決着
通路まで後一歩の所で健斗が危ないと叫んだ。
みどりさんは俊介達に飛び掛かり、その背中に足の爪を食い込ませる。そこへ健斗がスコップを構えてみどりさんの土手っ腹に突っ込んだ。流石にみどりさんも怯み俊介達は何とか脱け出した。
三人はまた走り出した。俊介が懐中電灯で後ろを照すとみどりさんの姿が見えた。狭い通路の中、脚を土壁にこすらせながら追いかけてくる。天井もみどりさんの背丈ギリギリ位しかない。
確かにここならあいつは思い通りに動けないだろう。俊介の合図で三人は立ち止まり、みどりさんを迎え撃つ。
「健斗、あいつが飛びかかってきたら下から持ち上げる感じで頼むぞ」
「分からんけどやってみる」
みどりさんは四本の脚で襲いかかってきた。健斗はみどりさんの懐へ飛び込み、スコップで受け止められたのは脚二本まで。残りの脚が健斗を捕らえる。すかさず健斗の横から孝太郎がモップをみどりさんの顔面めがけて突き上げる。
みどりさんは孝太郎の一撃をかわしたが、そのまま孝太郎はモップでみどりさんの横っ面をブッ叩く。
みどりさんは熱さにうめきもがくが必死に孝太郎は押さえ付ける。すぐにチリチリとみどりさんの髪が焼けて焦げた臭いが立ち込めた。俊介は孝太郎とは逆側から飛び出し、みどりさんの腹部に鎌を振り下ろす。
鎌は深々とみどりさんの腹部へ突き刺さった。嫌な感触が手に伝わる。俊介はそれでも鎌の先をもう片方の手で押さえてそのまま腹を引き裂いた。
白い血液が辺りに飛び散りみどりさんは崩れ落ちた。三人は後ろに下がるとみどりさんはうつ伏せに倒れて痙攣を繰り返していた。
健斗が一歩前に出てスコップをその後頭部へ振り下ろす。何かが砕けるような音がした。
「こいつは進の分だ! クソヤロウ!」
健斗はそう言うとスコップを放り投げた。俊介と孝太郎が健斗を見ると健斗は肩をすくめて見せた。
「このセリフ、一度言ってみたかったんだ」
三人は笑った。狭い洞窟の中で笑い声が反響する。
最初に異変に気が付いたのは健斗だった。笑い過ぎて傷が痛み、洞窟の壁に手をついた。すると壁が震えている。
健斗の様子に俊介達も笑うのを止めた。それでやっと壁だけではなく洞窟全体が振動しているのに気が付いた。
地震かと思い俊介が辺りを照すと奥の方から洞窟が閉じていくのが見えた。崩れているのではなくすぼまって行く感じだ。三人は何も言わず走った。
走っていても分かる位激しく揺れている。三人は決して振り返る事なく全力で走った。間もなく階段が見えてきた。
孝太郎が先頭を走っていて良かった。俊介は懐中電灯で前方を照らす余裕も無かったが孝太郎は火の点いたモップをまだ持っている。おかげで三人ともつまずかずに階段を駆け昇れた。
最後を走る健斗の足は地面が持ち上がってくるのを感じ始めていた。やっと前方に小屋の明かりが見え始めた。
「早く! 早く!」
健斗は叫ぶ。俊介は孝太郎の背中を押す。三人は洞窟から飛び出すと壁に激突した。
振り返ると持ち上げられた床扉の下には何もなかった様に地面があるだけだった。モップの火もいつの間にか消えていた。




