第18話
「じゃぁシュミレーション試験合格を祝ってかんぱ〜い!!」
香澄の一言で宴会が始まった。
結局風牙と香澄は学年最速タイムで試験を終えた。
今日は1年生の寮のあちこちで宴会が行われているはずだ。
落ちた組はいなかったらしく、来週から成績準に現場に派遣されるらしい。
風牙チームと晴樹チームと他の組の3組で現場に行くはずだったが、その他の組の男子が怪我をして来週からは現場に行けないらしく、正史チームが食い込んだ。
「現場体験も結局この3組かよ。」
「いいじゃん、いいじゃん。気軽にできるよ。」
いつの間にか親密になった正史と遥が楽しそうに話している。
ちなみに風牙達の宴会は雄平の部屋で行われている。
理由はごく簡単。
女子寮に男子は入れないから香澄と遥の部屋は無理、風牙と正史、晴樹の部屋は30階で上がるのが大変。
よって雄平の言い分も聞かずに香澄と遥が勝手に決めたのだ。
晴樹と雄平はトップを風牙と香澄に取られたのがショックだったらしく。
2人で反省会を開いている。
香澄は遥と騒ぎながら時々正史といちゃつく遥を茶化していた。
風牙はと言うとジャンケンで負けたので自分の買い出しに行かされていた。
風牙が帰って来るまでに現場体験の説明をしておこう。
今は1月なので2年になるまでの3ヶ月、第一回現場体験が行われる。
現場体験とは実際に世界平和維持軍で働いている人と共に簡単な作戦を行うのだ。シュミレートとは違って失敗したら死ぬと言う緊張感を味わうためだ。
毎年学年の最後に進級試験代わりにある。
学年が上がるにつれて難易度も上がるのだ。
そうこうしてる内に風牙が帰って来た。
「さっぶ〜。ってかいろんな所で騒いでるなぁ。」
「当たり前じゃん。みんな嬉しいもん。」
香澄が風牙の手から食材の入ったビニール袋を取る。
「足りねぇもんあっても知らねぇからな。」
「大丈夫よ。鍋だもん。足りなかったらその辺のもん入れたらいいの。」
そう言って香澄は遥を引っ張って台所まで行った。
せっかくの宴会なのにマズい料理は嫌だと言う事で料理は女子がする事になった。
それから3時間ぐらい食べたり騒いだりと雄平の部屋を無茶苦茶にしながら6人は楽しい時を過ごした。
「じゃぁそろそろ帰るかな。」
そう言って正史が立ち上がる。
「え??もう帰っちゃうの??遥も!?」
正史と一緒に立ち上がった遥を見て香澄が言う。
「うん。私は帰るって言っても正史の部屋なんだけど。」
「マジで!?外泊届け出した??」
「ばっちし。今日は帰らないからよろしく。」
にやにやしながら正史と遥は部屋を出ていった。
「……あいつらいつからあんな関係??」
「……知らん。」
「片付けもしないで……。」
男3人の会話。
「じゃぁ私も帰ろっかな!?」
香澄が複雑な顔をしながら言う。
「あ、じゃぁ送っていってやるよ。晴樹と雄平は片付けよろしく。」
風牙はここぞとばかりに部屋から逃げ出そうとする。
「片付けてから……!!」
「じゃぁな。また明日!!」
香澄を引っ張って風牙が出ていった後の部屋で晴樹と雄平は男2人で悲しく掃除をするのであった。
「お前は正史と遥ちゃんの事知ってたのか??」
「うん。3ヶ月前だったかな??スッゴい嬉しそうだったから問いただしてみたら付き合ってるって。」
「全く知らなかった。」
風牙は、ぽりぽりと頭をかく。
「風牙はそぉいう感覚に鈍感だもんね。」
「そんな事ねぇよ。彼女いた頃もあっただろ。」
「それも全部コクられるまでわかんなかったんでしょ。」
「まぁそうだけどな……。」
その後に何だか気まずい空気が流れる。
「………。」
「………。」
沈黙が続く。
「香澄はさ、マジで彼氏とかいた事ねぇの??」
「無いわよ。ファーストキスは誰かさんに取られたけど。」
「な!!だからあれは……!!」
「事故だって言いたいんでしょ??キスしといて事故はないでしょ。」
香澄はすねたようにソッポを向く。
「……バカ……。」
「は??何だよいきなり。」
「寒い。」
「は??」
「だから、寒いって言ってるの!!」
いきなり怒りだした香澄に風牙は戸惑う。
「まぁ1月だしな。」
「違う!!もうなんでわかんないかな!!」
香澄がさらに怒る。
それを見て風牙はにやにやしながらこう言った。
「わかってるって。こう言う事だろ??」
そう言って風牙は香澄の手を取った。
香澄はからかわれていた事に気付き口をパクパクさせた。
「手なんて繋ぐの何年振りだろうな??」
「あなたはそんな昔じゃないでしょ。」
「お前と手繋ぐのだ。10年振りぐらいか??」
「小学1年生以来だもんね。」
それから2人は何も喋らずに手を繋いだまま女子寮まで歩いて行った。
「じゃぁ……また明日ね。」
香澄は風牙の方を見ずに言った。
「あぁ。」
風牙も香澄を見ずに返事をする。
「……お、おやすみ!!」
無理に明るく言って香澄は走ろうとしたができなかった。
「ちょ、風牙??」
風牙が香澄の手を放さなかったのだ。
「どうかし…!?!?」
香澄が言い終わる前に風牙は香澄を抱き寄せた。
「ちょ、ほんとにどうしたの!?確かにそぉいう雰囲気だった……じゃなくて!!」
香澄が顔を赤くしながらテンパる。
「外泊届け出して着替え持って来い。」
風牙が香澄の耳元で呟いた。
「い、いいの??」
「あぁ。」
そう言って風牙は香澄の唇に自分の唇を重ねた。