第96話 辺境への長い旅
リオンは赤ん坊ミラを背負い、慎重に山道を進んでいた。
森や川、崖を越えるたびに地形や距離を頭の中で計算し、まるで地図を描くように歩を進める。
道中では《家移転》を使って休息用の家をその都度出し、数日分の疲労をこまめに癒やした。
赤ん坊ミラも食事や睡眠をしっかり確保できるため、リオンは安心して旅を続けられる。
しかし、険しい北部山岳地帯は予想以上の難所だった。
増水した川、突然の落石、時折感じる野生動物の気配、立ち止まる場面も少なくない。
そうして数か月にわたる長い旅を続けたある日、ついにライストア王国北側の辺境の町が視界に入った。
石造りの城門、小さな市場、遠くで巡回する兵士たちの姿。
辺境ながら確かに人々の営みが息づいている。
リオンは荷物の位置を整え、背負ったミラの様子を確認した。
「よし……やっと着いたか」
長い山越えと距離測定の旅を終え、ついに辿り着いたライストア王国北部の町。
これから始まる情報収集と新たな冒険に向けて、リオンは気を引き締めた。




