表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

救出

「せっかくここまで探しに来て、何も分からないまま帰るのか? もしかすると進は生きてるのかもしれないだろ?」俊介は健斗を説得する。


 確かに俊介の言うとおり生きているかもしれない。健斗もそう考え始めていた。もし生きていればこんな所に置き去りにしてしまう事になる。あんな化け物がいるこの場所にだ。


「分かった。でも本当にあそこまでだからな。……悪いけど俺、もう怖くて吐きそうなんだよ」


 健斗は俊介に懐中電灯を手渡した。


「大丈夫……あそこまでだ。俺も怖いんだから。孝太郎も来るよな?」

「……行くよ。一人で帰るのも一緒に行くのも同じ位怖い。だったら行くしかないだろ?」


 目的の場所へ行く途中にもいくつかの穴が開いている。三人は他の穴の中も確認しながら奥へと進んで行く。


 そこから先の穴は今までと様子が違った。穴の中には黄ばんだ絨毯の様な物が敷かれている。俊介はそれが何か分かった。アイツの姿を見れば簡単に想像出来る。蜘蛛の糸だ。それもかなりの年月が経ったもの。


 その真ん中が少し膨らんでいる。それが何かを確認する勇気は俊介には無い。


 やっとアイツが何かしていた穴に辿り着いた。そこには他と違い真っ白な糸の塊があった。繭の様にも見える。かなり大きくて人一人位は入りそうだ。これは当たりかもしれない。


 俊介は懐中電灯を孝太郎に渡し、繭に触れてみる。サラサラしており、少し暖かかった。


 俊介が振り返ると二人は穴の入り口から中に入ろうとはせず、成り行きを見守っていた。このままじゃ帰れない。俊介は思いきって繭を破り始めた。繭は思ったよりも簡単に破れていく。


 ポッカリと穴が開くと俊介は一歩下がって明かりが入るようにした。中に何かがある。俊介は孝太郎に手招きするが首を横に振る。


 俊介は孝太郎から懐中電灯を奪うと繭の中を照らした。中に居るのはやはり進だった。俊介は更に穴を広げると進を引っ張り出そうとするが重くて中々出てこない。


「何してんだよ。早くしろ」健斗が俊介を急かす。

「だったら見てないで手伝えよ!」俊介が言うと健斗は駆け寄り手伝ってくれた。孝太郎はどうしても動けないようだ。


 進の体はズルリと床に転がった。進が低くうめいた。まだ生きている。俊介と健斗が両脇を抱えながら進を連れ出す。孝太郎が懐中電灯を持って先導してくれた。


 俊介はつまづきそうになりながら何度も後ろを振り返った。健斗にしっかり持てよと言われても振り返らずにはいられなかった。今にもアイツが現れないかと心配だった。


 階段が見えてくると俊介達はホッとするが、後ろからガサガサと何かが動く音が聞こえてきた。俊介達は立ち止まって振り返る。


 アイツだ。ものすごいスピードで近付いて来ている。三人は走り出した。長い階段を駆け上る。半分ほど登ると肺は空気を求めあえぎ、心臓は飛び出しそうな程に暴れだした。


 孝太郎が一足先に小屋へと飛び出した。俊介達が出てくると床を閉め、その上に周りの棚やガラクタを倒した。床扉は一度ドカンと跳ねたがそれっきり静かになった。


 俊介が再び進を抱えようとした時に進の口から白い蜘蛛の糸が出ているのに気が付いた。俊介は恐る恐る引っ張るがなかなか取れない。


 俊介は思いきって指を突っ込む。進の口の中には糸の塊が入っていた。それを取り出してもまだ先があった。蜘蛛の糸が何本も絡まり合い紐状になっている。


 進が嗚咽を漏らす中、俊介はそれをゆっくり引き出した。長さは全部で一メートル位だった。全部引き出すと進は咳き込みながら意識を取り戻した。進はまだ朦朧としており、連れて帰るのは一苦労だった。


 何とか進を家へ連れ帰ると進の母親は涙を流して喜んだ。進と母親が感動の再会をしている間に俊介達はそっと立ち去った。邪魔をしたくなかったのもあるが何かを聞かれる前に逃げ出したと言うのが本当のところだった。


 進は一人で歩くのも難しそうだったが何よりも腕の傷を三人は心配していた。


「進の奴大丈夫かな。……アレ見たかよ?」健斗は切り出した。

「あぁ、見たよ。」


 進の腕は一部がどす黒く変色しており、その中心には傷跡があった。大きさを考えなければ虫に噛まれた様な跡に見える。一番気になるのは変色している場所が腫れておらず、むしろヘコんでいる事だ。


「俺何かで読んだけど……蜘蛛って食べる時は消化液を獲物に注入して溶かしたのを吸うんだってさ」

「何でそんな事今言うんだよ」健斗は怒って孝太郎に向き直った。

「……ゴメン」


 もしあのまま進を探さずに逃げていたら……。俊介はそう考えるとゾッとした。


 俊介が家に着いた頃にはもう暗くなっていた。母親の小言を聞き流し、夕食を一口二口食べて早々と布団へ潜り込んだ。だが全然眠れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ