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榛葉昴の銀幕  作者: ペポ
序章
1/36

000 プロローグ

「止まれ! 1番目アインス!」


 この場に集う大勢の研究者のうちの一人が叫ぶ。


 普段は薄暗く陰鬱で物静かなこのホールも、今は瓦礫で埃にまみれ、怒号と喧騒に満ち満ちていた。


「うっさい。……私は、研究者が嫌いだ」


 1番目アインスと呼ばれた一人の女がそう答える。


 女は長く赤い髪を持ち、殺気に満ちた表情で辺りを見渡す。彼女の瞳はその髪と同じ、柘榴石を彷彿とさせる赤。その手に握られるのは真紅に輝く光の束。


 彼女がその光の束を振るうと、彼女の周りに真紅の閃光が走り、彼女を囲っていた人々を弾き飛ばし壁や天井を穿った。


 彼はその光景を、手格子越しに見ている。


 包囲をたやすく突破した赤髪の女は迷いのない足取りで、彼の収容されている独房の前に立った。


 鉄格子を挟んで向かい合う二人。


「……何か用ですか?」


 彼は女に尋ねる。


「別に大した用じゃないよ。……ただ、私も昔チャンスを貰ったことがあるから、今度はチャンスを与える側になりたいなって思って」


 女は独り言のようにそう言うと、手に握った真紅の光を振るう。


 すると女と彼を隔てていた鉄格子が音を立ててバラバラになった。


 彼はその様子を目を丸くして見ていた。



「さあ、これからどうするかはあんたしだいだ」



 女は彼に向かって手を差しだした。


 彼はその手をじっと見つめる。


「人生ってのは、何もかもが与えられるわけじゃない。だから自分で選んで、切り開いて、手に入れていくしかない。その覚悟があるかい?」


 彼はしばらく身動きせずに停止していたが、すっと彼の右手が動いた。彼の右手が、差し出された女の手を掴んだのだ。


 弱々しかったが、確かに掴まれた。


 だから女は言った。


「よし! そうこなくっちゃ! ……それじゃ行くよ!」


 女は彼の手をしっかりと握り返し、力強く引っ張って彼を立たせた。


「それじゃあ行こう! ここから先は自由よ!」


 女に手を引かれるようにして、彼はその日消息を絶った――。


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