第85話 クレスモアへ
バルディア王国の街テントを離れ、リオンは北へと足を進めていた。
背中の荷物は軽い。
だが、心の中は決意でずっしりと重かった。
戦乱に飲み込まれつつある南や西を避け、次の目的地に選んだのはクレスモア王国。
山岳と鉱山で栄える国だ。
交易路は険しいが、戦争とは縁遠く、冒険者にとっても働き口が多いと聞いていた。
「……少しは落ち着けるといいんだけどな」
広がる草原と岩山を眺めながら、リオンは呟く。
道中、時折商隊や旅の冒険者とすれ違うが、皆どこか急いでいる様子だった。
南の戦の噂が、じわじわと北へ広がっているのだろう。
夕暮れ時、リオンは街道脇に小さな焚き火を起こした。
保存食を口にしながら、空を見上げる。
星々が瞬く夜空は、幻影機で再現したあの光景を思い出させた。
「……あの星の下なら、きっといい国だと信じたい」
翌朝、荷物を背負い直したリオンは、再び歩みを進める。
目的地はクレスモア王国の国境の街。
山の麓に築かれた交易拠点だ。
鼻歌を口ずさみながら、リオンは北の空へと向かった。




