌脱いだのに、あの機械を置いて行くなんてどういう神経してるんですかっ!?」


 と怒る片桐。


 が僕として彼女の言っていた言葉の内容のほうが気になる。唖然としている僕に気付いたのか、秋宮が解説をしてくれた。


「姫奈は記憶力がいいんだよ。というより、単純に頭が良いんだ。今言ったことくらいは本当にやってのけるさ」


 そうなのか、凄いな。


 僕らが階段の踊り場でそんなことをしていると、なにやら騒音をたてながら真っ赤なヘリが階段上方から姿を見せた。本当に記憶だけの空間マッピングでここまで操作してきたってのか。何者だよ。


「はい榛葉君、受け取って、運ぶ。お姫様を扱うように丁重にね」


「はいはい」


 僕が腕を広げると、ヘリはそこに正確に着地?した。ずっしりとした重みを感じるが持ち運べないほどじゃない。もともと僕は力が強いほうなんだ。


「とりあえず今日は帰ろうか。なんか疲れたし、身体も痛いし」


 僕の言葉に秋宮も片桐も頷いた。




 冬峰学園は全寮制で帰ると言っても学園敷地内の寮へと向かうだけなのだが、そこで片桐が口を開いた。


「私これから『回転式不死鳥フェニックス』のメンテナンスしないと! 部品買ってこなくちゃ!」


 そう言った片桐は『回転式不死鳥フェニックス』を寮の自室に運び込ませると、そのままドタバタと寮を出て行った。学園外へと買い付けに向かったようだ。


 冬峰学園は全寮制だが、学園外への外出は当然禁止されていはいない。皆週末などは学園を飛び出し街へと繰り出して行ったりするのが定番となっている。


 僕はというと、鈴置班長達との約束によって学園外への外出はなるべく控えることとなっている。僕を狙っているらしい国軍にいつその居場所が知られてしまうかわからないからだ。


「榛葉。この後少し時間いいか?」


 片桐が立ち去ったのを見計らったかのようにそう切り出してきた秋宮。


「ああ、別にいいけど」


 何の用だろうか。


「ここじゃなんだし、ちょっと街まで付き合ってくれないか?」


 思わぬお誘いにより、僕は鈴置班長達との約束を一時忘れることにした。だってあれ、「なるべく控える」って言ってたからさ、ちょっとくらいいいじゃん? ね?


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