親友の、要らない話。
「おい!伊藤!聞いてんのかよ!!」
「・・・ごめん。」
「ったく。お前いっつもそうだよなあ。何ボーっとしてんの?もしかして、お前にも春が来ちゃった・・・とか!?」
「そんなわけないだろ。」
「だよなー!大親友の、大崎翔太様の話もロクに聞けないような奴に女の子なんて」
「そんなことより、お前はどうなんだよ。」
「俺?俺はもうラブラブだよ!あったりまえだろ?あ、そうそうこの前彼女がさ・・・」
大崎にはそれ以上問い詰める感じもなく、慣れない学食のカレーを食べながら惚気だした。
僕は胸を撫で下ろした。
言ってしまったらまた根掘り葉掘り聞きだされる。高校時代の、あの苦い思い出が甦る。
高校一年の時、僕には好きな子がいた。他の中学校出身の、同じクラスの子。
控え目で、成績もよくて、目立つタイプじゃなかったけれど、とっても可愛い子だった。
偶然二人とも図書委員に立候補したこともあって、結構いい感じだった・・・のに。
中学から一緒で仲の良かったこいつに相談すると、大々的に冷やかされ、次第にまわりにも気づかれ始め、恥ずかしがり屋なあの子は僕と口をきいてくれなくなった。
赤く頬を染めたあの子は可愛かったが、それにしても僕は大崎のお陰で人生初の彼女を作りそびれたのである。
この経験があるため、僕は誰にも恋愛関係の話はしないことにしている。
「でさー、彼女がね、すっげえかわいいわけよ!!もう絶対結婚する!!!」
「お前、幸せそうだな。」
「なーに辛気臭い顔してんだよ。さっさと残り、食っちまえ!次の講義始まるぜ?」
「おう。こんな時間か。」
「ま、これでもやっから元気だせよ。」
大崎から、彼女だというそこまで可愛いとは言えない女の子と撮ったプリクラを渡された。
よく見ると二人が抱き合ってとても幸せそうに写っていた。
「・・・とてつもなく要らない代物だが一応受け取っておこう。」
「要らねえならやんねえよー。返してくれよん。」
「そういう、語尾に要らない名詞つけるのやめろよな。これは貰っておく。」
「なんだよー、素直じゃねえなあ!なんならチューしてるやつもいるか?」
「それは要らない。絶対要らない。見たくもない。」
「ひでえこと言うなよ。ほら!特別に見せてやる!!」
「本当にいいから。やめろ!!」
そう言って笑う大崎のことを憎めない奴だなと一緒になって笑ってしまった僕は、しばらくは見ているだけで満足してしまいそうな天使のことを考えていた。