第5話
寮に付いた3人は早速晩ご飯の支度を始めた(またしても晴樹は無理矢理)。
何気に晴樹が料理が上手いと言う事がわかったので風牙と正史は胸を撫で下ろした。
2人とは対照的に晴樹はこれからも風牙と正史の食事の大部分を受け持つ事になるであろう事実にかなり憂鬱だった。
風牙に強制はされているが、最後にはきちんと自分の意思で風牙達と一緒にいるのだから別に2人の事が嫌いな訳ではなさそうだ。
「そう言えばさ、電話ってどこにあるんだ??」
食事を食べ終りジャンケンで負けた正史が食器洗いをし終えた時に風牙が聞いた。
「……知るか。自分で探せ。」
正史は風牙が香澄に電話をする為に電話を探しているのだとわかったからわざと冷たく当たった。
「晴樹は知ってるよな??」
風牙は正史から聞く事を諦めたらしく晴樹に話題を振った。
「もちろん知ってるが、お前には教えない。」
晴樹はさらに冷たかった。
「2人共知ってるって事は部屋のどっかにあるって事だよなぁ。」
風牙は独り言を呟く。
「俺はそろそろ戻る……。」
晴樹はそう言って立ち上がった。
「じゃぁ俺も戻るかな??」
続いて正史も立ち上がる。
「じゃぁなぁ。女の子ぐらい紹介してやるからすねるなよ!!」
2人は風牙を一瞬見たが、無言で出て行った。
「………さてと。電話でも探すかな??」
実際、探しはじめてから35秒で見付かった。
ベットの近くに設置されていた。
どうして今まで気付かなかったのか分からない。
風牙は黙って電話を手に取り昼間に香澄からもらった紙を見ながら番号を押した。
「はいもしもし??」
香澄は3コール目で出た。
反応が早かったのは電話をずっと待っていたからだろう。
「お約束通り東武風牙が電話をかけました。」
風牙は微妙な敬語で電話をかけたと宣言した。
「風牙!?やっとかけて来てくれたぁ。香澄ちゃんはけっこう待ちました。」
雁原優華が言いそうな言葉を香澄は言う。
「で、なんか用あんのか??」
「うわぁ。冷たいっ!!!幼馴染みで可愛い女の子に対してその態度はないでしょ??」
「はいはい。そうでした。イゴ、キオツケマス。」
棒読み。
「……理由無きゃ電話しちゃダメ??」
「……別にそんな事ねぇよ。ホームシックにでもなったのか??」
ちょっとシリアスモードが入った香澄に風牙は優しい言葉(本人はそう思っているが実は普通)をかけた。
「ん〜。まぁそぉ言う事でいいや。学校で会っても話す時間あんましないしさ。って事はなかなか出番が無いって事だからそれはマズいから電話で登場しようって事。」
「………。」
「だからこれから毎週土曜日に電話しよ??」
「なんで土曜日なんだよ??どうせなら休みの日曜日の方が良くね??」
「土曜日だったら次の日が休みだから時間気にせず喋れるじゃん。」
風牙は思わず成程と思ってしまった。
「まぁいいけど。」
「じゃぁ何喋ろっかなぁ??ん〜。学校慣れた??」
「まだ2日目だぜ??」
「それもそっか。でも2日目にしては私のクラスで東武風牙ファンクラブが出来つつあるけど。」
「は??何でだよ??」
「遙が教室で騒ぐんだもん。『香澄の幼馴染みマジカッコいい〜』って。」
「いやぁ。遙ちゃんわかってんなぁ。」
「………。」
「お前も正史と晴樹のアイドルだぜ??正史も晴樹も遙ちゃんみたいに騒がないから他の連中はお前の事知らないけど。」
「とにかく風牙のお陰で大変なの!!」
「何が??」
「皆にいろいろ聞かれるの。『風牙くんって付き合ってるの??』『好きな子のタイプは??』『香澄ってホントに幼馴染みって言うだけの関係??』みたいな感じで。」
「カッコいい幼馴染みを持つと大変だなぁ。」
「はいはい。大変ですよ。それより聞きたい事あるんだけど。」
「何でも聞けよ。」
「今、彼女いるの??」
「いない。」
「……ホント??」
「嘘ついてどうすんだよ??」
「ふ〜ん。いないんだ。」
「……何だよ??」
「2、3人いると思ったのに。」
どうやら香澄は風牙をかなりの女垂らしと思っている様だ。
「そんなハズねぇだろ。」
「はいはい。そうでしたね。じゃぁどんな女の子がタイプなの??」
「俺の事きちんとわかってて、俺の事を真剣に好いてくれるんだったらそれでいいかな??」
風牙はやや意識してカッコいい答えを言った。
「じゃぁ難しいかもね。風牙の事理解できる子とかなかなかいないでしょ??」
「まぁな。」
2人の間に微妙な沈黙が流れる。
「おまえはどうなんだよ??」
「私??別に今まで通り。」
ちなみに香澄は今まで付き合った事はないがファーストキスは終わらせていると言う複雑な女の子だ。
「へぇ〜。まだ処女か。」
「普通です。」
「好きな子とかは??」
「う〜ん。気になる子はいるよ。」
「マジで!?誰だよ??その子は気付いてんの??」
「絶対気付いてない。たぶん気付くまでにかなり時間がかかると思うよ。」
「……鈍感な奴だな。そんな奴やめとけって。」
「言える立場じゃないでしょ。かなり鈍感なくせに。」
風牙は真剣に自分が鈍感だとは思っていないらしい。
「はいはい。じゃぁもう寝るから切るぞ。」
「おやすみ〜。」
香澄との電話を終わらせた風牙はそのまま寝ようとしたが、風呂に入ってないのを思い出したらしく風呂に入った。
「さてと、明日は確か武器を決めなきゃなんね〜んだったな……。」
風牙はそう呟いて深い眠りに落ちた。