帰り道
「……進、大丈夫かな」進の家からの帰り道、俊介が訪ねた。
「どうなんだろ。みどりさんって本当に何者なんだと思う?」
どうやら孝太郎もみどりさんに何かしらの違和感を感じているようだ。
「何かおかしいよな」
「次の日行った時にはお菓子を出されたって言ってたけど……俺達が帰った後に買いに行ったのかな」
話が急に変わって俊介は首を傾げた。何故お菓子?
「さぁ、どうだろう。元々有ったんじゃない?」
「そうかな。……何か不自然な感じがする」
「そうか?」
「だって客が来る事自体珍しいって言ってなかったか? それなのにお菓子を常備しておくかな」
「じゃあ買いに行ったんじゃね」
「また来るか分からないのに? 車どころか自転車だって見当たらなかったぞ」
「でも進のハンカチ見付けたんだろ。だからまた来るかもって思ったとか」
「それでお菓子用意するか? あそこから買い物に行くんなら片道一時間以上は絶対かかるぞ。ただハンカチ返すだけで良いだろう?」
良くお菓子だけでそこまで考えられるもんだ。何か孝太郎の納得がいくような説明は出来ないか俊介は考える。
何故孝太郎の考えを否定したいのか、俊介は自問自答した。答えは簡単だった。もし孝太郎の言う通りだったらマジでヤバイ状況だからだ。みどりさんはヤバイ奴で進がそこに入り浸ってる。そんなの考え過ぎだって言いたい。そう思いたい。
「たまたま買い物に行く予定だったからついでに買っておいたとか? 自分で食べる予定だったんじゃないか?」我ながら苦しい言い訳だ。
「そうかもな。そもそも本当に進はハンカチ落としていったのか?」
「そりゃあ落としたんだろうさ。実際にみどりさんに拾われてんじゃん」
「そうなんだよな……。でも俺見たんだよ。進はリュックの中に入れてチャックも閉めてたよ」
「だったら無くさないだろ」
だが俊介も閉めているところを見た。孝太郎とは反対側に立っていたのでハッキリ分からないが確かに入れる素振りはあった。
「大丈夫かな。進の奴」俊介は呟いた。
「さぁ、今のところ怪しい人だけどただ話してるだけなんだろ? 大丈夫じゃね」
「でもあいつトロイからな」
「そうだな。足遅くて食いしん坊って、完全デブキャラだな」
「こんな事言ってるのあいつにバレたら殴られんな」
「確かに。あいつのパンチ骨にクルからな~」
「ホント。パンチも重いよな。」
「そうそう、パンチ『も』な」
二人は不安を振り払うように笑った。笑い終わると俊介は切り出した。
「しょうがねえ。今度四人でみどりさんとこ行ってみるか?」
「そうだな。心配しててもしゃあないしな」
明日、進が来たらその時に話し合う事にした。きっともう一度みどりさんに会えば普通の人だって確信が持てるハズだ。後は進の好きにさせたら良い。俊介はそう思うようにした。