第91話 背負った命
小屋での一件を終え、リオンは赤ん坊ミラを背中の簡易バッグへそっと入れ、慎重に街道を戻っていた。
赤ん坊の小さな体はまるで子犬のように温かく、うとうとと眠り続けている。
道すがら、リオンは街角で数人の男たちと出くわした。
体格のいい彼らは荒々しい表情で周囲を探しており、どうやら逃げた奴隷を追っているらしい。
リオンの足は自然と止まる。
見つかれば、ミラも含めて危険だ。
だが男たちはリオンに一瞥をくれただけで、背負っているものには興味を示さず、そのまま通り過ぎていった。
ただの街道沿いの旅人だと思ったのだろう。
「……助かった」
リオンは安堵の息を漏らし、再び歩き出した。
背中のミラは無防備に眠り、柔らかい頭を背へ押し付けてくる。
しばらくして、安宿の明かりが視界に入った。
人通りの多い通りに紛れながら、慎重に足を進める。
リオンは心の中で静かに呟いた。
「まずはここで落ち着かせる。街を歩く前に、ミラが安全であることが最優先だ」
そう決意し、赤ん坊をそっと抱き上げながら、宿の扉を静かに開いた。




