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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第07話 隠れ焼肉パーティー

 夜になり、屋敷が静まり返った頃。

 俺はアンセルと共に、屋敷の台所奥へと獲物を運び込んだ。

 イノシシとシカは、まだ新鮮なまま。


「ここなら……誰にも見つからない」


 小さな声で呟き、俺は火を起こす。

 料理用のかまどに薪をくべ、炭を熾す。

 傭兵としての経験は生きていた。

 火の管理、肉の焼き加減、煙の方向すべて計算する。


 アンセルは不安そうに見守るが、俺の指示通りに動く。

 そこへ、料理長の老メイドと数人の使用人がこっそり集まった。


「リオン様……こんなこと、しても……」


「黙っててください。今は自由な時間です」


 黙って頷く彼ら。

 普段は叱責の嵐の中で暮らすリオンの、小さな独裁の時間だ。


 火の上でジリジリと肉が焼ける音。

 香ばしい匂いが台所を満たす。

 切り分けたシカの肉に塩を振り、イノシシの脂を滴らせながら網の上で転がす。


「いただきます」


 最初に口に入れた瞬間、皆の顔が緩む。

 子供の体で、こんなにも肉を楽しむ姿は珍しいらしい。

 使用人たちは笑みを浮かべ、料理長も小さな拍手をしてくれる。


 俺もまた、久しぶりに肩の力を抜いた。

 血にまみれた戦場でも、泣き虫だった子供の頃でも、こんなひとときはなかった。

 鼻歌混じりに肉を焼き、野菜を添え、串に刺して振る。

 みんなで分け合う時間は、まるで家族のようだった。

 いや、今の俺には本当の家族よりも温かく感じられた。


 アンセルやメイドたちと会話を交わし、笑いながら焼肉をほおばる。

 傭兵の俺と泣き虫リオン、そして屋敷の使用人たちの小さな共同体。

 これが、今の俺にとっての“自由”だった。


 夜空を見上げ、火の赤と肉の香りに包まれながら、俺はひそかに笑った。

 この世界でも、俺は少しだけ平和に生きられる、と。


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