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二学期

 始業式が始まり、夏休みの思い出話等で教室は盛り上がっていた。その中で俊介達は静かだった。進が来ていないのだ。健斗が進の家に迎えに行った時には先に出たと聞かされた。だが学校に来て見ると進はいなかった。


 たまに学校をサボる事もある。四人でゲームしたり、どこかへ遊びに行ったり。だが一人でサボる事はなかった。それに今日は始業式。授業はないのだからそもそもサボる必要はないだろう。


 三人は帰りに進の家へ寄るかどうか話し合った。結局、明日は来るだろうという事になった。もしも俊介達が進の家に行ってサボったのが親にバレるってのは避けたい。


 だが次の日も進は来なかった。やはり健斗が行くよりも先に家を出たらしい。さすがにこれは放っておけない。三人は帰りに進の家へ寄る事にした。


 俊介達が進の家を訪ねた時、進は既に帰ってきていた。


「何で学校サボってんだよ!」


 進の部屋に通されると健斗は声を抑えて聞いた。それでもその声には明らかに苛立ちが込められていた。それでも進の返事はハッキリしなかった。


「あぁ、……うん。ちょっとね」

「何だよハッキリしねえな。一体何してんだよ」

「実はさ。ちょっと行きたい所があってさ」

「何処行ってんだよ」

「……んとこ」

「何処だって?」

「みどりさんトコだよ」


 それを聞いて三人は驚きを隠せなかった。


「お前、……みどりさんってあのみどりさんか?」

「あの山の中に住んでる?」

「そんなトコで何してんだよ?」俊介、孝太郎、健斗は同時に質問する。


「お前ら落ち着けよ。別に大した事して無いから。ちょっとお菓子食いながら喋ってるだけだよ」

「お前、そんな事の為に学校サボってんのか?」健斗は信じられないという顔をしている。

「そんな事って言うな。みどりさんはいつも優しくて美味しいもの沢山くれるんだ」

「ガキかお前は! 菓子に釣られてんじゃねえよ」

「それだけじゃない! 優しいし、一緒に居ると楽しいんだ」

「勝手にしろ! だけど明日はちゃんと学校来いよな」


 健斗は立ち上がりそのまま帰ってしまった。俊介はなんだか居心地悪くお尻がムズムズした。


「あの日、おにぎりを包んでたハンカチが無い事に気付いたんだ」進はポツリポツリ話始めた。

「でも……帰りに確かに枝から外しただろ」俊介は自分の記憶を辿った。

「外してリュックに入れたハズなのに帰ったら無かったんだよ。……だから次の日探しに行ったんだ」


 進は深いため息をついた。俊介達も座り直して話の続きを待った。少しの間をおいてまた進は話し出した。


「山ん中でハンカチ探してたら途中でみどりさんに会ったんだ。ハンカチはみどりさんが見付けて家に置いてあるって言われて、それで家について行ったんだ。みどりさんに『ハンカチを持ってくるからそれまでお菓子食べて待ってて』って言われて。クッキーやチョコレートだったけどとっても美味しかった。

 みどりさんが持ってきてくれたのはやっぱり俺のハンカチだった。その後も少し話して、帰る時に一人だと寂しいからまた来てって言われた。それからみどりさんの所へ行くようになったんだ」


 徐々に進の喋るスピードは上がり、最後には捲し立てる様だった。進は話終えるとうつむいたまま靴下の先をイジリ始める。


「……でも学校には来いよ。みどりさんの所へは休みの日に行けば良いだろ? 親も心配するぞ」

「うん、そうだね。分かったよ」

「それじゃあまた明日、学校でな」

「うん」


 進は決して顔を上げようとしなかった。俊介達はお菓子を持ってきた進の母親に挨拶をして進の家を後にした。

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