第88話 海辺の街ドルス
リオンは、海を横目に街道を歩いていた。
潮風が背中を押し、遠くには白い帆を張った小舟がゆったりと波に揺れている。
旅の途中でこんな穏やかな景色に出会えるのは久しぶりで、思わず鼻歌がこぼれた。
やがて、石造りの城壁と港のクレーンが見えてくる。
海辺の街ドルス。
交易の街らしく、港には大小さまざまな船が並び、行き交う人々の声で賑わっている。
「へえ……活気あるな」
リオンは冒険者証を門兵に見せ、そのまま街へと足を踏み入れる。
賑やかな通りには魚を焼く香ばしい匂いが漂い、露店には貝殻のアクセサリーや干物が並んでいた。
だが、港の一角だけは空気がどこか落ち着かない。
酒場から出てきた商人たちが、同じ話題でざわついていた。
「……ライストア王国が、ついにクレスモア王国に宣戦布告したらしいぞ」
「なんだって? また戦かよ」
「兵糧の値が上がる。港も戦の影響で止まるかもしれん」
リオンは思わず足を止めた。
せっかく平和な国に来たと思った矢先に、またしても戦の影が迫っている。
「……ほんと、ウンザリだ」
小さく吐き捨て、宿屋の看板を見上げる。
どこへ行っても戦はつきまとう。
そんな現実に、リオンの胸は重く沈んでいった。




