第80話 孤独な街道
リオンはリストの街を背に、西へと伸びる街道を歩いていた。
荷物は最小限。
肩にかけた猟銃と腰のボウガン。
そして、スキルのセーフハウス。
それらが、彼の旅の大きな安心材料だった。
街道は広く整備されているものの、戦争の影響で人通りは少ない。
時折、難民らしき小さな集団が荷車を引き、怯えた顔で東の空を振り返りながら歩いていく。
リオンはその横を、鼻歌まじりにすれ違った。
「やっぱり、一人旅は気楽でいいな」
商隊護衛のように他人に気を使う必要もない。
だがその分、孤独と緊張感は確かに増していた。
森の入り口に差しかかったとき、低いうなり声が響く。
茂みから現れたのは、よだれを垂らした二頭のウルフだった。
リオンはため息をひとつ。
「……鼻歌の邪魔をするなよ」
猟銃を肩に構え、引き金を引く。
乾いた銃声が森にこだまし、ウルフたちはあっけなく倒れた。
再び静寂が戻る。
死体を避けて歩きながら、リオンは小さく笑った。
「戦争に巻き込まれるより、こっちの方がずっとマシだな」
街道の先には、まだ見ぬガルディア王国の国境が待っている。
孤独な旅路の中で、リオンの心は少しずつ自由を取り戻していった。




