第95話 山岳の広場と小休止
険しい北部の山道を進むリオンと赤ん坊ミラ。
しばらく歩くと、森の合間に小さな広場が現れた。
周囲は木々に囲まれているが、見晴らしも悪くなく、休息には絶好の場所だ。
「ここなら少し休めそうだな」
リオンは荷物を下ろし、赤ん坊ミラをそっと背中から下ろす。
そして静かに心の中で唱えた。
《家移転》
次の瞬間、広場の中央に小さな家が出現する。
中は簡素ながら必要な設備が整っており、赤ん坊も安心して眠れる環境だ。
リオンは手早くミラを家の中のベッドへ寝かせ、自分もその隣のベッドに腰を下ろした。
疲れた身体を休めながら、窓越しに見える山並みを眺める。
「……ここで少し、体力を回復してからだ」
波の音や潮の香りはないが、山の静けさが心を穏やかにしてくれる。
ミラがぐっすり眠っているのを確認すると、リオンは次の行き先に思いを巡らせた。
目指すはライストア王国。
北部の山々を越え、平和だと噂される街を目指す旅路はまだ長い。
十分に休息を取ったリオンは、やがて再び旅立つ準備を整え始めた。




