第83話 荒れる冒険者ギルド
リオンは街の様子を確かめるため、テントの冒険者ギルドへ足を運んだ。
ギルドの扉を開けた瞬間、むっとする空気が押し寄せる。
酒臭さ、怒号、荒れた冒険者たち。
掲示板には依頼がほとんど貼られておらず、紙切れが数枚だけ揺れていた。
「……こんなに少ないのか」
近くの冒険者たちが愚痴を飛ばしている。
「依頼がねえ、物資は高い、命がけで戦場の護衛やれってふざけんな!」
「結局、王都が混乱してるからギルドもまともに動けねえんだ」
「上の貴族どもは内乱で手一杯で、冒険者なんてどうでもいいらしいぜ」
受付に並ぶ者は少なく、逆にカウンターの前で怒鳴り散らす冒険者が多かった。
リオンは列の最後に軽く立ち、目を細める。
「戦場関係の依頼しか残ってないか……やっぱりな」
鼻歌の代わりに小さく舌打ちした。
危険すぎる依頼に飛びつくつもりはなかった。
受付嬢の疲れ切った顔を見て、リオンは心の中で苦笑する。
「ギルドですらこんな状態か。王都の内乱……この国、思った以上に腐ってるな」
ギルドを出るとき、通りの向こうから大声が響いた。
「国境西側の貴族が勝手に兵を集め始めたぞ!」
ざわつく街を背に、リオンは小さくつぶやいた。
「さて……やっぱり、長居はしない方がいいな」




