第67話 街道の戦い
翌朝。
王都の門を出ようとしたリオンの前に、フィリップ男爵の使いが現れた。
「リオン殿、旦那様がご心配なさってな……護衛の騎士を三名つけさせていただく」
鎧姿の三人の騎士が、街道を歩む準備を整えていた。馬は連れておらず、彼らは徒歩での護衛らしい。
「……子供一人に討伐を任せるのはあまりに危うい、と」
「まあいいよ。好きにすれば」
リオンは肩をすくめ、鼻歌交じりに歩き出す。三人の騎士は顔を見合わせ、やや緊張した面持ちでその後を追った。
やがて、街道脇の茂みから低い唸り声が響く。
狼に似た魔獣が五体、牙をむいて飛び出した。
「来たな」
リオンは立ち止まると、猟銃を肩に構え、口笛混じりの鼻歌を続けた。
轟音。
銃声と共に一体の頭部が吹き飛び、地面に転がる。
続けざまに二発、三発。銃口から放たれる弾丸は正確に急所を撃ち抜き、魔獣は悲鳴すら残さず地に伏した。
最後の一体は矢で喉を貫かれ、絶命。
ほんの数分で戦いは終わっていた。
街道には魔物の死骸だけが転がり、静寂が戻る。
護衛の騎士たちは、剣を抜くことすらできなかった。
「な、何だ今の……」
「子供が……あっという間に……」
「しかも……楽しそうに鼻歌を……」
リオンは銃を背負い直し、何事もなかったかのように振り返った。
「おい、立ち止まってるな。街道の掃除はまだまだ続くぞ」
三人の騎士は呆然としたまま、ただその小さな背中を追うしかなかった。




