第79話 旅路の決断
リトルリア王国の国境の街リスト。
リオンは冒険者ギルドの依頼掲示板を前に腕を組み、しばらく動かずにいた。
貼られているのは、戦争の影響を色濃く映す依頼ばかりだ。
【国境防衛の補助】
【兵站輸送の護衛】
【戦地での物資回収】
どれも、戦争に巻き込まれる危険が高すぎる。
リオンは肩の猟銃を軽く叩き、鼻で笑った。
「……やっぱり、戦争に関わる護衛しかないか。嫌だな」
受付の女性職員に軽く尋ねても、やはり返ってくる答えは同じだった。
「商隊はほとんど西へ逃げるか、国境防衛に駆り出されています。単独での旅はおすすめできませんが……」
リオンは小さく肩をすくめた。
「ありがとう。でも、俺は西に行くよ」
地図を広げると、リストから西へ進めば、やがて バルディア王国 の国境に出る道がある。
内乱や戦争の影響を受けにくい土地と聞くし、商会活動も盛んな国だとゼルファやハロルドからも聞いていた。
ギルドを出て、街の外へ歩きながらリオンは心の中でつぶやく。
「戦争なんかに振り回されるのはごめんだ……自分の旅路は自分で選ぶ」
荷を背負い、銅級の冒険者カードを懐にしまう。
ひとり、西の大地を目指し、リオンは静かに歩き出した。




