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11、サンタクロースって?

「何を謝ってるの?」

 タコラは不思議そうに首を傾げました。

「わたしはサンタさんにひどいことなんて何もされていないわ。それどころか、

 今わたしがこうしているのは全部サンタさんのプレゼントのおかげじゃない?

 プレゼントしてもらった願い星のおかげで自信を持てたわたしはオーディションに合格して役を掴んで、撮影中も願い星で自信をつけて難しい演技もやり通すことが出来たわ!

 わたしにはサンタさんに感謝の気持ちしかないわ!」

「そうか。そうなのか……」

 サンターズ支部長は優しいまなざしでタコラを見つめ微笑みました。自分の保身の為にしたことでしたが、結果的に彼女の人生に素晴らしいプレゼントをしたようです。

 サンターズ支部長は改めてききました。

「君は、本当に世界の子どもたちの為にサンタクロースを呼んだのかね? 自分のキャリアを潰す、かなり危険な賭けだったと思うが?」

 タコラはハッと、いけないことがばれて叱られるみたいにしゅんとなって、彼女も決心すると本心を告白しました。

「女優を続けていく自信が揺らいでいたんです。子役は大成しないって言うでしょ? 中にはジュディー・ファスターみたいな例外もいるけれど……、ほとんどは駄目ね。

 わたしもだんだん子役っていう役が合わなくなってきて、大人の本格的な女優に変身しなければならない過渡期に入ってきているのよ。

 わたし、女優の仕事は好きよ。素晴らしい女優になりたいわ。

 でも、

 子ども時代を否定したくはないの。

 子どもを馬鹿にするような、ガキっぽいティーンエイジャーや、夢をなくしたつまらない大人にはなりたくないの!

 本当を言うと、子どもの頃出会ったのが本当のサンタクロースだったのか、ちょっと自信をなくしていたの。

 だから、自分の為に、もう一度あなたに会いたかったの」

 サンターズ支部長は納得してうなずき、優しく言いました。

「君に本当のサンタクロースと認められて、わしも心から嬉しく思うよ」



「なあーるほどなあー」

 ミーシャが感心したように腕を組んで言いました。

「どうやらサンタクロースっていうのはあちこちにいて、あんまりありがてえもんでもねえらしいなあ?」

 この会談は世界中に生中継されているのです、ついついサンタの秘密をしゃべり過ぎたサンターズ支部長は渋い顔でカメラに手を振り、

「頼む。これはここだけの話にしておくれ。サンタクロースは色々あってたいへんなのだ」

 と、全世界の良い子たちにお願いしました。

 黒サンタミーシャがニイッと笑って意地悪に問いました。

「ところでなあ、あんた、本当のところ、本当に本物のサンタクロースなのか?」

「なにい?」

「だってなあー」

 ミーシャは頭の後ろに手を組んで、すっとぼけた調子で言いました。

「オレ様の願いは聞いてくれねえし、嘘はつくし、インチキはするし、どうやら大した力もねえようだし……

 おっさん。あんた、見た目がサンタクロースっぽい以外に、本物のサンタクロースだって証明できる何かが、あるのか?」

「おっさんだと? きさまあ……」

 サンターズ支部長はカアッと怒りに赤くなりましたが、ミーシャの意地悪に笑った目に見つめられて、はたと、考え込んでしまいました。

「改めて考えてみれば……、サンタクロースがサンタクロースである証明など、しようがないかもしれん…………」

「じゃあよお、……やっぱあんた、ニセモノなんじゃねえかあ?」

「けしからん! よりにもよっておまえなんかに偽物呼ばわりされるとは!」

「じゃあよお、……サンタクロースってのは、なんなんだ?」

「サンタクロースが何か、だと?……」

 サンターズ支部長はすっかり考え込んでしまいました。



 スタジアムでは子どもたちが大型ビジョンに向かって口々に「サンタクロースの条件」を教えてあげていました。


「サンタさんは白いおひげのおじいさんだよ!」

「赤い帽子に赤い服を着ているんだよ!」

「サンタクロースはおじいさんのまま、ずうっと年を取らないんだ!」

「クリスマスの夜にプレゼントをくれるんだ!」



 ミーシャはすっとぼけて言いました。

「どうせオレはプレゼントをもらえねえ悪い子だからどうでもいいがよおー。

 あんたが本物でも偽物でも、もう興味なくなっちまった。

 そうだ、自分でも分からねえなら、子どもたちに教えてもらったらいいんじゃねえか?

 ここはオレがサンタを首にされたいけすかねえデパートだがよお、あんた、明日1日ここでアルバイトして、子どもたちに本物か偽物か決めてもらえよ?

 なあ、マネージャーさん。このおっさん、明日1日、サンタのアルバイトで雇ってやってくれねえか?」

 呼びかけられたクリーン氏がカメラの外から飛んできて、サンターズ支部長の手を取ると、熱烈に握手しました。

「それは是非お願いします! このクリスマスシーズンはサンタがいなくて子どもたちに寂しい思いをさせてしまいました。あなたがサンタクロースをやってくださるなら子どもたちは大喜びだ!」

「ううむ…………」

 サンターズ支部長は額に脂汗を浮かべて悩みました。

「しかし……、わしはもう現役から退いて…………」

 横からタコラも握手に参加して言いました。

「素敵じゃない。それじゃあわたしもサンタの服を着てお手伝いするわ!」

「おお、なんてことだ! 素晴らしすぎる!」

 クリーン氏はもう大喜びで、過去の悪夢に苦悩していたサンターズ支部長も、しょうがなく微笑むと、

「よろしくお願いします、大人になった友人よ」

 と承知しました。



「やったー! 本物のサンタさんに会えるんだ!」


 けっきょく本物なのか偽物なのかごちゃごちゃで分からなくなってしまいましたが、スタジアムの子どもたちは歓声を上げて大喜びです。

 大人たちも、やっぱりサンターズ・サンタが本物なのか偽物なのか分かりませんでしたが、大人気だった大好きなサンタさんなので、しょうがなくニッコリ笑いました。



『それじゃあな。メリーズの開店は午前10時だ。サンタは1日中いるから慌てなくてもいいぜ』


 最後はデパートの宣伝をして、中継は終わりました。

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